2010年10月30日土曜日

臨海部についての市民懇談会の報告、行政の現場から

みなさんへ

今日は朝から大雨で台風の影響があり、JRの運行に支障があったようです。それにも拘わらず10名を超える人が集まりました。今回の講師は、川崎市経済局産業政策部長の伊藤和良さんでした。

「工都100年を支えた基礎技術と先端技術の将来展望」「自治体の使命は高い理念に基づき、地域で汗をかき続けること」「川崎市におけるオープンイノベーション 産学官連携・知財戦略の紹介」という伊藤さんの準備されたレジュメに記された内容からも、彼が何を言いたいのかわかります。

55歳になられるという伊藤さんは、市の第一号の「遊学生」としてスウェ―デンに行き、それ以来15年に渡り、毎年5月に訪れ行政マンとして街の変化を見守っているとのことでした。川崎の工業都市としての伝統を活かし、生き残りに苦しむ中小企業に役立つようにできることは何でもやるという熱血漢で、毎週金曜日の早朝にもつ学習会は800回にもなるとのこと、中小企業に寄り添っていきたいという言葉が印象的でした。スライドを使った90分の講演はよく準備されていて、流れるようなスピーチでした。

川崎の「光と影」ということで、臨海部を夜観光する企画を立ち上げたり、公害の街を「環境の街」に変え、素材産業から研究開発の都市へ、知財戦略を重視する川崎市きっての理論家であり先頭に立つ市の行政マンであるとお見受けしました。川崎のDNAは工業であり、市の役割はコーディネートととらえ、大企業と中小企業、大学間の連携を深め新たなビジネスを作り出すという思いもよくわかりました。

今回は伊藤さんの産業政策部長としてやってこられたことを中心にした講演だったのですが、私は、彼の誠意・熱意は理解できても、それでは川崎市の将来を見越した政策はどうなのか、何を川崎市の問題としてとらえているのかという点では、今一、残りの90分では十分な話を聞けませんでした。

スウェ―デンの市民の実態を見てこられた伊藤さんにとって、川崎市の「タウンミーティング」のように、行政主導で行政は市民の声は聴いても(学者の意見を取り入れ)、何もしようとはしないという意見がありましたが、何よりもこのような市民の参加の器を上から作るだけで、市民と一緒に課題を担い対話から具体策を練るという姿勢をもたない、民主的ではない行政のあり方から街づくりは可能なのかという、最も根本的なところをどう思っているのか、実はこの点がよくわかりませんでした。

臨海部の将来に関しては私企業のことでありよくわからないという説明でしたが、臨海部は川崎市全体の2割、その6割をJFE(元日本鋼管)が占めていて、これまでの工業化の中心であった石油や鉄鋼の素材産業が間違いなく変わらざるを得ない(研究開発や新製品の開発など付加価値の高い脱工業化産業に向かうということがはっきりとして来ている)というときに、何も考えていないというのは私にとっては信じられないことです。

鉄鋼や石油の他に危険な薬品を使うような工場を集中させ、人も住めない工場地帯として残したまま、時代の流れに沿って目の前の対応策を練るのか、川崎の歴史と文化・伝統(ものづくりを含めて)に合ったまったく新しい街づくりをするのか、私は今が100年の工業化の道を歩んできた川崎の転換点だと思います。それは「その時になって」からではもう遅いのです。今から、企業・市民・行政がしっかりと話し合いを進める準備に入るべきでしょう。

経済政策は経済の分野で完結するのでなく、自治のあり方、地域のネットワークつくりなど総合的な街づくりのなかで考えられるべきものです。二次会での席で、国際都市川崎を目指すのであれば、外国籍職員の昇進を禁ずるような政策から変えるべきですねと、スウェ―デンの実情に詳しい伊藤さんに振ったところ、さあ、よくわかりませんという、「行政マン」の顔で話されました。

中小企業に拠り沿うというのは、経済政策で終わらず、商店街を含めての総合的な街づくりであるべきだという意見がフロアーから出されました。川崎の法人税の3割は臨海部の企業からのものらしいのですが、臨海部を工場地帯にして他から切り離し、ネガティ―ブな問題はそこで集中させるということは逆に大震災のときにはとてつもない被害をもたらします。川崎を研究開発の都市にして世界に類のない新たな都市を作るというのは、もっと大きな構想であるべきです。

素材産業から研究開発都市にすることによって「持続する都市」を作るというのであれば、そこでは住宅環境、文化など住民がQOLを享受するような空間であるべきで、臭いや危険な薬品があっても構わないことを前提にした臨海部をそのまま残すという発想が間違っていると、私は思います。もっと大胆な構想を、何よりも市民と一緒に考えて行くという、恐らく伊藤さんがスウェ―デンで一番実感されたことを一緒に始めたいものです。

読者で伊藤さんの講演内容(スライド)を資料としていただけることになっています。希望者はメールで申し込んで下さい。今日の懇談会の内容は追ってみなさんにご報告いたします。伊藤さん、ありがとうございました。行政の現場からの貴重なご意見をうかがうことができました。今回は坂本市議の御尽力で議員会館の会議室を予約していただき、懇談会にも参加いただきました。感謝いたします。

次回についてのみなさんのご意見はいかがでしょうか。

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