私が住む川崎市は政府の圧力がかかる前に「共生の街」を謳いながら、朝鮮学校への補助金を止め、拉致事件の本を現物支給したことがありました。日本政府の差別政策は、日本の植民地支配の根底的な反省をしていないことを意味し、各地方自治体および自治労は、せっかく外国人への門戸を開きながら、採用した外国人公務員を「当然の法理」によって管理職と、市民に命令する職務には就かせないという差別政策を行っていることをまったく差別だと認識していません。外国人への門戸を開きながら、後ろ手で閉じているのです。ヘイトスピーチの問題だけでなく、この「当然の法理」こそ、日本社会の差別の根幹だと思います。
崔 勝久
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去る3月29日に文部科学大臣が朝鮮学校への補助金について異例の通知を発し、全国の地方公共団体では補助金支給をめぐって動揺が拡がっています。わたしたちは研究者の立場からこのような政府の措置に抗議するため、文部科学大臣が通知を送った28都道府県の研究機関に所属する者が「呼びかけ人」となって、声明への賛同者を国内外に募り、文科省および都道府県に働きかけをおこないたいと思っています。ぜひ声明文をご一読いただき、賛同いただける場合は、後述の賛同フォームに必要事項を入力し、送信してください。
【1.声明文】
2016年 5月 9日
内閣総理大臣 安倍晋三 様
文部科学大臣 馳 浩 様
朝鮮学校への地方公共団体の補助金に対する政府の不当な介入に抗議する研究者有志の声明
2016年3月29日、文部科学大臣は「朝鮮学校に係る補助金に関する留意点について」という通知を28都道府県知事宛に送付しました。わたしたち研究者は、これを政府による民族教育に対する不当な介入であると考え、ここに抗議します。
同通知は、地方公共団体に朝鮮学校に係る補助金の支給停止を直接求める文面にはなっていないものの、既に各地で動揺が広がっています。それは、報道などで公表されている経緯からして明らかであるように、この通知が、自由民主党および日本政府による朝鮮民主主義人民共和国に対する一連の「制裁」に関する議論と措置の一環として出されたためです。補助金の支給自体はこれまでどおり各地方公共団体の自治的な判断に委ねられているとはいえ、「北朝鮮への圧力」といえば何をやっても許されるかのような風潮が作り出されてきたなかで、政府がこのような通知を出す目的と効果は明白です。
在日朝鮮人による自主的な民族教育に対して、日本政府はその権利を保障するどころか、歴史的に一貫して冷淡で、ときに直接的な弾圧を加えてきました。日本政府は、戦前には「民族的色彩」が濃厚と判断した教育施設を弾圧し、戦後の脱植民地化の趨勢のなかでようやく各地にできあがった民族教育施設に対しても1948~50年にかけて多くを強制的に閉鎖し、さらに1965年の文部事務次官通達などを契機に閉鎖を含む統制を加えようとしました。
各地の地方公共団体は、こうした国の政策にもかかわらず、外国にルーツをもちながら地域住民として生きる子らの民族教育に対する地域社会の理解を基礎とし、地方自治の精神にのっとって補助金制度を設けてきました。ところが、近年ふたたび日朝関係の悪化を背景に、日本政府は朝鮮学校を高等学校等就学支援金制度(いわゆる高校無償化制度)から排除し、このことが一部の地方公共団体による補助金の打ち切りや減額を誘発しました。そしてついに今回、地方公共団体の補助金交付に直接介入してきたのです。
このような昨今の日本政府による朝鮮学校への政策は、各種の国際人権法や日本国憲法で定められた平等権、学習権を政治的事由にもとづいて不当に侵害するにとどまらず、それ自体が人種差別撤廃条約で禁止しているレイシズム(人種・民族差別)の一形態に他なりません。実際、2014年に国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に対して、朝鮮学校生徒への高等学校等就学支援金の支給と、地方公共団体補助金の「再開あるいは維持」を要請しています。日本政府は、この要請を「留意点」として地方公共団体に通知すべきであるにもかかわらず、むしろ反対に人種差別撤廃委員会が懸念を示している政策を維持、拡大しようとしています。
