[刊行の経緯]
創業者の「アジア侵略は日本人の原罪である」との念に基づき、小社ではこれまで植民地支配下での朝鮮における日本の戦時犯罪を発掘、検証する本を様々出版してきています。また、戦後もなお続く在日コリアンという存在への不条理な制度的差別、社会的な偏見、差別の問題を指摘することも、小社の出版活動における一つの重要な柱となっています。
また国の原子力政策の持つ差別的な構造や原発事故の危険性、被曝の影響に関する出版物も継続的に手がけてきています。
今回の出版もそうしたことの延長線上に位置しています。
[刊行の狙い]
グローバリズムの進展に伴い世界各国でドメスティックな政治志向が出現し、力を付けています。日本も例外ではなく排外主義は急激な高まりを見せています。そうした中、ヘイトスピーチの禁止条例を掲げ、「多文化共生」の先進地域として注目されていた「川崎市」にあって長年住民運動を担ってきた著者のライフストーリーは、これまで書かれたことのない運動の記録であると思います。また記念碑的な差別撤廃運動である「日立闘争」から反核運動の日韓連帯構想へと至る著者の人生の歩みが、常に現実を批判する思索に根付いた行動であることが、本書を読むことで理解できます。それは一個の人間存在として、読者に深い示唆をもたらすものと思います。
版元として願うことは、あらゆる国籍の読者が本書に出会い、市民社会における主権者とは本来誰を指しているのかを理解してほしい、ということです。
風媒社 劉永昇
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