2011年4月13日水曜日

「東日本大震災(巨大地震、巨大津波、原発危機の多重災害)」の影響と「復興」を考える

実はこのタイトルは、今日、横国の中村剛治郎教授が新学期の「地域経済政策 開講にあたって」付けられたものです。地域経済学の視点から今回の震災をどのように考えるのかということを、初めにどうしても話しておくべきだと判断されたのでしょう。

昨年1年間、中村さんの講義を聞いてきた私は、川崎という地域をどのように捉えるべきなのかということで大きな示唆を与えられました。「在日」という観点と、地域社会のあるべき姿の接点は何なのか、そのことをさらに突っ込んで考えたいということで、もう1年「聴講生」として中村さんから学びたいと思っています。

新学期が始まる前に、東日本大震災が起こり、そのことについてブログで書いてきた私は、以下の内容を再読すると、改めて中村さんの「地域政治学」から学んだことが多いと気付かされました。

中村さんは、大きな出来事があったときは過去との比較、歴史から学ぶことの重要性を強調し、今回の震災の特徴を阪神淡路大震災との比較を通して地域経済学の視点から話されました。

テレビ朝日のインタビューで話されたそうですが、東北人の粘り強さが日本の部品産業を担っていると言わせたかったNHK側の思惑とは違い、中村さんは、東北の産業構造が生活の場と生産の場が結びついており、農業・漁業が壊滅状態になった今、その「復興」がいかに困難かということを説明されました。

農業・漁業だけでは立ちいかない東北地方は、関東の分工場として、大量の労働集約型の低賃金労働の確保の場として位置つけられ、アジアの新興国のキャッチアップとの差別化として「世界市場のニッチ分野で強いオンリー・ワンの素材、部品」製造に活路を見出してきたところに今回の災害に遭った、しかしその背景としては大学の研究開発も、工場も全て東京本社(アジア型の一極集中)の下の置かれており、「復興」はさらに大都市(東京)の影響を強めるものとなり(<新>植民地主義ー西川長夫)、「復興」によってはじかれる者が多く出るのではないか、ということを危惧されました。

そこから見えるものは、道州制や、農業・畜産・漁業の大型化であり(TPPも視野に入れー崔)、大々的なエコ型の集合住宅の建設であるとすると、これまで地域で仕事と結ばれる生活をしていた人たちはどのようになっていくのか、中小企業はさらに危機に瀕するのではないか、「復興」は投資効果としては脆弱で、数十兆円という「復興」費を賄うための増税や国債の発行を外国が引き受けることによって、かえって、新自由主義的なグローバル資本の論理の下で日本は脆弱な立場に追いこまれるのではないか、という可能性についても言及されました。

そして何よりも原発危機の影響は測り知れず、「世界都市東京の危機」「関東地区の壊滅」の可能性も否定できず、より根本的に社会・経済のあり方を問うより、より「安全な」原発開発の方向に国策として、政財界・マスコミ・学会を挙げて向かっているのではないか、私は中村さんの日本社会への強い危機感をそれらの言葉の中に感じました。

それは、アジア型の資本主義のリーダであった日本がこれまでの延長で、住民の「生活の質」を高めることなく、地域の住民主権の形骸化を引きずったまま、歩むことになるのではないか、その歪みはナショナリズムの強化につながり、民族・国籍を超えた<協働>による、根本的な地域社会の変革には結びつかないのではないか、私には中村さんの言葉はそのような「予言」に聞こえました。

しかし呆然とその流れを受け入れるべきではない、よりよい地域社会建設に向かって英知を集めるべきではないか、私はそんな独り言をつぶやいていました。

★東北地方の「復興」は、TPP受け入れとナショナリズム強化に向かうのでしょうか?
http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/04/blog-post_07.html

★福島原発事故の後は、世界は新たな原子炉に代るのか、それとも「凍結」するのか?
http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/04/blog-post_03.html

★投稿ー東北地方の被災者から学ぶこと
http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/03/blog-post_31.html

★東北の再生とは何かーNHKクローズアップ現代より
http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/03/blog-post_5887.html

★川崎の地震・津波・原発対策はどのようになっているのかー「住民が生き延びる地域社会」をめざして
http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/03/blog-post_26.html

★宮本常一『忘れられた日本人』を読んで想うことー内在的なものからの「変革」の可能性  
http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/03/blog-post_19.html

★今こそ、民族・国籍を超えた「協働」ー共に新たな地域社会建設に向かって
http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/03/blog-post_3967.html

★原発の実態は報道されているよりはるかに危険、と思われます
http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/03/blog-post_18.html

★未曾有の大震災の後、日本はどうなっていくのでしょうか 
http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/03/blog-post_3423.html

0 件のコメント:

コメントを投稿