2011年9月14日水曜日

『日本人は知らない 「地震予知」の正体』を読んで


           GPS連続観測点の全国配点図
これだけ多くの観測点があるにもかかわらず、地震の前兆を今まで一度もとらえたことがないということは、大きな地震には前兆現象が存在しないことを強く示唆している。


東京大学理学部教授のロバート・ゲラーの『日本人は知らない 「地震予知」の正体』を読みました(双葉社 2011)。裏表紙にはこのような一文があります。「日本の地震予知学研究は、開始から既に約半世紀が経過している。それにもかかわらず、いまだに一度も予知ができていない。それは一体なぜなのか? 地震研究一筋の東大現役教授が、自身予知研究の問題点と防災体制の盲点を包み隠さず語った初の著書」。

その通りです。東海地震の予知にターゲットを絞りこの間、3000億円を超える予算がついた研究(予算額の膨大な増加はまたまた中曽根のアドバイスだそうです)にもかかわらず、今回の東北大地震に関して一切予知できなかったのはなぜなのか、著者は根本的に非常にオーソドックスな批判をします。一言で地震予知はある前提に基づいて成り立つものであり、その前提が学問的に検証されたことがないのです。

地震予知は、以下の多くの人が納得する「前提」の上で成り立っています。
①大きな地震は繰り返して起きる。
②大きな地震の前に確実に前兆現象がある。

しかし、理論はデーターによって証明されなければならず、追実験によって同じ結果が得られなければそれは科学とは言えません。浜岡原発を中止させた菅前首相の決断は正しかったが、東海大地震が「30年以内にマグネチュード8程度の地震が87%の確率で来ることが示されている」から、「全国55基の原発のうちで浜岡原発は特別だ」という認識は誤りだと断定します。「そもそも、あんな脆弱な場所に原発を造ったこと自体が悪い」のであって、「科学的にまったく検証されていない数値モデルに基づいて計算されたものにすぎない」のだそうです。

ロバート・ゲラー教授は、地震予知研究とその体制つくりへの異常な出費とそれを支える法律を撤廃し、①地震が起きた時に迅速に正確な情報を政府や一般の人に伝える、②地震工学の基礎研究と耐震構造のへの応用、を提案します。これは早稲田大学の濱田教授が話してくださった内容と一致します。

彼は地震前兆として研究者がまことしやかに挙げる多くの例をユーモラスに列挙します。そしてそれをマスコミが取り上げ、あたかも東海大地震が来ることが当たり前のように多くの人に刷り込まれていることの危険性を警告します。それはいつ、どこでもマグネチュード9の地震が来るかもしれないという意味であって、東海地方に地震が来る確率が高いということではないのです。読みやすい本ですので、是非、みなさんに一読を薦めます。私自身は改めて、東京湾に地震が起こり、川崎の工業地帯に津波が来た場合に備えて十全の準備をしなければならないということを確信しました。

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