2013年11月24日日曜日

講演内容:アジアのキリスト者との連帯で戦う原発メーカー訴訟 -在日コリアンの視点から-

2013年日本キリスト教会東京中会第三回靖国学習会

アジアのキリスト者との連帯で戦う原発メーカー訴訟
 -在日コリアンの視点から-

               崔 勝久(チェ・スング)
                   原発メーカー訴訟の会事務局長
                   NoNukesAsiaActionsJapan 事務局長
                   原発体制を問うキリスト者ネットワーク(CNFE)共同代表

日時:20131122日(金)午後6時半から午後8時半
場所:横浜長老教会(045-321-5675

当日は、参考文献で私がこれまで記したものを資料としてだしましたので、それを読んでいただければわかることは講演の中で割愛し、「在日」の置かれている状況、「在日」の立場から見えてくることを前半に説明いたしました。

多文化共生は植民地主義イデオロギーであること、多様性を強調するもののそれは「文化」に限定したものであり、川崎の外国人市民会議にしても在日の政治参加、地域で生きていくための発言を骨抜きにしているという実態から、「共生」は為政者の立場からは「統治」と同意語であることを話しました。従って多文化共生は原発体制を批判、打破するものではなく、それを補完するものであるといえましょう。

「在日」の人権を無視する際たるものとして、「当然の法理」をあげ、地方公務員に採用された外国籍公務員に課長以上の管理職にならせない、市民に命令をする職務に「公権力の行使」を理由に就かせないとする「当然の法理」こそ、「川崎方式」が全国に蔓延させた多文化共生のイデオロギーであり、これは違憲です。公務員の職務を国籍や宗教や性という属性で差別することは許されないのです。

「当然の法理」という政府見解こそ、在特会の「朝鮮人を殺せ」という動きにつながり、
「民族・国籍を超えて協働して地域社会を変革しよう」と訴え始めた私のネット発言を封じ、3回にわたりグーグルを使えなくした右翼の動向とも一致するものです。それは国民国家を前提にする考え方であり、「国民国家とは、植民地主義を再生産する装置」と看破した、故西川長夫さんの慧眼に敬意を払わざるをえません。

国民国家を豊かにするということで作られたのが原発です。しかし原発は被曝労働者と、大都会による地域への差別・抑圧・搾取を前提にしていたのです。そしてデフレから脱却し日本経済をよくするために原発の輸出を進めるという政権の考え方こそ、人としての倫理に反したもので、そのことをキリスト教会こそ先頭に立って、福音のメッセージの内容として伝えるべきものではないのか、しかるにWCCにおいても日本のキリスト者からそのような明確なメッセージはなく、世界の中ではまったくプレゼンスがなかったという話をさせていただきました。

発題レジュメ                 
1.Peace for Life WCCに参加して
(1) これまでの歩み
3.11を経験して
CNFE(原発体制を問うキリスト者ネットワーク)
NNAA No Nukes Asia Actions)の結成
(2) 原発メーカー訴訟の会の結成
市民の国際連帯運動→一国平和主義の克服
2.3つの仮説と1つの具体的な提案
(1) 被害の曖昧な追及、無責任体制
・戦争責任(日本キリスト教団の場合)→天皇の責任は?
・広島、長崎の被曝→対アメリカ、被爆者2世
・公害・薬害、福島の場合
(2) 加害者性の忘却、無関心
・被害の責任追及の不徹底さと表裏一体
・歴史認識(対韓国)
・公害の輸出、原発輸出
(3) NPT体制、原子力損害賠償法律、在日への差別、植民地主義
・植民地主義として捉えることで社会構造の矛盾があきらかに
・多文化共生は植民地主義のイデオロギー(国民国家の克服)、

・グローバリズム、新自由主義、原発体制は植民地主義

参考文献

崔勝久 「日本のキリスト者へ、市民の国際連帯運動への呼びかけ」『福音と世界』11, 2013
同 「 311フクシマ原発事故をキリスト者としてどう受けとめるべきか」『原発とキリスト教―私たちはこう考える』新教出版社 2013
同 「東日本震災を「在日」としてどのように捉えるのか―地域変革の当事者としてー」 鈴木江里子編『東日本大震災と外国人移住者たち』(明石書店 2012


原発問題に関する私論(ブログOCHLOSに掲載したもの)
一人の人間として、市民として生きることー原発体制に抗して
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/09/blog-post_20.html

日本のキリスト教会にイエローカード
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/09/blog-post_15.html

「地域の変革と国際連帯の運動によって日本をよりよい社会へ」月刊『社会運動』388,389号 2013 http://oklos-che.blogspot.jp/2013/07/blog-post_15.html

「植民地主義に抗する国際連帯を地域から」『部落解放』4,5月号 2013
http://www.oklos-che.com/2013/03/blog-post_22.html
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/05/blog-post_7.html

国際連帯を求めて~一国主義の克服~
http://oklos-che.blogspot.jp/2012/12/blog-post_8924.html

歴史の不条理に立ち向かうということー原発体制は植民地主義という仮説
http://oklos-che.blogspot.jp/2012/12/blog-post_10.html

市民の脱原発のネットワークをー「脱原発で市民連帯、核軍縮へ」
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/02/blog-post_13.html

