2011年12月18日日曜日

「原発立地地域の経済と地方財政」ー福島大学学長 清水修二氏の講演抄録

私たちの「脱原発かわさき市民」のメンバーが、専修大学の公開シンポジュームに参加して、講演抄録をMLに送ってくれました。興味ある内容ですので、ブログに紹介させていただきます。

開沼博『フクシマ論』(青土社)に記されている内容は、福島の原発は単に中央からの押し付けという観点だけでなく、地域社会の「発展」のために地方から中央にアピローチしていったという歴史的背景と、その地域社会の実態を記したもので、1月14ー15日の「横浜会議」で「原発体制を問うキリスト者ネットワーク」(CNFE)が提案した企画は、その視点から実際の原発基地での闘いを進めてきた方をお呼びして今後の運動のあり方を模索しようという考えから提案されたものです。

その他、モンゴルと韓国からゲストをお呼びして、現地の実態と今後の闘いのあり方について日韓蒙の立場から話しあいをもちます。http://npfree.jp/download/20111213_Overview_A4.pdf

それではみなさん、横浜でお会いしましょう。なお私たちはブースを持ち、海外からのゲストと参加者が自由に話し合える場を設定しました。日韓蒙の「緑の党」関係者が話し合うことも計画しています。地域社会のあり方を模索されている方は是非、海外の活動家が地域社会の問題をどのように捉え、何をしようとしているのか、意見交換の機会にしていただだければと思います。

崔 勝久


専修大学社会科学研究所公開シンポジウム
「原発事故とエネルギー政策の転換」
2011年12月17日(土)午後1時30分~ 於:専修大学生田キャンパス

「原発立地地域の経済と地方財政」 
福島大学学長 清水修二

地方自治体(地域社会)消滅の危機


福島県では第一原発事故で15万人が県内、県外へ避難した。自主避難はそのうち5万人だった。強制避難(警戒区域などから)の10万人のうちの3万人と、自主避難のうち3万人は県外の46都道府県に避難した。中でも、被ばく危機から子どもと母親が多く、1万5946人の子どもが転校した。男親も地元企業が壊滅的被害を受けたため、仕事がない。収入を確保するために避難した30~40代男性も多い。農業、酪農従事者も高齢化が進み後継者難のため、今後被ばく地域での再開は困難と思う。第一原発がある双葉町では住民の58%が県外に避難し、役場も埼玉県加須市に移った。除染も手がついていないし、避難生活が2~3年続けば、もはや地元に戻ることはないだろう。まさに地方自治体が消滅する事態に直面している。政府は16日、「原発事故は収束した」と表明したが、「冷温停止が確認された」だけで、なんら収束はしていない。

なぜ、双葉町は原発を誘致したか

電源三法の基になった政府の「原発立地指針」では、立地場所は①原子炉の周辺は非居住地域であること、②その外側は低人工地域であること、③人口密集地には作らない、というもので、現在も変わっていない。双葉町は原発を受け入れるにあたって「地域経済活性化の起爆剤」という方針で、原発だけで振興しようというかんがえでは無かった。もともと福島県には33の水力発電所があったが、ダムができれば、少人数で発電ができ、地元には雇用の創出も無い。そのため、ダム周辺地域は過疎化が進んでいる。1970年代初頭に福島第一原発1号機ができてから、6号機まで増設され、さらに第二原発(4基)も出来て、福島県の太平洋岸は、日本一の原発集積地になった。原発を含む福島県の発電シェアは東電の30.5%、首都圏などへ県内の消費電力の7倍もの電気を送っている。原発の安全対策は、地元自治体も県もノウハウを持っていない。国任せ、電力会社任せだった。原発立地のメリットは交付金である。双葉町と楢葉町の場合、第一原発が出来てから36年間で2780億円が交付された。国民も年間原発のために1300~1400億円を負担している。

こうして原発と放射能の危険は地方へ拡散

確かに原発が出来ると、出稼ぎが無くなるし、公共施設も良くなるが、地元の力で発展しているのではない。独楽と同じで、回転が鈍れば「もう一度回してくれ」(また増設してくれ)ということになる。1974年、電源三法が出来た時、田中角栄首相は原発立地のメリットを、「東京にないものを作る。作って電気をどんどん東京に送る。そして東京からどんどん金を送らせる」と説いた。露骨な利益誘導がまかり通った。そして今、そして、原発受け入れる自治体は首都圏から遠い全国に広がり、放射能の危険も拡大していった。環境負荷の地方への転嫁である。そして今や、「プルサーマルを使えば補助金を出す」「使用済み核燃料の処理施設を受け入れれば金を出す」という政策誘導になっている。原発立地の自治体は二つのリスクに脅かされる、「事故のリスク」と「撤退のリスク」である。双葉町や楢葉町はこの二つをまともに受けた。第一、第二原発はすべて廃炉になる。結果として、第一原発で7千人、第二で4千人の雇用が失われる。これからの地元はどうしたらいいのか。一つは市町村合併で、より広域の自治体として、新エネルギー基地としての再生することであると考えるが、具体的にどうしたらいいのか、議論が必要だろう。

2 件のコメント:

  1. 後半の議論は古いし、ピントがずれていると思う。
    「事故のリスク」と「撤退のリスク」・・・何をおっしゃる。
    楢葉や双葉が直面しているのはそんなものではないでしょう。
    そして各地の立地自治体は、これまで目先の利益にとらわれて引き受けてきたものが、実はどういうものだったのかに気づかなければならないでしょう。
    事故は起こる。
    でも事故が起きなくても、許してはならないものだったはずです。
    生み出した死の灰はどうするのですか。
    日々の被曝労働は、どうするのですか。
    いったん作って動かしてしまえば、永久に、この問題が生み出されるのです。
    「廃炉」自体が、世界の難題、膨大な危険な作業が必要。
    そして永年管理が必要となるでしょう。
    「廃炉」=雇用の喪失 というのは、何重にも誤った議論と思う。
    学者がこのようなぼけた議論の枠組みしか提供できないのは、本当に残念。
    被曝の問題について、大変鈍感なことも非常に残念。
    福島大学の現状がそれを物語っていると思う。

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  2. 前の方の「学者がなにをぼけたことを言っているのか」という意見に賛同します。昨日も中日新聞で太田元沖縄県知事と対談していたが、原発反対運動に冷水を浴びせる発言をしている。清水氏自身が、それなら、なぜ今まで原発を止められなかったのか、どのように自己批判をしているのかという責任を棚にあげて、平気で反原発運動を批判する、その態度が、まさに原発推進の原動力だったのだと思う。

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