2013年12月1日日曜日

被災者は結局自分の金を払って東電と政府から賠償金をとるという構造になっているー島弁護士から原発メーカー訴訟についての詳細な説明

昨日、東京の本郷三丁目にある、とあるおしゃれな一室で「東アジア脱核ネットワークづくり~韓国原発ツアー報告会~」が持たれました。私も韓国ツアーの中で見たこと、考えたことを話しましたが、なんといっても原発メーカー訴訟弁護団長の島昭宏さんの説明は圧巻でした。原発メーカー訴訟の訴状の完成が楽しみです。これを事前に公開し、各地で学習会を重ね、みなさんの意見を取り入れた形で、1月末に最終版にする予定のようです。

島弁護士の話の要旨を私の責任でご紹介します。まもなく島さんご自身が、訴状の要約を公表されると思いますので、楽しみにしてお待ちください。

40歳までロックバンドのボーカルをやっていましたが、環境法の制定をきっかけに弁護士になることで社会の変革ができると考え、ロースクールに通い弁護士になりました。たまたまeシフトのメンバーになったのですが、そこで崔さんの原発メーカーを相手に裁判はできないのかというメールを見て、できる、と答えたことがきっかけにこの裁判をはじめることになりました。

当初は世界の市民に参加してもらうことで裁判に注目が集まればいいという程度の軽い考えだったのですが、いろいろと講演し考えていくうちに、これは原発体制の本質に迫る闘いであること、世界の市民と一緒になって訴訟を進めることの根本的な意義が見え始めました。

まず原子力損害賠償法(原賠法)について説明します。誰が考えたのかわかりませんが、本当に原発体制の本質を暗ませる、よくできたものです。まず第一に、3条で、原子事業者(電力会社)の「無過失責任」「責任の集中」を謳います。しかしその金額の上限は「賠償措置額」として1200億円と明記されいることに要注意です。

そして4条1項、3項で「原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない」と断じ、重ねて「製造物責任法の規定は、適用しない」とあくまでもメーカー免責を強調し、メーカーに負担がかからないように、メーカーを保護しています。

第二に「責任集中原則」についてお話します。現在私は福島の賠償問題の訴訟に関わっていますが、そこでは金額だけが争われ、事故を起こしたことの違法性を問うことはないのです。生活の基盤を失い、家、仕事を失っても、今は傷もなく元気で暮らしているから別にいいじゃないかという反論があるのですが、私は例えば、コミュニティの崩壊どのように金銭に換算していけるのか、その実証はどうするのか考えています。

国には責任がないとする国の免責論はそれこそ憲法17条に違反します。国は国家賠償責任があるのです。しかしここで注意すべきことは、電力会社の賠償は電気料金への上乗せ、国の賠償は税金が賄われるという実態です。結局、すべて市民への賠償は市民のお金で支払われるのです。ここでメーカーだけがその循環から外れ、何の責任も問われず、もし責任が明らかになれば自分の責任において自分のお金で支払わなければならないのです。

本当に誰が考えたのか、よく出来た仕組みですね。被災者への責任をすべて事業者に負わせ、「原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする」(16条)と国家の介入を認めながら、そこから完全にメーカーの責任を外し、自由にさせているのです。これこそ、原賠法の1条にある、「原子力事業の健全な発達に資することを目的とする」ことで原子力事業を進める方針が見て取れます。ですからこの訴訟によって原発体制の根幹が揺るぐのです。そのために世界全体の国際連帯が必要になります。

私たちの原発メーカー訴訟は、原告が精神的損害を訴え100円を請求する形にしました。これは金額でなく、メーカーの責任を明らかにさせることを目的の裁判にしたかったからです。100円は「一部請求」なのです。


次に私たちの訴訟の骨格について説明いたします。
第一は「欠陥」の指摘です。「欠陥」とは法的には、通常有する安全性を欠くことを言います。まずPL法に基づく損害賠償という視点からメーカーの問題を明らかにします。
①東電は今回の地震、津波は想定外であったと強調しますが、すくなくとも一号機は地震による配管の破損で放射能が露出したことは明らかにされています。最新の知見によって当然のこととして、今回の規模の地震対策はしておくべきだったのです。

