2013年4月16日火曜日

日本のマスコは伝えない:北朝鮮は国際的に孤立していないービデオニュース・ドットコムより


Facebookで知ったので、ビデオニュース・ドットコムを見ました。宮本悟さん(聖学院大学基礎総合教育部准教授)へのインタビューは4月13日に行われたようです。彼の専門は政軍関係論,安全保障論で、政策過程がわからない単なるコリアウォッチャーには、どうしてこのような緊張が生まれたのかわからないだろうと自信をのぞかせていました。

http://www.youtube.com/watch?v=UBQLvv60Nk4&feature=youtu.be


勿論、本人に具体的に日本のとるべき政策は何かという決定的なことを言うことはできないでしょうが、インタビューそのものは淡々と司会者の質問に応えるかたちで進められ、私の知る範囲では、客観的で、正確な発言をする人だと思いました。彼の説明からしても、日韓は米朝の関係悪化の影響を受ける立場で、制裁によって北朝鮮を屈服させるということはないということを大前提にしていました。

コメントの中で比較的正確にまとめているものがあったので、それを参考にして主に私のメモを中心に、宮本さんの意見を紹介します。

1.北朝鮮の立場、論理
今年の1月末の国連安保委の制裁案に対して反発する形で今日に至っているが、北朝鮮にとってはアメリカから攻められる、攻撃されることへの恐怖心から抑止力として核、ミサイルを装備しようとしている。アメリカとは朝鮮戦争以後、平和条約のない敵であり、本来ならば平和条約の締結をして仲よくするのがベストであり、核開発をせざるをえない現状は北朝鮮にとっても成功とは言えない。

今の緊張は外交問題でなく、安保政策の問題としてみるべきで、大変複雑であり、両国のボタンの掛け違いからきているものと思われる。アメリカにとっては、北が核を持つことそのものが悪であり、その放棄が交渉につながると主張している。このように北朝鮮を追い込んだのはアメリカとしても北朝鮮政策の失敗と言える。

その原因は、日米の北朝鮮に対する過小評価が原因だと思われる、90年代の大量の餓死によってまもなく北朝鮮は崩壊すると考え、そのような国が核やミサイルの開発ができるわけはないとみくびっていた。

しかし北朝鮮はそもそもが農業国でなく農業政策の失敗(この点では食料の輸入に頼る日本も大差はない)は食料輸入の問題であり、歴史的にも日本の占領下において工業で成り立っており国民の知的水準も高い。その後はソ連のバックアップによって専門家が育ち、今指導的な立場になっている。ソ連の技術、パキスタン、その他闇ルートから核、ミサイルの技術を習得した。

これまで歴史的に核開発を放棄した国として南アフリカと対比されるが、南アは開発の事実を公表せず、核を放棄したというのが最初の発表であった。北朝鮮にしたら、核を放棄することは、リビアやイラクのようにアメリカの武力によって滅ぼされるという恐怖感をもっている。

アメリカもまた、北朝鮮の核とミサイルの実態が把握できず、核弾道を積んだミサイルが米本土に来ないと断言できずに不安な状態にある。現状はDeadlineとして戦争に一歩間違えば突入する危険性があると軍部の責任者と国務長官はコメントしている。

また北朝鮮は国際的に孤立していると報道されているが、世界200ヶ国のうち170ヶ国が国交を持ち、時に米ソに属さない非同盟国として、アフリカや中東では北はアメリカいじめにあっているという認識の下、さまざまな交流があり、決して孤立しているわけではない。西ヨーロッパでも北と国交がないのはフランスとアンドラ公国だけあり、英国とスウェ―デンは平壌に大使館を置いている。

2.韓国と日本の立場
韓国は前李明博大統領が北の核放棄を前提にしたが、新大統領は、朝鮮半島信頼プロセスとしてまず交流ありきを前面に出し人的交流の中で北の変化を期待したが、現状は開城の完全封鎖(完全に工業団地の機能をなくした)やこれまで築きあげてきたことはすべて北によって白紙にされて、構想の段階で朴大統領の政策は行き詰ってきた。

韓国はアメリカのバックアップを受け、兵器の装備も近代化しているとは言え、戦争は強い者が勝つとは限らず、万が一の局地戦の場合でも、山岳地帯や都市でのゲリラ戦になり、韓国の受けるダメージはあまりに大きすぎる。いずれにしても韓国は米朝関係の結果に引きずられるかたちにならざるをえなくなっている。

一方日本は、制裁によって北を屈服させようとしているが、非同盟の北支持がある以上、制裁では解決しないことは明白であり、日本が唯一できることは、米韓の北の共同宣言や約束は全て破棄されたが、日本は唯一、北朝鮮との日朝平壌宣言がそのまま残っており、それを活用して秘密交渉を行い、米中の間を取り持つことはできる。しかしその人材、情報管理のシステムはなく、仮にそのようにしようとしても半年はかかる。国連重視外交、情報一本化のシステムを作り上げる必要がある。北朝鮮との秘密外交はむつかしい。

3、中国の影響力行使は可能か
これはすでに影響力はないとみなければならない。そもそもソ連と中国は北朝鮮を裏切り、韓国と国交を樹立させた国であり、北朝鮮が信頼しているとは思えない。貿易額をもって中国の影響力を期待する向きもあるが、それは日本にとってアメリカより中国の方が貿易額が増えても中国への影響力を行使できないのと同じ。経済と政治は次元が異なる。

私の印象:国連外交重視とか、情報管理の一元化、お互い相手国のサインを見逃さずよい兆しが見えたらそれをつぶさないようにしなければならないというところで宮本さんのインタビューは終わりましたが、それは仕方がないでしょう。過去、同じように緊張関係があったとき、元大統領のカーターが訪朝したのですが、私の意見は、アメリカが決断するしかないというものです。何ももたない、失うものがない方が強いのです。

参考までに:2013年3月10日日曜日
二回目の朝鮮戦争はあるのか?外交関係は小説より奇なりー黒崎輝『核兵器と日米関係』を読んで、日朝関係の将来を予測する
http://www.oklos-che.com/2013/03/blog-post_10.html


3 件のコメント:

  1. ●北朝鮮は孤立 してないですよね。モンゴル人は観光できますし、北朝鮮から働きに来ているし。お互いに大使館を置いている。

    ●テレビ朝日が「コッチェビ」(ストリートチルドレン)の隠撮り映像を特集番組としてよく流していた時、北朝鮮からモンゴルに病院をプレゼントするという援助がありました。

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  2. 客観的に、支持するしないではなく。
    これが大事だと思います。米日韓の政策や報道について異を唱えるだけで“親朝”だとレッテルを貼り(られ)、またそれを恐れてか、明らかな二重基準についても口を閉ざしてしまう風潮、非常に危険だと思います。朝鮮を支持するしない(更には、好きか嫌いか) の問題ではなく、本当に戦争を反対し平和を望むのであれば、報道の仕方も随分今とは変わる(べき)のでしょうが。

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  3. 論理は米国より北朝鮮の方が正しいでしょう。インドの核を認めて北の核は認めないというのは論理矛盾。だけど今の北朝鮮は危険過ぎる。本気で戦争意思は無いだろが、偶発戦の危険。昨日の米軍ヘリ事故も、米軍司令官が慌てると戦争に。

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