2011年6月28日火曜日

エコ発電都市(環境都市)川崎の陥穽



今日の東京新聞に川崎のことが大きく報道されているという友人の電話があり、コンビニに買いに行きました。写真の通り、まるで川崎の広告版とも思われる取扱いでした。「こちら特報部」という東京新聞の名物コラムなのでしょう。自然エネルギーが話題になっており地方自治体でも関心が高いということから、他社に先駆けて取り上げたのだと思われます。

私はいつも思うのですが、これは東京新聞だけでなく一般の新聞も同じですが、話題になった事柄をどうして表面の情報だけを伝え複合的な分析をしないのでしょうか。まず今回の原発事故は事故が起こる前にどれほど新聞各社が問題にしていたのか、被曝労働者の問題、使用済み核燃料、そして地震対策や放射能物質の放出の問題を取り上げ、国や企業の安全だという話を信用していいのか、このような観点から継続して取り上げ報道をしてきたマスコミは皆無です。この点の自己批判はあったのでしょうか。

確かに川崎の臨海部に乱立する発電所は、液体天然ガスを(LNG)を使った火力発電所、風力発電所、注目されているガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「コンバインドサイクル」、国内最大級の木材を燃料とする「バイオマス」発電、国内最大規模の太陽発電施設で新聞の地図では10個の発電所がひしめき、主に都市ガスを使う小型発電所の市内普及なども進んでいるとのことです。

これは取材を通してわかった事実でしょう。それを東京新聞記者は、「エコ発電都市 川崎」「「地産地消」を先取り」、「大気汚染、負の歴史バネに実践」「天然ガス、太陽光、風力・・・集結」と見出しをつけます。しかしこれでは行政の提灯持ちと言われても仕方がありません。記事を書く視点が一面点で、その背後にはあたかも何の問題もないかのようです。これでは行政の言う通りです。デスクメモでも川崎をモデルとして「原発を許した無作為の罪を背負う日本人の償いの道だ」としか書かれていません。まずこの発電所はどこに乱立しているのか、それは川崎の埋立地の臨海部です。そこに東芝の実験用の原子炉もあります。横浜では同じ埋立地で1メートルも隆起しました。同じ東京湾にある川崎の臨海部で何もなかったということはありえません。

私のブログを参照ください。
★川崎臨海部に地震による異変が起こったのか? ー日経新聞川崎版より
http://www.oklos-che.com/2011/06/blog-post_10.html
★講演:東日本大震災をどう受けとめるかー日本の地震防災工学の「権威」の濱田教授
http://www.oklos-che.com/2011/06/68-20071020093-2003320053-199320091.html
★川崎市危機管理室との応答ーやはり危機意識に欠けています
http://www.oklos-che.com/2011_06_03_archive.html

どうして取材の際に、臨海部で今回の3・11と同じような地震がきたらどうなるのか、すべての発電施設で何の事故もなかったのか、液状化の状態はどうだったのか、想定外の津波が来たらどうなるのか、地震の長周波による影響についてどのような対策をとっているのか、地震による火災対策は十分なのか(M9でも大丈夫か)、このようなことをどうして尋ねなかったのでしょうか。他社においてもこのような角度から行政を取材して市民の不安に応えるような記事を書いたものにお目にかかったことがありません。早稲田大学の濱田教授は、震災の際は外海からの搬入は困難になり、火力発電そのものが成り立つなる可能性を指摘されています。

もう一点、これら発電所からでる二酸化炭素だけでなく、各種の粒子状物質PM(Particulate Matterや状物質SPM(Suspended Particulate Matter)、二酸化窒素の実態、それらが煙突を通して外部に出されるときの影響、特に北部の小学校区では多いところで17%の小児喘息罹患率で、南部でも全国平均より高いといわれていることとの関連性はないのか、川崎は公害を克服してかえってそれをバネにして「環境都市」「エコ都市」と称しているが、それはもろ手を上げて称賛するだけでいいのでしょうか、行政は何を課題として考えているのか、どうしてこのような質問を行政の人間にもぶっつけないのでしょうか。

今や地震は活断層があるところだけでなく、どこで新たな活断層が発見されるかわからず、却って、起こってはいけないもっとも危険な場所で想定外の規模の地震が起こった場合の対策をとることが求められています。しかし震災後、市の危機管理室に尋ねても、川崎市が市民の不安をなくすために積極的に地震対策を学問的な研究の上で立てているとはとても言えず、国や県の動向を見守っている状態です。しかし地震はいつ来るのかわからないのです。本気で行政は調査を始めるべきであって、マスコミはその無作為を市民の立場から追及すべきなのではないでしょうか。

川崎市民は原発への関心として放射線のことだけでなく、合わせて複合的な大気汚染として小児喘息を起こす原因にも言及すべきでしょう。また地震対策も急ぎます。北部のがけ崩れ、津波による床下(特に多摩川、鶴見川)浸水、臨海部の火災の発生や危険な化学物質の流失などの恐ろしい事態(上記の私のブログに記した、早稲田大学の濱田教授の講演内容を熟読ください)、これらは川崎の南北市民が一体となって取り上げ、考え、地元選出議員も一体となって討論すべきです。ここで各党派は、超党派で市民の要望に応えなければならないでしょう。まさに川崎の民度が問われる事態なのですから。

1 件のコメント:

  1. 崔勝久様

      私も今朝東京新聞を読みながら、ここが埋立地なら地震のときはどうなるのか、液状化や津波は大丈夫と考えているのだろうか、と思いました。しかし不覚にも、川崎市民に降りかかる深刻な公害のことには思いが至りませんでした。以前から「川崎喘息」のことをきいていたのに。

    力のあるもの――企業と川崎市政――が脱原発を目指すならそれはそれでいいけれど、力のある者が先を争って新しい利得に群がり、勝ち名乗りを上げて得意になるのでは、技術的改善によって人間尊重を実現していくのだろうとは思いますが、住民の苦しみを無視しているという点では原発産業とあまり変わらず、私たちはこれに簡単に希望を託すわけにはいかないでしょう。やはり新しい産業と地域の在り方は、いつも苦しめられてしまう人々の声を本気で聴くことからしか始まらないのではないか、と思いました。新しいというのは、そういう質の事柄でしょう。この点で、東京新聞も要注意ですね。問題は、崔さんのおっしゃるとおり、自分を問おうとしないことにあります。自戒を込めて。

    漁師さん夫妻から頂いた指輪の話を今読んで、私は心が熱くなりました。苦労してこられた漁師さんたちと崔さんだからこそ起こったのですね。崔さんが韓国人として、日本人と完全に和解を経験した瞬間というか、たがいに尊い人間として結びあった瞬間で、この出会いは神様の賜物であると思います。

    東海林 勤

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