②国会の事故調査委によると、事故をおこした福島第一原発は当初、ゆるめの耐震設計しかしておらず、そのために国は旧指針をだし、次に新指針をだしてバックチェックを義務付けたのですが、実は東電およびメーカーは調査をして報告すべきところを怠っていたことが明らかにされています。

③原子力発電の寿命は40年とされていますが、中性子による金属疲労によって老朽化が進んでいたことは疑うべきもありません。原発のメンテナンスはメーカーが請け負っているのですが、この老朽化の問題にどのように取り組んでいたのかが問われます。

④今回の事故を起こした原発はマークⅠ型と呼ばれるGEの基本設計によるものです。これは設計をしたGEの技師が危険だから輸出をすべきではないと会社を辞め、アメリカ議会でその危険性について1976年に証言しています。このことをメーカーは知らなかったはずはなく、あるいは知っていても自分たちには事故に対する責任がないのでそのまま欠陥の可能性を知りながら原発建設をしたという主張をするのでしょうか。

第二は「過失」の立証です。民法709条は「故意又は過失」について言及しています。「故意又は過失によって、他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」第一でメーカーの「欠陥」の指摘をしたのですが、これを民法で裁くにしても、原賠法という特別法があるわけで、一般法である民法でなくメーカの免責を論じた原賠法に基づくべきだという議論もあり、ここは意見がわかれます。私たちは被害者は特別法でなく、一般法に基づいて主張することを検討しています。

第三は「故意」についてです。原賠法5条では、第三条に「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる」と規定しているのですが、「その損害が第三者の故意により生じたものであるときは、同条の規定により損害を賠償した原子力事業者は、その者に対して求償権を有する」と「求償」ということに触れています。

 この「第三者の故意」とはテロリストを想定するかわかりませんが、「故意」とは、自分の行為から一定の結果が生じることを認容しながら行為に出る心理状態」のことを意味します。つまり「欠陥」であることを認識していたが、まあいいかということで事故の可能性を見逃していたことを「故意」と捉えるわけです。これを「未必の故意」と言います。


 原発メーカーの「未必の故意」に対して原子力事業者(=電力会社)は、被災者に賠償した金額を原子力メーカーに対して「求償」することができます。グリーンピースは東電に原発メーカーへの「求償」を求めるべきではないかと迫ったが断られたと聞いています。

 即ち、被災者はこの電力会社の「求償権」によって、民法と憲法29条の財産権の保障を盾にして、原発メーカーんに直接請求する権利があるということになるのです。

第四の主張に関してはまだここでは話せません。秘策ですので、ご期待ください。

 人は憲法第29条の財産権の保障があるわけですから、原発を例外にすることは平等原則に違反することになります。25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあり、13条では「幸福追求」の権利が保障されており、そこから私は、人は「原子力の恐怖から逃れて生きる権利」すなわち、ノーニュクス(No Nukes)権があることを主張したいと考えています。

 もし今回の訴訟において裁判所が審議をせず門前払いに近い形での対応をするのであれば、それは32条の「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」に違反するものと考えます。

 人は良好な環境を享受する権利があり、私は幅広く多くの人に呼びかけ、社会の意思決定に関わること、当事者として社会の変革に関わりたいと思います。ありがとうございました。

以下は、参加者からの質問、意見です。
崔:先ほど島さんが話されたグリーンピースが東電に「求償権」の行使を求めたということですが、それはどういう根拠で求めたんですか。
島:それはわかりません。HPに載っているらしいのですが、子細な検討はできていません。
崔:一般論として東電に打診したということではないと思うので、ピースボートと是非、原発メーカー訴訟を一緒にやりたいですね。
    参考資料:国際環境団体NGOグリーンピース 

  2013/9/10 原子炉メーカー、1960年前後に原賠法から過失責任の除外を  政府に求めていたことが判  明  http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/press/2013/pr20130910/


