2012年11月24日土曜日

大統領候補者の劇的な辞退を見て、韓国在住日本人として思うこと

韓国在住の岡田さんから、先のソウル市長選でも最後の最後に降りて野党候補で民主化闘争の旗手だった現市長を推した安哲秀(アン・チョルス)氏が、今回も自ら大統領候補を降りる決断をしたことを現地で目撃して感じたことを投書してくださいました。ここに掲載します。

私は本日、自分のツィターで以下のように「つぶやき」ました。
韓国野党の大統領候補がとにもかくにも一人になり、保守に競り勝つ可能性がでてきた。『韓国 民主化2.0』(白楽晴 岩波)で書かれた「2013年体制構想」の芽は残った。日本は右傾化が進むだろう。脱原発を唱える党がはたして原発輸出反対を実行するのか、自国内だけのことにするのかどちらか?                       崔 勝久

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昨晩(11月23日)、12月19日に投票が予定されている韓国第18代大統領選挙に関して、市民派候補者・安哲秀(アン・チョルス)氏が突然立候補辞退を表明しました。このことを知り、驚きとともに感動を覚えました。

この間、民主党大統領候補・文在寅(ムン・ジェイン)陣営と無所属・安哲秀陣営は野党候補単独化に向け調整交渉をしてきましたが、交渉はほぼ決裂し、韓国の進歩と民主主義を求める人々は絶望を感じていました。

現在の韓国社会は、南北の緊張、解雇・非正規労働者問題、青年達の仕事の問題、原発の推進と海外輸出問題、偏向報道問題、企業型マート問題や社会福祉など庶民の生活の問題、それと関わってのFTA問題など、解決しなければならない問題が山積みされています。

その中で、立候補届け出日(26日(月))直前の昨日、安哲秀氏が一方的な(無条件)立候補辞退の選択をしたことは、苦渋の選択でしたが、韓国と東アジアの未来に対して禍根を残さない、現時点でなし得る最善の選択だったと思います。

文在寅氏と安哲秀氏は世論調査ではほぼ拮抗した支持率でしたが、現・李明博政権の与党・セヌリ党に次ぐ国会内勢力という組織を抱える民主党・文在寅候補陣営からは、立候補届け出直前のこの段に及んで、絶対に無条件立候補辞退などということはあり得なかったからです。

安哲秀氏ならびにその陣営の採った苦渋に満ちた選択に、私は心から拍手と信頼を送ります。安哲秀氏は、昨年10月のソウル市長補選で朴元淳・現ソウル市長に立候補を譲ったこと(この時、朴元淳氏の世論調査支持率は約5%、安哲秀氏は約20%)に加え、今回も譲歩したことになります。

今年5月、民主統合党・文在寅顧問(当時)は記者会見で、「安哲秀氏との候補単一化を越えて共同政府に進むべき」と発言しました。

ハンギョレ・サランバン
2012年05月11日10:33
[単独] ムン・ジェイン "アン・チョルスと単一化を越えて共同政府に進むべき"
http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1625192.html
http://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/532381.html

候補の単一化と安哲秀氏の立候補辞退の中で、「共同政府」問題は頓挫していますが、私は大統領選挙で勝利した後の政府は、民主統合党と市民派が連携した「共同政府」でなければならないと思います。選挙期間を通じてもこの問題の充分な討論がなされ、共同政府へ向けた努力がなされることを期待します。

私は民主党や安哲秀氏に対して、政策的には批判的な見解もあります。むしろ、脱原発を明確に掲げ、不当解雇労働者や非正規労働者の権理のために闘い、社会福祉についてベーシック・インカム(生存権所得)を模索し、新自由主義と闘う進歩新党が政策的には近いと思います。しかしながら、あくまで独自候補にこだわる進歩新党の選挙・運動論には批判的です。

京都を中心に発行されている季刊誌『アジェンダ』(2012年秋号9月に発行、執筆は8月末)に、私は「ある候補に投票することとその政策を全面的に支持することは違うことを明確にした上で、民主統合党と安哲秀陣営の共同候補化を支持しつつも、独自に進歩左派全体の結集のために努力することが必要である」と書きました。この見解は今も変わっていません。韓国の運動諸団体が一致点での共同行動をさらに進め、一致点が広がり・深まることを願っています。(添付ファイル)

最後に、日本の運動について書きます。
石原氏の突然の辞任によって行われることになった、東京都知事選では、脱原発、活憲、民主主義勢力は候補者の単一化に成功し宇都宮けんじ氏が立候補します。様々な市民・政治勢力がその勝利のために闘っています。しかし、同時に行われることになった衆議院選挙においては、多くの市民から「日本・世界の人々の生命・生活を脅かしている原発に反対する政治勢力の選挙協力を!」との声があがっていますが、諸政党からはそれに応える姿勢が未だ見いだせません。

日本と韓国は、「核」エネルギーとその輸出、不当解雇と非正規労働者、庶民の生活、そして朝鮮半島の南北間の関係改善と緊張緩和、歴史問題の清算など、共通する課題、共に闘わなければならない課題が多いです。

日本は、「安哲秀氏の立候補辞退」という苦渋に満ちた選択から学ばなければならない点が多いと思いますが、いかがでしょうか。

岡田 卓己@韓国・大邱市

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