2008年4月13日日曜日

横浜国大における連続講義に参加して

皆さんへ

4月10日、横浜国大の連続講義「貧困・差別・抑圧の国際比較社会学」
の第一回目を、加藤千香子さんが受け持ち、「高度成長期の日本社会
と「貧困・差別・抑圧」への抵抗ーマイノリティの位置からー」というタイトル
で準備されました。加藤さんのレジュメは、本人の許可をいただき、
添付資料にしました。

「国際共生」という教育課程をもつ横浜国大の連続講座で、アジアの
国々の問題を取り上げ、「共生」とは何かを考えるという企画にあって、
外の、自分たちの知らない問題を知らせるということでなく、それらの問題
が自分の住む日本といかに関っているのか、自分自身の生き方の問題
としてとらえ考えて欲しいという趣旨であったと聞いています。

加藤教授は、日立闘争のスライドと当該の朴鐘碩に話をしてもらうという
企画をたて、300名集まる大教室にほぼ一杯であった学生にぶっつけ
ようと考えたようですが、その計画を聞いた私は当初、そんなことに今の
若い人たちは関心を示すのかといぶかしく思っていました。

しかしその「授業」に参加した私は、多くの学生が40年前の日立闘争の
スライドと、朴鐘碩自身の裁判を起こした当時の考えと、日立入社後に
見えてきた日本社会の実情、そのなかで「人間らしく生きる」とはどの
ようなことなのかという彼自身の経験に基いた話に、こちらが驚くほど、
真剣に受け止めたようでした。

加藤さんはこのようなメールを私に送ってくれました。
>学生の感想にあらためて目を通しましたが、朴さんのメッセージが、実に
>ストレートに多くの学生のもとに届いたことが分かります。
>今まで授業をやって書いてもらった感想で、これほど真剣に向き合って
>書かれたものが多いことは、実はそうありません。
>国際共生社会課程に入った学生には、まさに考えてほしかったことで、
>それが短時間で伝わったことに驚き、喜んでいます。

今の若い人は社会問題に関心がないなどと安易に言うことが多いのですが、
彼らの対応を見ていると、事実と、自分の生き方の問題として考えている
人のメッセージが正確に伝われば、しっかりと考えようとする人が多くいた
ということに私は、逆に教えられました。

若い人との対話は、新鮮でもありました。


崔 勝久
SK Choi
Skchoi7@aol.com
090-4067-9352



総合科目「貧困・差別・抑圧の国際比較社会学」第1回              2008/04/10 加藤

       高度成長期の日本社会と「貧困・差別・抑圧」への抵抗
                       ――マイノリティの位置から――


はじめに
  私たちの足元にある問題としての「貧困・差別・抑圧」
  「当事者」     


1. 高度成長期(1955~73)の日本
「貧困」・開発途上国から「豊かな国」・先進国へ
敗戦→占領→戦後復興→朝鮮戦争(1950~53)を契機とする特需→経済成長
  60年安保闘争後、「政治の季節」の終焉 「経済の季節」へ 高度成長
  「国民」対象の福祉制度の整備 (1961 「国民皆保険」・「国民皆年金」)
「完全雇用」と「国民所得の倍増」 (1960 「国民所得倍増計画」 池田隼人首相)
 

2.「国民」から外された者―在日朝鮮人
  戦前:日本への渡航・定住者 植民地支配下で「帝国臣民」(しかし二級臣民)
  戦後:植民地解放→郷里への帰国者と日本残留者(「第三国人」呼称)
      1952 講和独立 外国人登録法施行(「外国人」として管理対象に、指紋押捺)
      1959~67 北朝鮮帰国事業
      1965 日韓基本条約(韓国籍にのみ永住権)
  高度成長期:日本で生まれ育った在日二世が学校教育を終え、社会人となる時期
            → 「国籍」という大きな壁  


3.「日立就職差別闘争」
  1970 朴鐘碩さんの採用取り消し、日立を相手取った裁判提訴 →74 勝訴
  日本人・在日朝鮮人の支援者による運動:「朴君を囲む会」


4.「日立闘争」で問われたもの、成し遂げられたこと     “パラダイムの転換”



5.そして現在の日本社会で・・
   「新自由主義」の時代:「貧困・差別・抑圧」の時代の再来?!
   現在における「日立闘争」の意味



◆ もっとよく知るために・・

朴君を囲む会編『民族差別――日立就職差別糾弾』亜紀書房、1974
鈴木道彦『越境の時――1960年代と在日』集英社新書、2007
鄭香均編『正義なき国――「当然の法理」を問い続けて』明石書房、2006
徐 京植『皇民化政策から指紋押捺まで――在日朝鮮人の「昭和史」』岩波ブックレット、1989
尹 健次『「在日」を考える』平凡社同時代ライブラリー、2001
姜 尚中『在日』集英社文庫、2008
上野千鶴子・中西正司『当事者主権』岩波新書、2003
テッサ・モーリス-スズキ『北朝鮮へのエクソダス――「帰国事業」の影をたどる』朝日新聞社、2007
富坂キリスト教センター在日朝鮮人の生活と住民自治研究会編『在日外国人の住民自治』新幹社、
2007
金侖貞『多文化共生教育とアイデンティティ』明石書店、2007

「日立就職差別裁判とは」(外国人の差別を許すな連絡会議HPより)
http://homepage3.nifty.com/hrv/krk/index2.html
朴鐘碩のページ 
http://homepage3.nifty.com/tajimabc/new_page_90.htm
崔勝久・曺慶姫夫妻のページ 
http://homepage3.nifty.com/tajimabc/new_page_89.htm

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