2012年6月28日木曜日

なぜ政府は再稼働を決定したのか―「日米原子力共同体」の闇


政府は6月16日、大飯原発の再稼働を決定しました。また18日には六ヶ所村の核燃料再処理工場の試運転が3年半ぶりに再会されました。なぜでしょうか。再稼働に反対する4万5千人の官邸前のデモを報じた22日の報道ステーションで寺島実郎氏が、「日米原子力共同体」という言葉を使っていましたが、まさにそれです。原発依存度の最も高い関西電力で、もしもこの夏に原発なしでも何とかなれば「原発は不要だ」ということがあきらかになってしまう。原発を再稼働させなければならない理由が日米両国にはあったと私は考えます。

1 安全保障、軍事上の必要性
アメリカは戦後の世界支配を視野に入れ、原爆の実際の威力を見せつけるために、日本の降伏の機会を延ばさせてまでも広島、長崎への投下を実行したと言われています。しかしすぐにソ連が原爆の開発に成功し、アメリカが核兵器を独占することはできなくなりました。そこで考案された戦略が「原子力の平和利用」(1953年、アイゼンハワー米大統領の国連演説)です。アメリカなど一部の国が核兵器を独占し、なおかつ経済的な負担を少なくするために、原発を世界に売りつけ、核兵器の材料であるプルトニュウムを作らせる必要があったのです。

今年3月にソウルで開かれた核セキュリテイ・サミットでは、世界の大国がこぞって、安全を強化すると謳いながら原発の推進に合意しました。また日本の国会では、全く議論なしに6月20日、原子力基本法に「我が国の安全保障に資する」という目的を追記しました。ここから読み取れるのは、日本をパートナーとするアメリカの核戦略です。中国・北朝鮮を敵とする新たな「冷戦」の安全保障のために、日本はアメリカの傘下でいつでも核兵器をもてる状況を続けると宣言したということです。そのためには再稼働を強行するしかなかったと私は考えます。

2 経済上の必要性
アメリカではスリーマイル島の事故以来30年以上も新たな原発建設はなかったのに、昨年11月、アメリカの原子力委員会はウェスチングハウス社の新型原子炉を認可し、さらに今年2月、その炉を使用する新規原発をジョージア州に建設することを認可しました。

ウェスチングハウス社は日本の東芝の子会社です。またマイクロソフト社のビル・ゲイツは、中国での原発建設に乗り出すために莫大な私財を東芝に投資していますから、今後、東芝は中国への原発輸出に拍車をかけるでしょう。また、日立とGEの合弁会社はこの6月、リトアニアでの原発建設を受注しました。

アメリカの雇用と輸出拡大に奉仕しながら自らの利益を上げ続けなければならない日本にとって、原発技術を捨てるわけにはいかないし、原発を止めるわけにもいきません。この点でも、原発の再稼働にアメリカ政府の意向が反映されていると私は考えます。


        原発体制を問うキリスト者ネットワーク共同代表

                         崔  勝久




上記拙論は、新教出版社『福音と世界』7月号に掲載されます。編集者の承諾を得て、ご紹介いたします。


なお『原発とキリスト教~私たちはこう考える』も同じく
新教出版社から出版されています。

「教会の変革について。内藤新吾著『キリスト者として”原発”をどう考えるか』を読んで」
http://www.oklos-che.com/2012/03/blog-post.html

 『キリスト者として”原発”をどう考えるか』はいのちのことば社から出版されています。

ご購入されて一読いただければ幸いです。

1 件のコメント:

  1. 崔勝久さんの「原発とキリスト教」所収論文も読みました。今回の説でさらに発展させねばならないのは核兵器も問題です。私は随分原発と核兵器・原爆を離して考えていましたが、おっしゃるとおり日米原子力共同体であり、どう切り込んでいくかです。紹介されていた金鐘哲さんの論考はそういう意味で興味ある示唆に富んだものです。雑誌の件はまだ進んでいません。申し訳ないです。いつもこのブログで刺激を受けています。川瀬俊治

    返信削除