今回の通知は、排外主義を助長することになるだけでなく、それ自体が結果的に「ヘイトスピーチ」と同様の機能をもってしまうことに、わたしたちは懸念を表明せざるを得ません。2009年には京都の朝鮮学校に対して排外主義団体が激しい示威活動をおこないましたが、この事件に対して裁判所は、当該活動によって朝鮮学校の「社会的評価」が低下させられ「民族教育を行う社会環境」が損なわれたことを重く見て高額賠償を求めました。この観点からすれば、今回の通知は、長年にわたって地域社会で培われてきた朝鮮学校の社会的評価と社会環境に負の影響を及ぼそうとする目的と効果において、排外主義団体が学校前でおこなった言動に比肩するものです。
以上の点から、わたしたちは今回の文科大臣通知に強く抗議するとともに、その撤回を要求します。また、文教政策において朝鮮学校に対するレイシズム(人種・民族差別)をただちに中断し、国際基準に照らして民族教育を保障するよう求めます。
【2.呼びかけ人】
※5月9日時点のリストです。当初、1地域1~2人を考えて準備していましたが、さまざまな経緯でそれより多い所、まだ打診中の所などがあります。変更があり次第、ブログ(後述)上で更新します。
北海道:北村 嘉恵(北海道大学)
宮城県:富永 智津子(元宮城学院女子大学教授)
福島県:川端 浩平(福島大学)
茨城県:渋谷 敦司(茨城大学)
栃木県:福井 譲(国際医療福祉大学)
群馬県:土谷 岳史(高崎経済大学)、永田 瞬(高崎経済大学)
埼玉県:福岡 安則(埼玉大学名誉教授)
千葉県:三宅 晶子(千葉大学)、樋浦 郷子(歴史民俗博物館)
東京都:鵜飼 哲(一橋大学)、佐野 通夫(こども教育宝仙大学)、米田 俊彦(お茶の水女子大学)、中野 敏男(東京外国語大学名誉教授)、坂元 ひろ子(一橋大学名誉教授)、外村 大(東京大学)
神奈川県:阿部 浩己(神奈川大学)、久保 新一(関東学院大学名誉教授)、林 博史(関東学院大学)
新潟県:吉澤 文寿(新潟国際情報大学)
福井県:北 明美(福井県立大学)、三脇 康生(仁愛大学)、吉村 臨兵(福井県立大学)、新宮 晋(福井県立大学)
岐阜県:柴田 努(岐阜大学)
静岡県:山本 崇記(静岡県立大学)
愛知県:山本 かほり(愛知県立大学)
三重県:森原 康仁(三重大学)
滋賀県:河 かおる*(滋賀県立大学)
京都府:板垣 竜太*(同志社大学)、駒込 武*(京都大学)、水野 直樹(京都大学名誉教授)
大阪府:藤永 壯*(大阪産業大学)、宇野田 尚哉(大阪大学)、伊地知 紀子(大阪市立大学)
兵庫県:谷 富夫(甲南大学)、長 志珠絵(神戸大学)
岡山県:高谷 幸(岡山大学)
広島県:崔真碩(広島大学)
山口県:櫻庭 総(山口大学)
愛媛県:魁生 由美子(愛媛大学)
福岡県:小林 知子(福岡教育大学)、出水 薫(九州大学)
(*印は世話人。奈良県・長野県・和歌山県は打診中。)
【3.賛同の要領】
○声明文をお読み頂き、賛同いただける場合は、以下の賛同フォームに必要事項を入力し、送信してください。
https://docs.google.com/forms/d/1RNqqx68jcdQHc-SNV127ISo3qud-6DvDGNANhUVD44M/viewform
○「研究者」は、大学院生、ポスドク、非常勤講師、退職後の研究者、民間研究機関の研究者など、幅広く想定しています。また28都道府県の研究者が呼びかけ人となっていますが、賛同は全くそれに限るものではなく、広く募りたいと考えています。今回、このような枠組で呼びかけた理由については、下記【4】をお読みください。
○賛同名簿は下記の第1次集約後に日本政府に提出しますが、その提出日程や方法については後日賛同者にお知らせいたします。
