2016年3月19日土曜日

原発の製造及び輸出は憲法違反であるー本人訴訟団の主張

3月23日に東京地裁でメーカー訴訟の第4回口頭弁論がもたれます。私たち本人訴訟団はこの法廷の場で、原発の製造及び輸出は憲法違反であるということを準備書面で主張します。おそらく、日本の原発裁判においてこのような主張がなされたのは、初めてのことでありましょう。

第6準備書面にはこのように記しています。


原発の製造・輸出は憲法違反であり、原賠法は違憲立法であるということです。
原発の製造は、当初の目的が「人類の福祉と平和」であっても、世界的には過酷事故をこの30年で3回も起こしました。特にこの日本において3・11福島事故を経験、目撃した人たちの多くは、原発が地域を破壊し、個人の生存権を脅かしたということは骨身にしみてわかっています。従って圧倒的に多くの人は、もう原発は要らないと思い、原発の製造と輸出は憲法の基本的人権の尊重と平和主義の原理に反するので、司法の場で憲法違反であることを明らかにしてほしいと願っています。2012年の夏、野田政権が実施したパブコメでは、約8万9千件のうち87%が「0%」を選びました。

憲法の前文は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」を謳っています。今日的には、原発推進を前提にする原賠法は明らかに違憲立法であるというべきです。

第5、6準備書面について
第4回口頭弁論で私たち本人訴訟団は第5と第6の二つの準備書面を提出します。
そもそも、私たちはなんのために、どのような思いでメーカー訴訟をはじめたのかということは最初の第一準備書面で明らかにしました。
http://www.nonukes-maker.com/%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80%E6%8F%90%E5%87%BA%E6%9B%B8%E9%A1%9E/

それに対して被告弁護団からの反論があり、それに再反論をしたのが、第4準備書面です。

2016年3月10日木曜日

原発訴訟の根源的な問題提起をした書面を、本日、東京地裁に提出

http://oklos-che.blogspot.jp/2016/03/blog-post_10.html
3月23日の口頭弁論では被告弁護団への再反論をした第4準備書面の説明をすることになり、そのために裁判所から要請されたのが、第4準備書面を要約したスライドで映し出す資料で、第5準備資料です。しかしそれは書き言葉なので法廷内の陳述をしても裁判官と傍聴人の心に訴えることはできないと判断し、新たな資料を加えた第6準備書面を作り、当日はそれを裁判所に提出し、法廷内で陳述することにしました。本日は、その第5と第6準備書面を公開します。

そこでは最後に裁判所へのお願いが二つ書かれており、一つは、原告弁護団と本人訴訟団の主張の違いを明らかにして分離裁判を求めています。二つ目は、被告3社への疑問を裁判所を通して提出したのですが、被告3社は回答を拒否してきました。「釈明権」というのですが、裁判所がその「釈明権」で被告が私たちの提出した求釈明書に対する回答をするように被告への働きかけをしてほしいという内容が記されています。

私たちの主張の意義について
福井と大津地裁の再稼働中止、及び高浜原発の稼働の差止めは、政府の再稼働推進方針が次々に具体化されている今日、大変、大きな意味がありました。反原発を唱える人に勇気をあたえてくれるものでありました。

しかし世界に目を向けると、NPT(核不拡散条約)体制のもとで核兵器の拡散を世界の5大国以外には認めないという縛りを設け、大国も渋々軍縮を誓いますが同時に、彼らは原発の拡散には大きな力を注いでいます。インドしかり、中国しかりです。欧米での脱原発の動きは真逆に、今後、発展途上国への原発の売り込みは激しくなるでしょう。原発輸出はますます活性化されていきます。そのメインアクターが日本の企業なのです。

日本の再稼働と新規の建設を止めながら、同時に、日本から原発を輸出をさせないという運動が必要です。そのためには、メーカー訴訟における原告の主張として、単に事故の場合のメーカー責任を問うというレベルで留まるのではなく、原発は作らせない、輸出させないという主張にまで高め、原発の製造・輸出はあってはいけない、それらは憲法違反だという判決を勝ち取ろうというのが、私たちの主張です。

