2014年2月15日土曜日

「久美子のトルコからの便り」をドイツで読んでー「不思議の国」、日本  山下あきこ

1月にベルリンを訪問をしたときの話は先日、ブログで報告しました。私のベルリンでの予定を組んでくださったのが山下秋子さんです。その山下さんからメールが届きましたので、ここに掲載させていただきます。   崔 勝久

2014年2月9日日曜日
素晴らしい出会いでした(その3)-ドイツ編
http://oklos-che.blogspot.jp/2014/02/blog-post_737.html

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

崔さま

トルコの話、ありがとうございます。「女性展望」という雑誌(市川房枝記念女性と政治センター発行)に、去年の4月日本に帰ったときの話と、 それに続くトルコへの原発セールスの話について書きました。記事を添付しますね。

トルコのエルドアン首相とその閣僚の腐敗した政権について、ドイツでの論評はとても厳しいです。そのエルドアン首相が安倍首相とにこやかに 笑っている写真を見ると、危うい国が手をつないでいるという印象を受けます。

               不思議の国
                               ベルリンにて    山下秋子

昨年、2年ぶりに帰国して
4月上旬、ほぼ2年ぶりに一時帰国した。前回は、東日本大震災の2ヶ月半後で、何か緊張感のようなものを感じた。それから2年、日本の様子がどうなっているか期待と不安が入り混じった気持ちで帰国した。http://midori1kwh.de/wp-includes/js/tinymce/plugins/wordpress/img/trans.gif日本は「不思議の国」というのが正直な感想だ。3週間の滞在中、新聞やテレビもあまり見なかった。限られた情報の中で、今回の帰国中に受けた印象をまとめてみた。

1. 帰国直後のテレビでは北朝鮮のミサイル発射がいつになるかというニュースばかり。この件についてはドイツのメディアもかなり頻繁に取り上げていたが、日本のテレビはどのチャンネルも、ピストルを構える金正恩の姿を執拗に繰り返し、好戦的威嚇者としてのイメージを視聴者に押し付けるかのようだった。

2.北朝鮮に関する報道の嵐が終わると、福島原発の汚染水漏れのニュース。ところが、なぜか北朝鮮のニュースほどの執拗さがないと感じた。経産相が東電社長を呼び出して、海水に漏れないように注意をしたというニュースが流れたときには、海水が汚染されていないかについて、なぜメディアが独自の調査をしないのかという疑問が起きた。この問題を詳しく取り上げたのは、NHKの「クローズアップ現代」だけだった。

3. もう一つ驚いたのは、ネズミが原因で停電し、冷却装置が停止したというニュースである。「ネズミで停電。冷却装置停止」と言われても、にわかには信じられない。安全神話の上に稼働されてきた原発が、ネズミ一匹で冷却装置停止という危険が報じられた矢先、経産相が「原発の安全性を規制委が判断した上で、(再稼働の)スケジュールは早ければ秋になる」との見通しを示したというニュースを見て、いったい福島の事故からどんな教訓を学んだのかと考えた。

4.淡路島を震源とする地震にも驚いた。発生した時間も規模も阪神淡路大震災を思い出させたが、しかし揺れ方が全く違った。ドスーンという突然の急激な揺れではなく、グラグラと長く揺れる不愉快な揺れ方で、人づてに聞く東日本大震災のときと似ていると思った。「原発、大丈夫?」ということがまず思い浮かんだが、今は大飯の2機以外は停止しているという事実を思い出し、少しホッとした。 それにしても地震は恐ろしい。

ベルリンの日本大使館での講演
福島原発事故から2年後の312日、ベルリンの日本国大使館で、 日本政府の事故調査・検証委員会委員長の畑村洋太郎委員長と、技術顧問の淵上正朗氏の「福島原発事故を考える」と題する講演を聞くことができた。

「福島第一原発事故をどう将来に生かすか」というサブタイトルが付けられた講演の中で、畑村委員長は「安全性が確認できたら再稼働という論理は、今回の事故が起こったことで破たんした」 と述べ、さらに「あり得ることは起こる。あり得ないと思うことも起こる。思いつきもしないことも起こる」ことを強調した。汚染水漏れは、地下貯水槽の設計に当たって東京電力は起こり得るリスクを見過ごした結果である。畑村委員長の説を引けば、「あり得ることは 起こる」ということになる。またネズミの感電死による停電での冷却装置停止は、まさに「思いつきもしないことが起こる」ことの典型のように思える。

原発事故などなかったかのような日本
2 年前に帰国したときは、原発事故によって今までの生き方が根底から揺さぶられたような危機感を感じたが、今回はまるで原発事故などなかった国のように見えた。去年暮れの政権交代を受けてすっかり様変わりしたようだ。安倍首相が打ち出す「成長戦略と骨太の方針」が東日本大震災と原発事故で打ちのめされた日本を救う妙薬であるかのようにもてはやされ、これらの方針がもたらす効果を伝える報道に日本が振り回されているように感じた。

そのような状況の中で、 安倍首相は参議院予算委員会で「原発事故が収束したと言ったのは前首相であり、私は収束したとは思っていない」という主旨のことを述べた。この言葉を真摯に受け止めるならば、「再稼働のスケジュールは今年の秋」という経産相の目論見は崩れるはずだという思いを抱いてベルリンに戻った。