韓国からの報告ー多くの出会い、韓国の実態の目撃
http://oklos-che.blogspot.jp/2012/11/blog-post.html

[特別寄稿]福島の教訓と "良い生活"ー韓国の碩学が語る

台湾5日間ー反原発の国際連帯を求めて
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/04/taiwan-symposium-report.html

深刻な事態になっています。台湾の反原発運動の現状に関するレポートです
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/03/blog-post_9.html

モンゴルから世界の核事情が見える、最新のモンゴル事情の決定版ー今井良子さんの講演より http://oklos-che.blogspot.jp/2012/09/ustreamdehttpwww.html

モンゴル国のウラン開発・原発建設・核廃棄物処理場建設についてー今岡良子
http://oklos-che.blogspot.jp/2012/08/blog-post_3.html

危機的な状況に瀕したモンゴルを訪れて

在日問題に関する私論
個からの出発 -在日朝鮮人の立場から-
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/06/blog-post_6.html

地方自治体の在日差別・抑圧の根は何か
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/04/blog-post_6.html

日本社会は「韓国人を殺せ」とデモすることを、言論の自由とするのか?
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/03/blog-post_16.html

「多文化共生」は、現代の植民地主義のイデオロギーです
http://oklos-che.blogspot.jp/2012/10/blog-post.html

「捨てられた石」ー在日として生きて来て見い出したこと

日立が原発をつくり続けるのはなぜかー民族差別についての公式謝罪文書を手掛かりにして http://oklos-che.blogspot.jp/2012/09/blog-post_7.html

国際連帯と地域の民主化は同じ根ー川崎の実例は全国の先駆け
http://oklos-che.blogspot.jp/2012/08/blog-post_21.html

2 件のコメント:

  1. 崔 勝久様

    昨日の講演、また事前の語り合い、有益かつ楽しいものでした。人と会っても、事務
    的な伝達だけで終わり、そこからかフレッシュされる場合が少なくなりました。人間
    関係の砂漠化が進んでいるようです。砂漠化に抵抗して行くために、大きいことは出
    来なくても、やがて育ちあがる苗を植えて行きたいものです。「運動」が効率だけを
    求めるのでなく、運動目的と一見無関係な苗を育てる余計な業を少なくとも誰か気が
    ついた人が、喜びを感じながら、やっていなければなりません。

    崔さんの話が私にとって有益なのは、自分が見落としていた点、また自分も或る程度
    気付いていながら、それ以上掘り下げようとしないでいた点を指摘される要素、それ
    は「在日」という視点から見ていることでしょう、それがあるからです。

    そういうものを受け取って有難がるのは、私にも「クリスチャンである」というマイ
    ノリティーの要素が幼い時から組み込まれていて、この目が良く見えるようにして置
    かなければ、生きている意味がないと思っているからです。この目が見えるように
    なったのは戦争の中に投げ込まれた時でした。他の人と同じものを見ていながら、見
    える見え方が違うのです。この違いを大事にしなければならないのに、見え方の違い
    を曇らせようとする力が、自分のうちにもあり、教会のうちにもあるので、それと戦
    い始めたのです。日本のキリスト教は、しかし、ますます目の曇った存在になってい
    ます。「在日」の方が傍にいてくださることは有難いです。

    渡辺信夫

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  2. 崔さん

    昨日は、すばらしい講演を有り難うございました。
    参加者が少なかったことは、大変申し訳なく思っておりますが、日本キリスト教
    会に欠けている行動力、国際性、倫理観、差別に対する義憤などを、同じ志を持
    つ仲間として語っていただけたことは、大変嬉しいことでした。
    数は少ないのですが、私たちも全力で支援を致しますので、今後ともよろしくお
    願い申し上げます。

    モンゴルの学生は一番アテにしていた卒業生が清掃事業を立ち上げたところで多
    忙を極めているとのことで、仲間を捜してくれるという返事をもらっています。
    私はモンゴルには行ったことがありませんが、確かに現在、異常なバブル経済が
    進行しているようです。

    今後、ドイツとインドネシアに行かれる予定とお聞きしましたが、インドネシア
    では具体的な予定が立っていらっしゃるでしょうか。私自身は多少インドネシア
    語ができるものの、これまで反原発運動に関わっている人との繋がりはありませ
    んでした。しかし、インドネシアの人権問題に関係している人たちとの繋がりは
    ありますので、何らかのお手伝いが出来る可能性があります。また、NCCJ ドイ
    ツ委員会委員長の菊地純子先生は、日本キリスト教会の会員であり、私も親しく
    しております。原発問題にも極めて熱心に取り組んでいらっしゃいますので、ま
    だお知り合いでないようでしたら、是非紹介させていただきたいと思います。ド
    イツ語をはじめ、ヘブル語など、数カ国語を自由に使う方です。日独教会協議会
    のメンバーで佐藤信行さんや内藤新吾先生ともご一緒のようでしたので、あるい
    は既にご存じかも知れませんね。

    昨日の集会の報告を私が日本キリスト教会のヤスクニ通信という情報誌に投稿す
    ることになっていますので、またご相談させていただきたいと思います。よろし
    くお願いいたします。

    とりあえず、お礼を申し上げる共に、今後のご活躍に主の祝福が豊かにあります
    ようお祈りいたします。

    小塩海平

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