2012年4月15日日曜日

It's a show time! 無声映画の The Artist を観て


私のブログは「在日」のことや、反原発に関することばかりと思われている人が多いようです。まあ、その傾向は認めますが、そうでもない、人間味あふれる(?)ものも中にはあるんですが・・・

というわけで、今日は、It's a show time! 無声映画の The Artist を観て、ということで書いてみます。昔の映画解説者の台詞じゃないですが、映画っていいですね。ストーリーは単純で別に泣くような内容ではないのですが、私は最後のタップダンスのシーンで思わず涙しました。

この映画は、今年のアカデミー賞の監督賞や主演男優賞などの5部門で受賞したものです。フランス映画で、モノクロのサイレント映画です。勿論この時代に無声映画を作るのですから, 何から何まで完全に計算されしつくされていると感じました。技術的にはカラーで撮ってモノクロにしたため、グレーであっても服の染みなどが見え、またきれいな透き通るような白になっていました。完全な無声でなく、ところどころ使われる音も見事な演出効果でした。無声ですから、俳優の表情が豊かです。

ストーリーは単純です。無声映画の男優トップスターが、踊り子を見つけ、時代が1930年頭に激しく変わる中でトーキーになり、彼は無声映画にこだわり自作自演の映画を作り失敗し全財産を失います。一方、彼女はトーキー時代の花形スターになり、落ちぶれた彼を陰から支えます。自暴自棄になった彼は無声映画のフィルムを室内で燃やし、愛犬の「活躍」で一命を取り留め、彼女は彼を病院から自宅に引き取ります。しかし彼を裏から支えていたのがその彼女だと知り、自尊心を傷つけられ絶望のあまりピストル自殺をしようとします。そこに駆け付けた彼女は謝罪をして、彼との共演映画を提案し、その撮影をします。そのラストシーンがタップダンスのシーンなのです。

主演男優は「風と共に去りぬ」のクラークゲーブルを思い出させ、女優の付けホクロは何故か、マリリン・モンローを思い出させてくれました。落ちぶれた男優と花形になった女優の関係はチャプリンの「ライムライト」を意識したものでしょう。しかし「ライムライト」では喜劇俳優役のチャプリンは、マドンナになった女優のバックアップで舞台に立ち、大喝采を受けるのですがそのまま舞台から転げ落ち死にます。

しかしこの映画の最後は、主役の二人は台詞なしの場面、即ち、タップダンスで成功を暗示します。「ライムライト」がそうであったように、この映画のバックミュージックも素晴らしいものでした。アカデミー主演男優賞に輝いたフランス人男優は、チャップリンの優しさを表現できなくとも(年齢もあるでしょうね)、魅力あふれる笑いを振りまいていました。今度私が髪をオールバックにして、コールマン髭になっていたら、その影響だと思ってください。

犬の「演技」の素晴らしさについては映画を観てもらうしかないですね。タップダンスもアメリカの黒人が踊るような、躍動感あふれる、これはとても真似ができないというものでなく、見事なんですが、なんか、昔の感じで思わず拍手でした。

私たち夫婦もお互い60歳を過ぎ、2人で2000円で映画が観れるようになりました。コンピューターを駆使し、いかにも金をかけてるなというハリウッド映画ではなく、映画を知りつくし、映画大好きな人が練り上げて作った映画だと思いました。さあ、この紹介で何人の人が The Artist を観るでしょうか。是非、お勧めします。

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