ところが、目を疑うニュースが飛び込んできた。ゴールデンウィークにロシア、中東諸国を訪問した安倍首相が、最後の訪問地トルコで、原子力発電所建設を受注したというのである。「何かの間違いか」と思ったが、外務省のホームページに、日本政府とトルコ政府の間に原子力発電所および原子力産業の開発のための協力に関する協定が署名されたと記載されている。423日の参議院予算委員会で、「原発事故が収束したとは思っていない」と述べた首相が、ゴールデンウィーク中の53日、つまり2週間も経たないうちに原発の輸出、しかも日本と同じ地震国トルコに輸出を決めたというのである。

トルコに原発輸出をしようとする安倍首相の消息を知って
ここ10年、著しい経済成長を遂げるトルコは、増大する電力消費を石油や天然ガスなどの燃料資源の輸入で賄ってきたが、燃料購入が貿易収支の赤字となって重くのしかかっている。この状況の打開策として原子力発電の建設が計画されてきた。その布石を敷いたのが、「原子力について無知に等しい政治家たちだ」とドイツの全国紙「南ドイツ新聞」は指摘する。

同紙は福島事故の直後、「放射能入りのチャイ(茶)のほうがおいしい」という見出しで、チェルノブイリ事故で、トルコ国内でも高い放射線量が確認されたときの首相であったトゥルグト・オザルの「放射能入りチャイのほうがおいしい」という発言を引用した上で、エルドアン現首相も「強力な原子力エネルギーの推進者であり、トルコ初の原子力発電所をトルコ国民にプレゼントしようとしている」と報じている。

ゴールデンウィークにトルコを訪問した安倍首相は、近年高い経済成長を遂げているトルコと日本の技術、産業の知見、ノウハウがタッグを組めば「絶好のシナジーが生まれるだろう」と述べ、その最たる例が原子力発電だと語っている。首相の言葉を引用すれば、「トルコで生まれる電力は、国境を超えて、たくさんの家庭に届きます」ことになる。

この文章を読んで即座に、「トルコで原発事故が起きれば、放射能は国境を越えてたくさんの国に届く」状況が頭に浮かんだ。トルコ政府観光局によると、日本が原発を作るシノップは黒海で最も美しい天然港の一つである。直線距離にして約400キロメートル離れたところには、2014年に冬季オリンピックが開催されるソチがある。チェルノブイリの放射能雲がトルコに届いたように、もしトルコで大地震が起きれば、トルコからの放射能が黒海に面した多くの国に届くことになるだろう。

トルコのユルドゥズ資源・エネルギー相は「再生可能エネルギーへの投資は、トルコの成長に追いつかない」と主張している。また、トルコ政府は原発がもたらす危険は制御可能だと見ているのだ。シノップでは原発反対運動が起きているが、雇用増大の掛け声が反対運動の勢いを弱めているという。「原発は安くて安全、危険は制御可能、雇用は増大」といううたい文句を見ると、まさにデジャヴュである。そして、安倍首相は513日の参院予算委員会で「事故の経験と教訓を世界と共有し、世界の原子力安全の向上に貢献するのが我が国の責務だ」と強調した。

「成長戦略」の名のもと、福島で起きたことは忘れ去られようとしているのか。チェルノブイリと福島の事故の教訓から脱原発を決定したドイツにいると、日本はますます不思議の国に見えてくる。トルコの3大新聞の一つ「ヒュリエト」紙は、2011322日、「多くの人たちが放射能にさらされる事態を招いた福島原発大惨事の責任を、どの日本の政治家が取れるのか」と問いかけている。この問いは、これらの政治家を選んだ有権者にも向けられている。


1 件のコメント:

  1. ベルリン在住の山下秋子様の『トルコのエルドアン首相とその閣僚の腐敗した政権について
    ≪ドイツでの論評はとても厳しい»との声は、大変に参考になりました。有り難うございました。
    他にも参考資料がありましたら教えてください。
    昨年の5月3日、阿部首相のトルコ訪問と原子力発電所建設の受注のニュースは私も大変に驚きました。トルコでは、日本といえば、広島長崎そして勤勉な国民と映っています。
    ドイツは、トルコ人の多くが出稼ぎに行った一番身近な外国です。
    トルコ人の二世、三世、四世の人々の多くが現在ドイツで暮らしています。しかし、彼らは、ドイツの生の声に耳を傾けないのか、無視しているのかわかりません。山下様からのコメントはとても参考になります。トルコの現政権を支持する強力なイスラム教の人々は、シノップは地震の可能性がない所であり、心配いらないとの返事をしてきます。更にドイツと日本は、、第二次世界大戦で敗戦した国にも関わららず、戦後世界の中でも大きく経済が発展している。日本はアジアの中で、ドイツはEUの中で強力な経済を保っている。その原因はエネルギーの供給が十分であるからと言います。更に、ドイツがトルコについて厳しい見方をしているのは、将来、トルコは強力なドイツに肩を並べる可能性もないとは言えないからと返答してきます。3月31日はトルコ全国の市長選挙の投票日です。すでに選挙の動きも激しさを増してきています。現政権政党は野党を大きく抑えて必死の全国展開を行っています。その中で原発反対グループのNKPは3.11を目前に
    シノップとメルスインからの反対運動が始まっています。
    どうか皆様のご意見をお聞かせください。

    返信削除