あなたは、そのような人々に対して慰めと励ましの言葉を送りうる最後の総理大臣になりうるとともに、失望と怒りのうちに死に追いやる冷酷な総理大臣として歴史に名を刻む可能性をも秘めています。
近年私たちは、多くの自然災害を経験し、原発事故や新型コロナウィルスの蔓延など、現在もさまざまな困難に取り囲まれております。しかし、何よりも政府が生み出す不平等や無関心こそ、社会を分断し、家族の幸せを破壊する元凶になっていることを覚えずにはおられません。
あなたは、かつて官房長官時代に、沖縄が味わってきた苦悩を切々と訴えた翁長沖縄県知事に対して、「私は戦後生まれなものですから、歴史を持ち出されたら困りますよ」と切り捨て、慰安婦問題について「日本が心から謝罪してこそおばあさんたちも日本を許せるだろう」と述べた文在寅大統領に対して「(慰安婦合意を)1ミリたりとも動かす考えはない」と言い放ちました。
歴代の総理大臣は河野談話を踏襲し、安倍前首相も「慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からのおわびと反省の気持ちを表明する」と述べました。私たちはあなたも時機を逸する前に河野談話を踏襲することを宣言し、韓国との間で懸案となっているいわゆる慰安婦問題や徴用工問題の解決に努めるとともに、かつての戦争に由来して残存する国内外のあらゆる苦悩に真摯に向き合ってくださることを心から願います。
戦後補償問題が法的に難しい課題を抱えていることは間違いありません。けれども、誠意をもって取り組む姿勢こそが、和解に至る第一歩だと考えます。「日韓条約で解決済み」とか「戦争犠牲は…国民のひとしく受忍しなければならなかったところ」などと逃げるのではなく、まだ解決していないと訴え、受忍できないと申し出ておられる人々が実際にいる以上、出会って話を聞き、首相の覚悟を示していただきたいと思います。
私たちが属する日本キリスト教会は、かつて、国家に協力し、率先して植民地に出て行って、現地の人々を苦しめた歴史を持っています。その罪責を覚える者たちとして、戦後補償問題の解決のために、立場や思想を超えて、可能な限りの協力をしたいと願っています。
是非とも、首相としての覚悟と勇気を示し、戦後補償問題の解決に尽力して下さい。
2021年2月11日
日本キリスト教会靖国神社問題特別委員会委員長 小塩海平
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