2010年7月19日月曜日

臨海部についての川崎市民懇談会の報告(修正版)

臨海部についての川崎市民懇談会の報告
(17日の報告について曖昧な点のご指摘が中村さんからなされ、26日に修正しました)

7月17日(土)午後1時から5時まで、横浜国大の中村剛治郎教授をお招きして、臨海部についての懇談会をもちました。「川崎臨海部の歴史・現状・課題についてー市民参加による地域再生を目指して」という主題の下、中村さんの約2時間にわたるお話しとその後の活発な質疑応答があり、大変、有意義な懇談会をもてました。参加者は21名で、一般市民の中から広範囲な方々が参加されました。市会議員、行政の方の参加もあり、今後、この懇談会で論議されたことを叩き台として継続して議論を進め、市政に反映させたいと思います。

詳しくは後日出される事務局からの講演録を参照していただきたいのですが、中村さんのレジュメを添付いたします。実際のお話はレジュメを元にして融通無碍、興味あるエピソードを混ぜながら、漫談調でありつつ、ずばりと本質を突くものであり、市民の間では臨海部の問題はタブー視されていたものを、臨海部に関心をもたせ夢をいだかせるような、思わず引き込まれるような、熱のこもったおはなしでした。講演録をご期待下さい。

中村さんのお話を要約しますと、以下のようになります。

1.工業化の過程で生まれた臨海部は100年目にして転換期を迎え、ここで100年後の展望をだす絶好の機会とするべきである。一時、広大な空き地が生じたものの、アジアの旺盛な需要のために見事に素材産業中心の臨海部は復活したように見えるが、それは「事実認識の問題」で、これからの世界経済のあり方を勘案したとき、川崎におけるポスト工業化のあるべき姿を明確にすべきではないか。

2.川崎は「川の先」から由来し、東京に近いという立地条件を最大の武器にすべきであり、アジアの先進国日本はポスト工業化時代への突入に際して、知識集約型の産業に向かうもののこれまでの産業構造をそのままにするのではなく、思い切って環境・自然を大切にする方向に向かうべきである(多摩川の干潟などを破壊するような神奈川口での羽田と結ぶ橋の建設は、世界からどのような評価を受けるのか。高速道路をこわしてまで自然を優先し、新たなまちづくりを目指したボストンや、韓国ソウルのチョンゲチョンを参考にすべき)。

3. これまでの、先進国は研究開発でアジアは廉価な労働力提供地という認識ではなく、アジアが世界最大の市場になりそこに研究開発の拠点や、高品質の製造拠点になることを認識すべきである(日産マーチがタイで生産され日本に逆輸入されること、GEは開発拠点としてアメリカより、中国・インドに圧倒的に力をいれることを発表済)。

4.その流れの中で、高品質の鉄鋼を生産し輸出していた日本の鉄鋼メーカーは、早晩、アジア、ブラジルで高品質の鉄が生産され、日本での生産拠点である川崎・千葉の工場は大幅に縮小せざるをえなくなる。また高炉の十分の一で高品質の鉄を生産されるようになってきた電炉への切り替えもバージン資源の有効利用という面からも検討されるべきではないか。廃プラスチックをコークスの代わりに再利用しているJFE方式のみが評価されているが、(そうすれば関東全域から廃プラを集積しないとそのキャパに合わず、臨海部は関東の廃プラのゴミ捨て場になり、ますます臨海部で住民が憩えないという環境が持続することになるという問題も残る。)そのような廃プラスチックをそのままプラスチックにする新日鉄のマテリアルリサイクル方式と比較・検討するような論議(技術的な検証)も必要ではないか。

5.川崎の環境都市宣言の目玉で、先端技術産業として注目されている代表的企業として電気自動車用のりチームイオン電池メーカーのエリートパワー(株)があるが、世界的研究開発拠点とはやし立てられていたが、実際は、開発研究施設は滋賀に置き、臨海部は量産工場だけである。川崎市も県も巨額な助成金をだしたが、生産は自動化さされており、地域の雇用につながるとは思えず、手放しで評価すべきかは議論が必要ではないか。

6.日本の研究開発は企業ごとに行われていて、産業集積(クラスター)を謳い、次代産業の可能性を追求するのではなく、集積の構造やそのシステムがどのようになっているのかを研修すべきではないか。あまりに安易にクラスターということが言われている。

7.本来、海は公共のものであり、太平洋岸の好立地にありながら付加価値の低い素材産業のコンビナートを建設したのは、廉価で埋め立てをしたからで、そこが民間企業の土地所有になっており、公共性をもった土地利用との間に問題がある。土地の所有・権利・土地利用の関係を法令化するのに10年以上かかるので、長期的な視点から
事前に取り組む必要があるのではないか。

8. 最後に大都市の条件は人口の大きさではなく、そこでの文化の影響力がどれほど広範囲に及ぶのか、商業が盛んになり、商業が活気あるかたちになっているのか、住民の経済と生活基盤の盤石さ一致しているのかということが、目安になる、現在の川崎は、東京の影響下にあり、臨海部の空き地も「さみだれ式」に対応するばかりで、都市としての明確なグランドデザインがなく、市民の一体感もない。市民全体が川崎に誇りを持ち、夢をもてるような町にすべきである。そのためにも、川崎の臨海部を海辺として市民が憩えるような転換を図るべきではないか。
(以上、文責事務局)

質疑応答の中では、臨海部は暗いイメージしかなく、敢えて関心を持とうにも持ちようもない状態であったが、中村さんのお話を伺い、希望が持てた、このような学習会を継続してやってほしいという声が圧倒的でした。また川崎区は労働者の街で、産業道路にある池上町のような、消防車もはいれないような地域(これも臨海部の問題としてとらえるべきでしょう)の実態が不問に付されてきたという意見もありました。

勿論、既存の川崎市の路線を実務的に担っている行政マンや、行政の政策発表を大本営発表のようにそのまま何の検証もなく報道してきたマスコミにとっては、耳の痛い内容であるかもしれません。しかし中村さんのような意見(中村さんは、地域経済学会の会長であり、金沢市や神奈川県の産業政策に深くコミットしてきた現場に詳しい研究者)が実際にあり、それに市民が好感をもって聴いたことは事実であり、行政にとって、何よりも川崎市民にとって、臨海部に関心を持ち、今後、自分たちの意見を行政に反映させていくい機会になると思います。

請期待中村教授的講演録、再見!

崔 勝久

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