2013年11月30日土曜日

原発建設が予定されているトルコ・シノップ市民団体から日本の国会に宛てた要請書

トルコとの原子力協定が批准されようとしています。原発輸出に先立って両国間の協定が必要なのです。「環境・持続社会」研究センター(JACSES)田辺有輝さんがトルコ・』シノップ市の市民団体が、日本の国会議員に出した要請書をデーターで送ってくださいました。みなさんに公開します。

なお、田辺さんは私へのメールで、「レターで指摘している「異議申し立ての制限」の該当箇所が原子力協定のどの条項かはわかりませんが、おそらく原子力協定上の紛争解決として国際司法裁判を行うとしている条項(第12条)かもしれません。」と書かれておられます。また、「なお、一般的に二国間条約上の紛争をどちらか一方の国の裁判所で裁くことは公平ではないため、第三国に仲裁を求めるこの規定は妥当なものだと思います。」と書かれており、この点はしっかりと確認いたします。

なお日本とトルコの原子力協定の内容は以下の外務省のHPから見ることができます。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page4_000075.html

参考資料:
  2013年4月4日木曜日
  三菱重工、地震大国トルコで原発受注と日経報道
  http://oklos-che.blogspot.jp/2013/04/blog-post_4.html

  2013年6月4日火曜日
  SYNDROME通信 《今トルコで何が?世界が注目するトルコの騒動!》ー望月文雄
  http://oklos-che.blogspot.jp/2013/06/syndrome.html

 
本書簡は、日本政府・企業が原発建設を進めているトルコ・シノップ市の市民団体による日本の国会に対する要請書である。原文は英語及びトルコ語で作成され、
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が以下の仮訳を作成。

参議院議長 山崎正昭様
外交防衛委員会委員長 末松信介様
衆議院議長 伊吹文明様
外務委員会委員長 鈴木俊一様

201353日、「平和的目的のための原子力の利用における協力のための日本国政府とトルコ共和国政府との間の協定」及び「トルコ共和国における原子力発電所及び原子力産業の開発のための協力に関する日本国政府とトルコ共和国政府との間の協定」の署名が行われた。トルコは原発も高度な技術力も持っていない国だが、日本はトルコのエルドアン首相の原子力発電所建設計画に関与してきた。

5月以降、両国政府間でシノップ原子力発電所建設事業を実現するための「ホスト国協定」に関する交渉が開始され、1029日に合意に達した。この期間は、トルコはゲジ抗議運動の論争一色となり、この交渉は、一般には公開されずに行われていた。トルコはアレバと三菱重工が開発したアトメア1型原子炉を黒海沿岸の60平方キロメートルの土地に建設する最初の国になる。

シノップ原発では、国際的に認められた形での独立した環境アセスメント報告書は作成されていない。数十年しか運転しない原発によって、数百年・数千年続いてきた固有種の動植物・海洋生態系が破壊されようとしている。人類が地球に誕生する前から続く黒海の海流・生態系が原発の温排水によって永久に破壊されようとしている。黒海の漁獲シーズンは聖書の時代より刻まれており、何世紀にも渡って晩秋の到来がファンファーレと共に迎えられてきた。

シノップ原発では、4基の原子炉が220億ドルの費用を費やして建設される。シノップにおける原発建設は、将来世代に対して巨額の負担を押付けることになる。日本政府や原発業界は、トルコに原発を輸出する政策を撤回するべきである。ジョン・F・ケネディ元大統領は、「間違いは、あなたがそれを正すのを拒むまで間違いとならない」と語った。

エルドアン政権は、専門家らの助言を受けることなく進められた。原発推進側の人々であっても、エネルギー省が専門家らとの議論もなく重要な決定をしたことを批判している。専門家らは、トルコが世界のどこにも設置されたことのない型式のアトメア型原子炉を選択したことを懸念している。また、日本とロシアの原子炉を同時に運転するために必要な技術力を整備するためには、更に数十年を要すると指摘している。

2006年以来、シノップ住民は原発建設に反対してきた。トルコの環境運動の歴史の中でも最大の抗議行動のひとつは、20064月に何千人の人々がシノップに結集し、エルドアン首相に原発建設を中止するよう要請したものである。何千人もの署名が集まったが、政府からの出席や返答はなかった。アックユ原発もシノップ原発も、住民の同意は得られておらず、アックユ原発の環境アセスメントにおいても住民の参加は実現していない。

環境アセスメントにおける市民の参加は民主的な意思決定に不可欠と理解されているが、トルコの市民はこれを手に入れることができていない。日本では受け入れられないような報道の自由、表現の自由、集会の自由の侵害は、最終的に民主的な意思決定プロセスの終焉をもたらすだろう。そうであってはならない。

シノップの人々は、1986年にチェルノブイリ原発の事故によって放射能の影響を受けており、原発の副作用をよく理解している。トルコ原子力庁は、事故の結果を秘密にし、今日でもチェルノブイリ事故による放射線量に関する情報は地図1枚でさえ一般に公開されていない。現在の大気中の放射線量も公開されておらず、政府は歴史的レベルの放射線量による人々の健康への悪影響の事実を否定している。しかし、チェルノブイリ事故後の黒海沿岸の住民のがん発症率が明白な証拠である。

この明白な失敗の結果、政治的な意思で操られる放射線防護当局はトルコ市民の信頼を失った。2007年以来続いているイズミールにおけるスキャンダルは、トルコ原子力庁による放射能災害から市民の健康を守る取り組みが改善されていないことを明らかにした。トルコ政府は福島原発事故後、放射能防護車を1台購入したが、エルドアン首相の現地調査のみに使用されている有様である。

トルコ国土の大部分は、世界で最も活発な活断層の巣である。1999年にトルコ北西部を襲ったマグニチュード7.4のイズミット地震では、17000人が死亡し、50万人が家を失った。次に起こる大地震の一つは、トルコ経済の中心であるイスタンブールで発生すると予想されている。過去11年間続いている現在の政権は、日本では考えられないような脆弱な都市インフラや建物の崩壊からの復興の遅れを専門家から批判されている。

アックユ原発とシノップ原発の両方は、活断層の近くに建設される。もし、そのような危険な場所で原発を運転することが適切かどうかを決める際、活断層の存在を考慮しなかったとしたら、新しい日本の原子力規制機関は建設を許可しないだろう。福島原発事故後に強化された安全基準により、日本のすべての原発が停止している。

福島原発と同様、シノップ原発も海に面している。エネルギー省の研究対象となっていないが、シノップは自然の贈り物である風と波のエネルギーという選択肢を持っている。201311月には、福島沖に設置された浮体式風力発電が運転を開始した。シノップでも政治的意思決定者によって機会が提供されていれば、確実に風力を利用することができるだろう。

トルコは文明の発祥地であり、シノップは数千年前に古代ギリシャ船員の最初の植民地として設立された都市である。現在の住民は、この土地の唯一の安全な番人である。陸、海、水を無傷で将来世代に引き渡していかなければならない。私たちにこの使命を貫かせて頂きたい。福島の悲劇をこの土地で繰り返さないで頂きたい。日本が危険な原発を輸出することを停止して頂きたい。私たちは、日本政府に対してトルコに対して安全保障上の脅威をもたらす協定の即時撤回を求める。協定ではトルコの裁判所における異議申し立てを制限しており、これは民主主義を無視したもので、トルコの憲法違反である。

Sinopbizim Group
Anti Nuclear Sinop
Diren Sinop Group

201311
  

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