2013年4月1日月曜日

安倍首相はモンゴルで何を話し合ったのかー公表されていない内容の推測


戦略的パートナーとして
読売新聞
【ウランバートル=田島大志】安倍首相は30日、モンゴルの政府庁舎でアルタンホヤグ首相と会談し、火力発電所改修に42億円の円借款を供与することなどを盛り込んだ日本の経済協力策「エルチ(モンゴル語で「活力」の意味)・イニシアチブ」を表明した。外務相のHPでは安倍首相のモンゴル訪問に先立って、このように記されています。

<日・モンゴル二国間関係及び地域・国際情勢等について意見交換を行う予定です。
 我が国とモンゴルは,昨年,外交関係樹立40周年を迎え,共通の外交目標である「戦略的パートナーシップ」の構築に向けた取組を進めているところです。
今回の会合においては、物品貿易、サービス貿易、原産地規則、税関手続、投資、知的財産、競争、協力、ビジネス環境整備の分野につき議論が行われる予定です。>
(等、に注目!)

今回の目玉は何か。
今回のモンゴル側の目玉は、「エルチ・イニシアチブ」とモンゴル語で活力を意味する単語を使ったことから、日本からの経済協力を得ることであったのでしょう。「エルチ・イニシアチブ」には「石炭やレアアースなどの資源開発に向けての日本の投資を促すことや、モンゴルの大気汚染対策への技術協力も盛り込まれた」そうです。これが表向きの(モンゴル国民に向けた)メッセージなのでしょう。世界最大級のタバン・トルゴイ炭田開発にも日本企業は参加するそうです。

既にこの炭田に関するプロジェクトは世界的に関心を持たれていました。メッセージの内容は、記されたことと記されていないことから読み取る必要があります。今回の「エルチ・イニシアチブ」で触れられていないのは、ウランや原子力(の平和利用)という単語が完全に姿を消したことです。これはいかにも不自然で、逆にこのテーマで話し合われたことが推測されます。

日米モンゴルの3か国の連携強化が謳われた
安倍首相は対中国と北朝鮮に対する外交的な優位性を確保するために「モンゴルしかない!」と塩崎の助言を聴いてモンゴル行を決断したとまことしやかに伝えられていますが、中国とモンゴルの関係は、今回の日本とモンゴルの関係強化で弱体化されるような軟なものではないでしょう。安倍首相は「日米モンゴル3か国の連携を強化するため、政策対話を始める」ことでモンゴル首相と合意したかのように報道されています。

しかしこれは、2011年にアメリカの副大統領が8月下旬にモンゴルを訪問し、両国の声明文をだし、①アメリカはモンゴル人の米国滞在手続き(ビザ発行)を緩和する、②アメリカはモンゴルの第三の隣人になる(言うまでもなく、中国とソ連に次ぐという意味)、③原子力の平和利用に協力し合う、という声明文の継承です。

そこで東京新聞がスクープした日米モンゴル間のCFS(包括的燃料供給)構想が出て来て、東芝社長がアメリカ交換にだした手紙も暴露されました。東芝は広報でそのことを認め、「モンゴルのCFS構想は、国際的な核不拡散体制の構築、および同国の経済発展に寄与できるという点で意義がある」と述べています。(東京新聞web 7/2 http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011070202000039.html )

モンゴルは海に接していない
北朝鮮の拉致問題に関しても安倍首相は、「挑発的な行動は断じて許されない。日本人拉致を安倍政権で解決していく決意だ」と鼻息荒く決意表明しても、モンゴル側は、そっけなく「解決される時だ」と述べているだけです。どうしてか?モンゴルは海に接しておらず、どんなにウランや炭田を輸出したくとも、中国かロシア、そして北朝鮮の港を通してしか               輸出できないのです。
左の地図は、北朝鮮の羅津という不凍港で、中国、ロシアが長期契約しています。
この港は1932年に日本が満州国と日本本土を結ぶ最短交易港として開港されたもので、戦略的に非常に重要な意味を持っています。北朝鮮とモンゴルはこの港を使うことを既に話し合っています。
この図は、モンゴルの国営企業で日本国内で設立されている、モンアトムジャパンが考えた核廃棄物ルートです。今岡さんの論文に掲載されています。私見では仮に石炭をモンゴルから日本に持ち込むにはやはり、このコースが最短で、冬でも使える港ということになります。

内陸であるモンゴルは地政学的に周辺のいかなる国家とも仲良くやっていくしか生き延びる道はないと思われます。安倍首相が札束で相手を組み伏せることはできません。儀礼上、北朝鮮の拉致問題への憤りをもつ安倍首相には「解決される時」だと間接的な支持を表明しながらも、日本と北朝鮮との歴史的ないきさつ、国交正常化されていない現実も熟知しているはずです。列強に囲まれ生き延びてきたモンゴルは、外交にかけてははるかに日本よりしたたかなはずです。

私たちはモンゴルの動向に注目し、自然を愛する、モンゴルでの反原発を志しウラン採掘に反対する人たちへの支持と協力を約束します。



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