2012年9月27日木曜日

がんを心配されている方へー「がん放置療法」ってご存知ですか

1.近藤誠のこれまでの著作
先に文藝春秋に今月掲載された近藤誠の最新の論文を紹介しました。「がん治療の常識への挑戦者、近藤誠の最新の論文を読んで」 http://www.oklos-che.com/2012/09/blog-post_24.html 。私はこれまで2回、私のブログで近藤誠を紹介しています。

2010年12月22日水曜日
近藤誠『成人病の真実』のお薦めーこれは絶対です!
http://www.oklos-che.com/2010/12/blog-post_9935.html

2010年12月17日金曜日
近藤誠は生きていた!-「がんもどき」理論の最終見解について
http://www.oklos-che.com/2010/12/blog-post_17.html
4回目は、私がこれまで読んでいなかった『がん放置療法のすすめー患者150人の証言』を紹介します。近藤誠のこれまでの本のタイトルをみればどんな「傾向」の医師かわかるでしょう。『抗がん剤は効かない』、『がん治療総決算』、『成人病の真実』、『がん専門医お、真実を語れ』、『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋)、いずれにしても既存の病院や薬会社にとってはあまりありがたくない存在で、これまでのがん認識と治療法の「常識」を覆してくれる放射線専門医師です。

私の妻の乳癌手術のことで触れましたが、それまで常識とされた、リンパ腺から筋肉すべてを根こそぎ取る「ハルステッド法」から乳房を残す「乳房温存療法」が標準化されてきたのは、近藤誠の貢献です。

2.近藤理論の根幹ー「本物のとがん」と「がんもどき」
彼の理論の根幹は、がんには転移する「本物のがん」と、転移しない「がんもどき」があるというものです。これは細胞の形をみても峻別できない(検査ではわからない)そうです。そもそも「私たちの体は60兆個の細胞からつくられており、1個の細胞には2万個の遺伝子が存在」し、そのうちがんとは「複数のがん関連遺伝子が変異し」して発生するものです。「転移を可能とする遺伝子変異の有無は、がん細胞の発生時に決定されており、発生後に変わることは」なく、「本物のがん」であれば、早期発見・早期治療に勤めても救命にはつながらない、という考え方です。すべてはここから出発します。

がんは最初の1個の癌細胞の発生から出発するのですが、発生した場所から血液やリンパ液の中を流れて他の場所に付着してそこで細胞を増やしていくのかどうかは、同じがんであっても、多臓器に転移する「本物のがん」と転移しない「がんもどき」とはそもそもの、がんを作りだす大本の「がん幹細胞」が違うのです。従って、早期がんを放っておくと周囲の組織に浸潤し、他の臓器へ移転する進行がんになり、さらに末期がんになり死ぬ」というこれまでの「ポリープがん化説」や「多段階発がん説」は誤りだということになります。

3.これまでのがん治療の問題点
さらにがんのメカニズムを原理的に考え、海外の文献を研究し多くの患者を診てきた自分の経験から、日本で行われるがん治療を批判します。多くのがん患者が苦しむのは、がんの固まりだけでなくその周辺のリンパ管からすべてを取り除くことで元の臓器の機能が喪失し日常のQOL(Qoality of Life)が下がり、がんとの闘いではなく「抗がん剤」の副作用があるからなのです。この本は女性の子宮がん、男性の前立腺がんやその他のがん患者の生の声が聞こえ、それを近藤誠が解説するので、大変読みやすく参考になります。癌のことが気になる私の身内や、友人に特に読ませたい本です。

最近もてはやされる「免疫治療」にしても、がんとはそもそも自己細胞が変異したものですから、人間の免疫システムががん細胞を敵とみなさないからこそがんは発生したのであり、後で免疫を強化するという「免疫治療」は原理的に成り立たないというのはよく理解できます。いくら早期発見だといっても、科学で識別できるがんの発見というのは「本物のがん」であれば発見時、とっくに転移しているのであって、術後に「抗がん剤」(これは絶対にやめた方がいい)や放射線治療をしても、何もしなくて様子をみた場合とは基本的に延命率は変らないのです。そうであれば高いお金を使い、痛い目をするより様子をみる「放置療法」はまさに近藤理論の行きつく、論理必然的な治療方法であるということになります。

4.近藤誠の「がん放置療法」
近藤誠の「放置療法」は、「現代医療において医者たちに奪われた(自分の体に関しての)自己決定権を取り戻す究極の方法」ということになります。「がんもどき」であれば転移の心配はない、「本物のがん」であれば何をしてもしなくても死亡率に差がなく、延命期間は変らないのであれば、そのがんによる実際の弊害(痛みや機能障害)がではじめれば、そのときに治療(痛みどめや、放射線治療、場合によっては外科手術)をすればいいのです。

「後書き」で近藤誠が、「どのようにすれば患者が苦しまず、最も長生きできるか」という観点から、「無理や矛盾のない診療方針を考え抜いた結果が、がん放置療法」で、「世界で最も新しい治療法ないし考え方であるとともに、最善の対処法である」と確信する近藤誠に私は全く違和感を覚えません。

最後の最後に、彼の理論を信じ「旧弊な医者世界」に抗して自分の道を歩んできた人たちと近藤のやり方を許してくれた慶応病院への感謝を述べ、そして何よりも彼なりに最善を尽くしたけれども命を縮め亡くなった患者へ、「あなた方が経験した悲痛が、そしてあなた方のことを思い出すたびにあふれる涙が、本書を生み出す原動力だったことをつたえたいと思うのです・--ありがとう。そして今一度、さようなら」と記しています。私は定年を間近にした近藤誠のセンチメンタルな気持ちがあったとしても、そこに彼の医師としての誠意とこれまで歩んできたことへの自負を読み取るのです。


2 件のコメント:

  1. 9月28日 Twitterより

    ころみ ‏@minaminatuo
    @che_kawasaki人間ドッグ受診を今年から完全に辞めた私にとってうれしく希望の持てるお話でした。今メンタルダウン中なので読み間違っているかも知れませんが。

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  2. 9月28日 Twitterより

    押川 沢江 Oshikawa Sawae ‏@sawa_oshi21
    @che_kawasaki 医療・医学に関して素人なりに、神さまから与えられたこの体と命を最期までいかに大切に生きるか、治療しないことも含めた選択の結果全てをこの身に引き受ける覚悟で、召命や使命に応えるのと同じように人任せ薬任せでなく、神さまにまた自らに常に問い続ける者でありたい

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