2013年9月4日水曜日

川崎市阿部市長からの回答

阿部川崎市長から8月30日付けで、私たちが出した抗議文への回答が送られてきました。2013年7月29日月曜日 「川崎市長 阿部孝夫氏への抗議文を公開しますー焼却灰海面埋立実施について」  http://oklos-che.blogspot.jp/2013/07/blog-post_29.html

 質問内容は、以下の5点です。

1.川崎市は4月の焼却灰投下の決定は市民への説明のうえでなされたと議会・環境委員会で報告し、私たちへの説明会の場でも同じ話しをしましたが、実際は一般市民への文書による説明も、具体的な市民への説明会もなかったことが判明しました。本格的な浮島処分場への海面埋立にあたっては、市民への説明会を早急に開催することを求めます。

2.セシウムはゼオライトで永久に吸着可能という環境局の判断に誤りがあります。また、実際の海水に接触している自然状態で長期間保管していくことを前提にした実験・調査の過程を踏まえずに、実験室で行われた結果に基づいて実施された今回の実施には科学的な手法における問題があります。

3.ごみの焼却の際にフィルターでセシウムは99%取り除くことができるとの判断に関しては更なる検証が必要です。焼却や焼結処理で気化したセシウムが大気中に拡散し、処分地および焼却場周辺を汚染する可能性が無視されています。

4.遮水性護岸構造物から内水が外に漏れることはないとの見解、及び東京湾に放流しても生物濃縮の影響はないという見解に関しては徹底した検証が必要です。福島県の処理済みの放射能汚染水を海に排出する問題とも通底していると私たちは捉えます。

5.そもそも今回の放射性物質の問題が発生したのは東京電力の責任であり、放射性物質に汚染された高線量の焼却灰は未だに臨海部に放置されたままです。津波が来ればどうなるのでしょうか。放置されたままの高線量の焼却灰が市街地にコンビナートの油や劣化ウランなどの有害物質などともに流れこむのは明らかです。東京電力との交渉の内容を公にし、その交渉に市民の参加を認めるべきです。

またその後、熊本教授によって、私たちの主張を補完する見解が学問的な検証の上で公表されています。

2013年8月21日水曜日
放射能焼却灰の海面埋立は汚染をもたらさないかー熊本一規   

http://oklos-che.blogspot.jp/2013/08/blog-post_21.html

①  廃棄物埋立に伴う海洋汚染を護岸で防ぐことは不可能である。
② 埋立地の地下水位の管理も海洋汚染を防げない
③ ゼオライトはイオン交換作用を持つため吸着されたセシウムが溶出する恐れがある。
④ セシウム等の放射性物質も生物濃縮する。濃縮係数は特に淡水魚において高い。
 したがって、川崎市におけるがれき焼却灰の海面埋立が海洋汚染をもたらす可能性も、魚介類が放射能で汚染される可能性も否定することはできない。

川崎阿部市長からの回答は上記の私たちの疑問にまったく応えていない不誠実なものです。抗議文の対応する市長の見解をまとめてみると以下のようになります。

1.「埋立に際しては、市議会、地元町内会、浮島地区の企業、関係者を中心に、対応の検討状況、安全対策などについて説明を行い、御理解をいただいてきたものと考えています。」

2.「ゼオライトのセシウム吸着効果について確認した」、「ゼオライト処理による安全対策については、複数の有識者にも、確認及び評価をいただいているところです。」

3.「国の検証等により、放射性セシウムは99%以上除去できることが確認されています」、「本市の焼却場においても、排ガス中の放射性セシウムについて濃度測定を実施そており、放射性セシウムは不検出となっております。」

4.①「埋立処理場の護岸は、管理型処理場として法で定められた基準を満たしており、護岸から、内水が外に漏れることはないとされております。」 
②「農水省(水産庁)による魚を用いた室内実験では、・・・食物連鎖を通じて魚体内で蓄積し続けるわけではなく、魚体内に入った放射性物質は体外に排出される」。

5.①「今回の放射性物質に関する問題は、東京電力株式会社によるものと認識しておりますので、引き続き東京電力株式会社と協議・交渉を行ってまいります。」
②「一時保管している灰は、・・・さらに、転倒防止措置などの安全対策を行ってまいります。」

反論:
1.「御理解していただいたものと考えている」ということであって、実際、具体的に市民への説明は公的な文書によって行われず、説明会なども一切行われていません。ただ町内会の会長(一人)に説明し、他の町内会長およびそこから住民に伝えてほしいと依頼しただけなのに、市議会には住民に説明したと「虚偽」の情報を与えています。