後藤政志:私は福島事故とスリーマイル島事故との類似性を強く感じます。それはいずれも水位計に頼っていた点ですね。この仕組みはマークⅠだけでなくあらゆる原発に共通するものです。福島も何日も立っても東電がメルトダウンに達していないと主張した根拠はこの水位計に頼っていたからなんです。
後藤:島さんに自分が担当するネットテレビの番組に出て話してもらいたいと思っています。
後藤:原子力メーカーに勤めていた研究者たちが集まって一定の見解を示すような訴訟への貢献を考えています。私たちが弁護団と一緒になってメーカー訴訟の模擬裁判のようなものをしたいですね(会場から、是非、やりましょうという声が出る)。
後藤:仮に海外に輸出した原発が事故が起こした場合、その国の国民はナショナリズムによる日本への反発でいくらメーカーには責任がないといっても日本への責任を追及してくるんではないでしょうか。その場合、発達途上国にとっては天文学的な金額を日本国民が税金で支払うようになるのではないかということを心配しています。

朴鐘碩:弁護団が多くいるし、今回のように弁護士と活動する者が一緒に説明すると説得力があるように思います。もっと弁護団と活動する者が積極的に全国説明に行くような機会をつくりたいですね。

世古:今回は原発メーカー訴訟と謳ったのでいつもより参加者の反応がよくなかったようですね。(しかし5名の原告申請者がありました。ありがとうございます、世古さん)
世古:島さんのお話であれば私たちも周りの人に話せるように思います。専門家に任せるのでなく、自分達で説明したいですね。

3 件のコメント:

  1. FBに書いた私のメモ

    誰が考えたのか、こんな仕組みー原発マフィアの陰謀!

    1.アメリカを中心とした列強は核による世界支配のために、自分達だけが核を独占し他国に作らせないためにNPT(核不拡散条約)体制を作りました。

    2.列強は核兵器を作らないという条件で原子力の平和利用という名目で原発製造を許し、ウランの供給、徹底した管理によってNPT体制をより強固にしてきました。

    3.原発供給にあたって各国に作らせたのが原子力損害賠償法(原賠法)です。「無過失」「責任集中」を謳い、事業者(電力会社)に無条件で被災者に補償すること(ただし金額は1200億円)を明らかにしました。

    4.しかし同時に、原発メーカーには責任がないことに重ねて言及し、PL法は適応しないとまで記しています。即ち、原賠法は、「原子力事業の健全な発達」を真の目的にしていたのです。

    5.事業者(東電)に全て保障させる、1200億円を超える金額は(今は、15兆円!)国家賠償として政府が支払う構造で、これは最初から織り込み済みです。

    6.ただし、東電は電気料金への上乗せ、政府は納税者の税金で支払い、結局、すべての負担は市民に押し付けられており、そこから免責された原発メーカーはなんら批判されることも、責任を追求されることもなく自由に原発を建設し、輸出することで原発マフィアを太らせ、列強の世界支配を強化することになっています。

    7.日本はGEの輸入にあたってアメリカから原賠法の制定を強要され、今度は日本が原発輸出に際して原賠法を相手国に強要しています。これは植民地主義そのものです。すなわち、原発体制はグローバリズムと合わせ、大国の植民地主義なのです。

    8.メーカーの責任を明らかにすることで、メーカーに市民は直接補償を求めることができるようになり、免罪を理由に好き放題してきたメーカーは膨大な補償金を被災者に請求されるようになり、結局そうなれば彼らは原発建設も原発輸出もできなくなります。

    9.市民一人一人が原告になることで原発体制をなくす、社会を変える当事者になれるのです。いいですね!
    写真: 誰が考えたのか、こんな仕組みー原発マフィアの陰謀!