みなさんのご理解とご支援をお願いいたします。



2014年(ワ)第2146号・第5824号 原発メーカー損害賠償事件
原告(選定者)  朴鐘碩他37名
被告 株式会社  東芝他2社

第 6 準 備 書 面 
                         2016年3月23日

東京地方裁判所民事第24部合議D係  御中

選定当事者
崔勝久   朴鐘碩   佐藤和之   伊藤明彦   弓場彬人
木村公一  李大洙   土田久美子  松澤信明


以下は、第4回口頭弁論期日において、弁論を行う際に使用する第5準備書面を補充する資料である。なお、以下の各文章の冒頭の番号は、第5準備書面のスライドの番号に符合している。
以下は、第4回口頭弁論期日において、弁論を行う際に使用する第5準備書面を補充する資料である。なお、以下の各文章の冒頭の番号は、第5準備書面のスライドの番号に符合している。

1)原発メーカー訴訟の会・本人訴訟団の事務局長、崔勝久です。
昨年私たちは、メーカー訴訟における請求内容を記した第1準備書面を東京地裁に提出いたしました。
私たちは代理人をたてず、約40名の原告が「代理人」の役割をする選定当事者を選び、どのような気持ちでメーカーを提訴するようになったのか、原発メーカーが福島事故の責任をとらなくていいというのはおかしい、その思いをまとめて第1準備書面にしました。それに対する反論が被告3社から今年1月27日にだされましたが、私たちの主張の仕方に当惑されたのか、私たちの主張に一つ一つ誠実に対応されてはいませんでした。私たちは改めてこちらの主張を整理した第4準備書面を3月9日に提出しました。


(2)本日は口頭弁論の場で、私たちの主張を要約して説明いたします。スライでに書き表した内容が第5準備書面で、それに新たな資料を加えて法廷内で陳述する内容を文字化したのが第6準備書面ということになります。第6準備書面の最後に裁判長に2点のお願いを述べさせていただきます。


3)これは高浜原発の停止を命じた大津地裁の仮処分決定を伝える記事です。再稼働の流れに抗する画期的な判決ですが、その中で、このように記されています。
「過酷事故対策」の項で、「福島事故の経過からすれば、不十分であったことは明らか」であり、東電と旧通産省原子力・安全保委は「対策が実際に必要であるとの認識をもつことができなかった」と記しています。しかしその事故を起こした原発を設計・製造したのは被告原発メーカーです。




(4)私たち本人訴訟団の思いを三つの主張にしました。
確認すべき第一は、原発はいつでも過酷事故を起こす危険性を内包しており、そのような原発の設計・製造を明記した原発メーカーと原子力事業者とのビジネス契約は、今日においては反社会的であり、「公序良俗」に違反し無効な法律行為であるということです。

その2は、原発の設計・製造、メンテナンスに関わった被告メーカーは、この過酷事故の責任から免れることはできません。被告には、事故によって内外の多くの人が「不安」と「恐怖」のために精神的損害を被ったことに対して、民法と製造物責任法に基づく賠償責任があるということです。

3は、原発の製造・輸出は憲法違反であり、原賠法は違憲立法であるということです。
原発の製造は、当初の目的が「人類の福祉と平和」であっても、世界的には過酷事故をこの30年で3回も起こしました。特にこの日本において3・11福島事故を経験、目撃した人たちの多くは、原発が地域を破壊し、個人の生存権を脅かしたということは骨身にしみてわかっています。従って圧倒的に多くの人は、もう原発は要らないと思い、原発の製造と輸出は憲法の基本的人権の尊重と平和主義の原理に反するので、司法の場で憲法違反であることを明らかにしてほしいと願っています。2012年の夏、野田政権が実施したパブコメでは、約8万9千件のうち87%が「0%」を選びました。


憲法の前文は、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」を謳っています。今日的には、原発推進を前提にする原賠法は明らかに違憲立法であるというべきです。