2.吸着効果は確認しても、実際に吸着したセシウムが遊離し溶出するという物理現象に関しては言及していません。

3.国が「99%除去できる」と言っていることに依拠し、実際に焼却場外での調査が行われていません。「更なる検証が必要」という私たちの主張を無視しています。

4.①これも国の基準通りに護岸を作ったのだから、「放射性物質に汚染された)内水が漏れることはないとされている」と国に責任転嫁をはかっています。検証することさえそのことで逃避しています。
②室内実験しかされておらず、魚体から体外に排出された放射性物質はまたプランクトンから小魚に食されるという食物連鎖の危険性はないという説明にはなっていない。安全を証明する方法論があまりに貧弱すぎます。

5.①今回の焼却灰の問題は根本的に東電に責任があると認識していながら、どうして市民が東電との交渉に参加することに言及していないのか、わかりません。
②これでは津波が来た時、一時保管している高線量の焼却灰が海と市街地に流れだす危険性を防止できるのかという私たちの懸念について一切、応えていません。

あらためて私たちは、「放射性問題を考える川崎市民連絡会議」の公開事務局を開催し、市長回答への反論、及び、「虚偽」の報告を市議会に対して行い、各政党が誤った判断をしたことに対する各政党への質問、さらに秋の市長選に立候補する次期市長への公開質問を準備いたします。














4 件のコメント:


  1.  化学専攻の友人、N氏・O氏からのコメントを紹介します。
     
    N氏
    1)ゼオライトの件ですが、実験の全生データを公表させるべきです。
       失敗実験があればそのデータも含めて。
       生データは素人には扱いにくいものではありますが、全ての生データを公表した上で
      解析データを発表用とすると、ごまかしにくくなります。
       先日発覚した、高血圧の臨床実験ではデータを改ざんしていましたし、
      改ざんしていなくても、実験のミスと称して、邪魔なデータを排除する恐れがないとは 
      いえません。

     2)焼却場からの放射性セシウムに関しては、
      検出限界とともに、分析方法、分析を行った機関を公表させるのがいいと思います。

    O氏
     1)タンクを使ったカラム試験のデータ 公表すべきではないか。
       ビーカー試験とタンク(大きさは?)試験の比較  スケールアップの難易は
     2)市焼却場の放射性セシウムは不検出
       検出下限は、
     3)護岸から内水が外に漏れることはない
      

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  2. N氏の追加コメント

     一つ忘れていました。
     焼却炉の排ガスのセシウムですが、検出限界で終わらせずに、排ガスからセシウムを濃縮などして、何とかしてセシウムを検出して、実際の濃度がどれくらいであるか、その濃度が問題ないことを確認する努力をしてもらった方がいいように思います。

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  3. 市からの回答は、従来の説明を繰り返したもので、市民の疑問に向き合った答えになっていません。
      ・参考に、5月23日の市回答を添付します。比べると殆んど同じ説明です。
    なお東電への交渉云々が書いてありますが、これまで市民から出された「請求を進めるべし」の意見を考慮した、との姿勢を示すためと思います。

    回答は現市長の、市民に向合わない姿勢を反映しており、環境局としては、
    それを越えての説明は出来ない、のでしょう。 
    また、説明のレベルは尽くしてしまっており、より良い解決へ向かって努力する意思、対案を考えようとする意思があるかどうかはハッキリしない。

    詳細は14日の議論として、一読の限りで感想ですが、以下の項目は、更に具体的な反論と、提案を出して行く事が必要です。
       ・セシウムのゼオライト吸着性能。
       ・処分場の護岸からの漏水。
       ・生物濃縮。食物連鎖。
       ・安全基準数値と、安全確保対処策。その他。
       ・市民参加の検討会議などの提案。

    ところで、一般家庭ごみ、下水道汚泥の「焼却」と言う処分方法が続く限り、放射能汚染をなくす事は出来ない。
    焼却しない処分方法を考えるべきで、それが持続社会への課題のひとつだと思います。解決をめざして学習の機会を持ち、議題化して行きたい。
     
    どうしたら「市民の生命、環境の安全、市民主権」の行政へ変わるのか。その対案が描けるのか。 突っ込んだ議論をしたいと願っています。

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    1.  なんでもかんでもダメダメばかりでは、物事はなにもすすまない
      対案も出さずにダメ出しばかりでは、言うだけ番長でしかない。
      現実に、セシウムを含む焼却飛灰は蓄積する一方だし、なにもしなければいつか
      現在の貯蔵庫の限界を超えてあふれてしまい、最悪の事態を招く
      その前に、現実的に出来る方法を採用したということだろう。
       これよりも、現実的でコストがかからず、より良い方法を考え、提案することこそ、
      今一番望まれることではないか。
       まだ、下水道汚泥という、処理が困難な課題も残っていることだし・・・
       反対ばかりでなく、行政に協力し、共に困難に立ち向かう、という視点を持ってもいいと思う。

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