2012年6月16日土曜日

川崎市の地震・津波災害対策に根本的な誤りがあるのでは?


川崎市民フォーラムの様子
6月16日(土)川崎で、市民フォーラム(第141回)が開催され、川崎市の危機管理対策室の増子講一室長と山口良和副室長から、川崎市の「新・震災対策計画」についての説明がありました。根本的な欠陥が明らかになったのですが、まずマスコミはこのような事実を一切報道さえしていないという怠慢には驚きです。原発報道では名を上げ朝日新聞から変えることが多くなったとされるT新聞社でさえ、この災害の問題を報道していないというのは何故なのでしょうか?

危機管理室の説明の様子
まず結論から言うと、私は川崎市の3・11の東日本大震災の後作られた「新・震災対策計画」は根本的な問題をもつものと考えます。300ページに及ぶ膨大な「川崎市地域防災計画」を2期にわたり具体的な対策にまで落とし込もうとしているのですが、それらはパブリック・コメント(14通!)を参考にしているとは言え、学者やコンサル会社に丸投げして(業務委託して)作り上げようとしたものです。様々な分野を網羅しているのですが、最大の欠陥は市民の視点ではなく、また市民との対話ではなく、限られた学者やコンサルに委託して防災対策が作られようとしている点です。市民の心配に対して応えるのではなく、市民のごく一部の声を聞きながらも、実際は系統だった、災害対策の作文に終わっているということです。そしてそのようにして作り上げようとしている対策は、作成過程ではパブコメを求めるとは言え、市民への説明会を開くことなく、市の防災対策案はこのようにしてできたと発表するだけ、というやり方しか考えていないのです。

川崎駅の先まで完全に油まみれになります
1 最新の「川崎市地域防災計画」には全国でも最大規模の臨海部のことには触れていません。「石油コンビナート等特別特別防止区域(京浜臨海地区)に係る災害については、原則的に神奈川県石油コンビナート等災害計画により対応するものとする」と明記されています。即ち、石油コンビナートから流される油による、川崎駅まで達すると予想される火災に対しては全くふれていなかったのです。

2 しかし今日配布された2枚の資料(「東日本大震災を受けた川崎市の防災対策について」)によると、「臨海部の防災対策」という項目があり、そこで「川崎の課題」、「基本的な考え方」、「対策の具体的内容」、「進捗状況」が記されています。「(仮称)臨海部防災対策計画の策定に向けた検討部会を設置」するそうですが、しかしそこには市民は入らず、市民との対話によって議論を深めるという考え方は全くありません。そもそも川崎の危機管理対策室の貧弱さは目を覆うばかりです。「検討部会」を本気でやろうとしているのでしょうか。だれも専従のスタッフはいないようですし、これは基本的に市民の「自己責任」と「責務」を主張し、大災害対策は国と県が担うべきだと考えてきた川崎市政の根本的に誤った考えを反映しています。川崎市長は本気になって川崎市民の心配に応える政策を市民と一緒になって考えるべきです。

3 地震にもいくつかのパターンが予想され、神奈川県や東京都はすでに市民に恐怖を与えるような津波の高さや災害予想をそれぞれ勝手に発表しているのですが、そもそもそれらは学問的にどのような調査方法と評価方法なのか不明で、統一された学問的基準なるものは実はないのです。川崎の直下型地震とは南北に長いこの都市のどこを震源地と想定するのか、定かではありません。もっとも大きな被害が予想されるところはどこなのか、それによってどのような被害が想定されるのか、この点を明らかにしないと対策等立てることはできません。学者に委託するにしてもそれでは信頼に足る情報が現在の地震学の学問的水準ではだしようがないはずです。
参考までに:東京湾臨海コンビナートが危ない! ここにも安全神話が
http://www.oklos-che.com/2012/04/blog-post_13.html

週刊誌アエラ(2011年 8月22日号)より
4 例えば中央防災会議専門調査会報告書では、数100年に一度くらいの頻度が予想されるレベル2の津波と、数千年に一度の大きな被害をもたらすレベル1に分けるのですが、川崎の運河の陸地部分に作られた3メートル少しの防潮堤では、レベル2でさえ津波は越えていくことが明らかです。川崎はレベル1のことは全く考えていません。しかも津波は水だけではなく、数多くある石油タンクから漏れ出した油が漏れ、それが川崎駅周辺にまで流れ火災になるのです。今日の短時間の資料と説明からでもこのことが明らかになりました。

また危機管理室の責任者である彼らは、川崎の石油タンクは大丈夫、安全であると断言しましたが、これは聞き捨てならない「暴論」です。日本でもっとも危険な地域であると言っても過言でないのに、なんという能天気なことを言っているのでしょうか!これでは川崎市民の心配に何一つ応えていません!

6 最新の「川崎市地域防災計画」によると、北部でも崖崩れが発生し、急傾斜地崩壊箇所は(平成13年度の調べ!)で506箇所に及ぶことが明記されています。地震・津波の災害は川崎市の南部、中部、北部とそれぞれ異なった大きな災害が予想されるのです。これで市民に報告もせず、ただ一方的にコンサルや学者の作った成果を丸呑みにして発表するというやり方はいかに問題なのか、明らかではありませんか。

7 また危機管理室の責任者の話では、地震・津波による大規模な火災が発生するときの備えについては自分たちでなく消防局に聞いてほしいと答えたのですが、消防局は道が自動車で塞がれ消防自動車が動けない状況をまったく想定していないそうです(今井代表談)。一事が万事で、市の縦割り行政による盲点が明らかにされました。これなども市民の心配に応えることを最優先にして、有識者を入れながら行政と市民、市議会議員が一緒に協議する場が作られない限り解決できません。

8 危機管理室からは津波の際、放射能の数値が高いとうことで引き取り先がなく、また海洋投棄も許されていない状態の臨海部に保管され焼却灰はどうなるのか、私が質問したらきょとんとしていました。しかし山口さんは、来年の2期の計画では取り上げるだろう、現状の保管された焼却灰は国の基準より低いのだが、海洋投棄の実験などの結果を見て実際に海洋投棄されてもまったく問題がないような様子でした。彼らと話ことは実に沢山あります。

臨海部の航空写真
9 市民フォーラムで行政の問題が明らかにされたのですが、議会はどうか、各政党はどうか、このことは市民との真摯な対話なくては一歩も前に進めません。臨海部のことを取り上げてきた「新しい川崎をつくる市民の会」(代表:滝澤貢)でも多くの市民、有識者、各党の議員それに行政(圧倒的にスタッフの数の少ない危機管理室の実態からも川崎市の災害に対する意識が弱いことが窺われます)を加えた話し合いの可能性について検討するべきだと強く感じました。幸い、早稲田大学の濱田政則教授は、私たち市民の動きに大変協力的なのでご助言を得ながら、具体的な政策案の作成にまで踏み込むべきではないと考えます。川崎市民のみなさんはいかがでしょうか。
参考までに:臨海部についての川崎市民懇談会の報告(修正版)
http://www.oklos-che.com/2010/07/blog-post_19.html


臨海部論争についての感想ー佐無田 光
http://www.oklos-che.com/2010/12/blog-post_21.html

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