第1次集約締切:5月24日(火)
○関連する情報を随時下記のブログにアップしていきます。もし上記のフォームへのリンクがうまくいかない場合は、下記ブログからも署名フォームにリンクしています。
http://ksubsidy.hateblo.jp/
○ご不明の点は、世話人( ksubsidy@gmail.com )までご連絡下さい。
【4.声明呼びかけの趣旨】
2016年3月29日に馳浩文部科学大臣は全国の都道府県知事に対して「朝鮮学校に係る補助金に関する留意点について」という通知を発しました。これは大臣自身が明言したように補助金の自粛や減額などを求める内容のものではありませんが、既に各地で動揺が広がっています。こうした日本政府の動きに対して、さまざまな立場からの抗議の声があがっていますが、遅ればせながら、研究者という立場からも政府に対して働きかけようと抗議声明を準備しました。
朝鮮学校に係る地方公共団体の補助金は、国の要請によってではなく、地域社会のさまざまな事情や経緯から自主的に実施されてきたものです。都道府県による朝鮮学校への公的補助は、1970年度に東京都がはじめた「私立学校教育研究助成金」を嚆矢とし、1970年代半ばから徐々に日本全国へ拡大して、1997年には朝鮮学校が設置されている29都道府県すべてで実施されるようになりました。また市区町村からの助成も次第に拡がり、1995年の時点で朝鮮学校に何らかの形で助成金を支給している地方自治体は、27都道府県154市23区33町に及んでいました。
またその形態も多様です。朝鮮学校に特化したものもあれば、外国人学校や各種学校・専修学校・私立学校など、より広い枠組で実施されているものもあります。経済的に困難な児童生徒個々人に対する補助金の形態もあれば、厳しい学校運営の足しになるように給料などにも充てられるような形態で支給される補助金もあれば、教材・教具の現物の購入にしか充てられず老朽化した校舎の修繕費すら認められないような支給形態もあります。近年になって日朝関係の悪化を口実に補助金の支給を突然停止したり留保したりしたために、国連の人種差別撤廃委員会から懸念を表明されているような自治体もあれば、支給を維持している自治体もあります。また、朝鮮学校に子どもが数多く通っている地域もあれば、休校かその一歩手前に追い込まれているような地域もあります。
一方、今回の通知は、そうした地域事情にかかわらず一律に「留意」すべき点を徹底させるものとなっています。形式としては、朝鮮学校を認可している28の都道府県の知事に対して文科大臣が発し、そこからさらに域内の市区町村関係部局に周知させるようなトップダウンのやり方になっています。
補助金が地方公共団体の責任と判断で実施されている以上、まず各地での取り組みが重要になってくることは言うまでもありません。と同時に、「留意」という名の政府の一律的な介入に対しては、子どもたちの平等な教育環境を守るためにも、やはり地域を越えた抗議の声が必要です。つまり、日本政府に対しては通知の撤回を含む抗議の声をぶつけていくとともに、地域においては補助金の維持・充実または再開を求めていく、そのような二重の動きがいま求められています。
その点において、研究者は大事なポジションにあります。各地でそれぞれが(文部科学省に関わるような)教育研究活動をおこないながらも、日本全国さらには海外に広がるネットワークを持っているからです。そこで今回、朝鮮学校を認可している28の都道府県にある研究機関に所属している研究者が「呼びかけ人」となり、日本政府に対して抗議をおこなうという方式を採ることにしました。ご理解いただき、ご協力いただければ幸いです。
★お問い合わせ先: ksubsidy@gmail.com
★声明公式ブログ: http://ksubsidy.hateblo.jp/
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