    1.アメリカを中心とした列強は核による世界支配のために、自分達だけが核を独占し他国に作らせないためにNPT(核不拡散条約)体制を作りました。

    2.列強は核兵器を作らないという条件で原子力の平和利用という名目で原発製造を許し、ウランの供給、徹底した管理によってNPT体制をより強固にしてきました。

    3.原発供給にあたって各国に作らせたのが原子力損害賠償法(原賠法)です。「無過失」「責任集中」を謳い、事業者(電力会社)に無条件で被災者に補償すること(ただし金額は1200億円)を明らかにしました。

    4.しかし同時に、原発メーカーには責任がないことに重ねて言及し、PL法は適応しないとまで記しています。即ち、原賠法は、「原子力事業の健全な発達」を真の目的にしていたのです。

    5.事業者(東電)に全て保障させる、1200億円を超える金額は(今は、15兆円!)国家賠償として政府が支払う構造で、これは最初から織り込み済みです。

    6.ただし、東電は電気料金への上乗せ、政府は納税者の税金で支払い、結局、すべての負担は市民に押し付けられており、そこから免責された原発メーカーはなんら批判されることも、責任を追求されることもなく自由に原発を建設し、輸出することで原発マフィアを太らせ、列強の世界支配を強化することになっています。

    7.日本はGEの輸入にあたってアメリカから原賠法の制定を強要され、今度は日本が原発輸出に際して原賠法を相手国に強要しています。これは植民地主義そのものです。すなわち、原発体制はグローバリズムと合わせ、大国の植民地主義なのです。

    8.メーカーの責任を明らかにすることで、メーカーに市民は直接補償を求めることができるようになり、免罪を理由に好き放題してきたメーカーは膨大な補償金を被災者に請求されるようになり、結局そうなれば彼らは原発建設も原発輸出もできなくなります。

    9.市民一人一人が原告になることで原発体制をなくす、社会を変える当事者になれるのです。いいですね!

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  2. 集会主催の共同代表の世古一穂さんのコメント(FBより)

    今日から、師走。
    昨日は、希望フォーラムで韓国脱核ツアーの、報告と、原発メーカー訴訟の話を、じっくりと聞き、討論した。とても良い会だった。

    韓国の蜜陽みりゃん のスライドをみて、寒い山の中で、原発からの送電線の鉄塔建設反対をしているお母さんたちに、想いを馳せ、どうぞ元気でと祈った。

    原発メーカー訴訟の島 弁護士は、とても分かりやすく訴訟の意味を、解説。原発賠償法では、メーカー責任が問われないのは、憲法違反であるという論理がよくわかった。

    参加者は、全員、原発メーカー訴訟の原告になってくれた。
    裁判というと、腰が引ける人が多いが、この原発メーカー訴訟に参加することは、とても意義があるし、全うな市民の権利を、行使できる、原告になれるチャンス!だ。

    もしも、裁判に負けても、なんら負担はないから、是非
    みなさんも安心して原告になっていただきたい。

    フクシマがあんなことになっても原発を作ったメーカーがなんの責任も取らない構造は、まちがっている!

    また、安部政権は原発メーカーと一緒になって原発を、第三世界の国々に売りつけようとしている。

    これを止めないでおくと、フクシマのような事故が第三世界の各国で起こる可能性がある。
    そのときの保障を、日本政府がやるということは、私たちが税金で保障することになるのだ。

    なんとか、原発賠償法は憲法違反の法律だから、メーカー責任を問うことに、市民の力を合わせる必要がある。

    原発メーカー訴訟について、学習会を持ちませんか?
    世古までご連絡いただければ、弁護士さんとセットで出前します。

    原発賠償法の期限が、3年なので、フクシマからすでにこの12月で3年になってしまいます。
    原告、千人が目標ですが、まだ300人数くらいしか集まっていません。
    皆さん、ご協力を!ご連絡を!

    ⭕️フクシマの災禍人災冬日かな

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  3. モータン -CS 人権 反核 脱被曝- ‏@mortan_cs

    なるほどです。とても分かりやすい解説で、原子力産業の構造の問題点がよく分かりました。核の問題の全体構造を顕在化させる訴訟、ぜひ頑張ってください。応援します。

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