(5)「精神的損害」は、被告代理人が言うように、単なる一時的な「不安」と「恐怖」感ではなく、事故発生による具体的な出来事に基づいたものなのです。東京地裁(平成9.4.23)の判決です。「恐怖感とか不安感なるものは、・・・それが単なる主観的危惧や懸念にとどまらず、近い将来、現実に生命、身体及び健康が害される蓋然性が高く、その危険が客観的に予測されることにより健康などに対する不安に脅かされるという場合には、その不安の気持ちは、もはや社会通念上甘受すべき限度を超えるものというべきであり、人の内心の静穏な感情を害されない利益を侵害されたものとして、損害賠償の対象となるのが相当である」と述べています。

私たちはここに示したように、過酷事故によって発生した「精神的損害」の具体的な要因例を10項目上げました。この中には触れていませんが、甲状腺癌になった子供やその親たち、自殺した人(昨年末までに80人以上)とその近親者、子供を抱えて単身自主避難している母親たち、いまだ避難所に暮らす孤独な老人たち、海で漁のできない漁師、お米を作っても売れない農家の人たちなどの精神的苦痛のことも当然、考慮すべきでありましょう。

「いわれなき精神的苦痛の受忍し難い喪失感」、安全神話崩壊、継続する汚染水、低線量被曝、使用済み核燃料の問題、潜在的核兵器に利用される問題、原発輸出によって海外の人々への加害者になること等、原発事故及び原発の存在そのものによる「不安」と「恐怖」によって精神的損害が発生する例をあげました。



(6)被告代理人が主張する、原発メーカーの原賠法による免責は許されるべきではありません。以下、四つの理由を上げます。
①原賠法そのものが違憲立法であること。

②原賠法の「責任集中」制度は実質的に崩壊していること。
原賠法は原子力事業者の「責任集中」と「無限責任」を謳っていますが、「支援機構法」によって政府から東電に支援されたお金は、「相互扶助」という名目で各電力会社が国に返済をしています。このお金は当然のこととして電気料金の中から支払われるものです。

③原賠法の「原子力損害」は放射能の実害について書かれており、「精神的損害」の記載はなく、「精神的損害」は原賠法の「原子力損害」には該当しないのです。

④被告代理人はそろって「相当因果関係がある損害は、精神的損害を含め、すべて『原子力損害に』該当する」と主張します。従って、原賠法のメーカーの免責条項によって、精神的損害に対してもメーカーは一切、免責されるというのです。
問題は、「相当因果関係がある損害」とは何なのかということです。「相当因果関係」の定義は曖昧です。この「相当因果関係論」なるものは結局のところ、政府がIAEAで定めた放射線量を基準にしており、その恣意的な決め方に問題があります。

たとえ基準値以下の低線量でも内部被曝の問題が発生します。私たちはむしろ、今日の有力説である「事実的因果関係論」で検証することが、原子力公害時代の要請であると主張します。

現在福島においては「精神的損害」への賠償が「相当因果関係」によって一定の地域や対象に限定されています。しかし「精神的損害」の現実に対して、恣意的に決定された放射線量の基準を適応するのでなく、人々が原発事故によってどのような精神的損害を被ったのかということは事実に即して判断されるべきです。

そうすると、福島以外の地域や国外にまで損害賠償の領域が広がります。東電はもちろん、被告原発メーカーの責任は免れえません。そのときに適応される法律は、原賠法ではなく、民法709条(メーカーの過失)と製造物責任法であることは言うまでもありません。




(7)裁判長への二つのお願いです。
第一は、分離裁判の決定です。原告弁護団と私たち本人訴訟団は、被告メーカーの責任を問い、精神的損害に対する賠償を求めるということでは目的を同じくし、同じ原告として「相補い合う」主張をしています。


しかし、原告弁護団は、原賠法が原発メーカーの免責を謳うことで違憲とするものの、適用違憲として、その原賠法を根拠にした精神的損害の賠償請求を主張します。即ち、本件事故に対する原発メーカーの責任を問うが、原発製造・輸出そのものは許されるべきではない、違憲であるとは主張していないのです。原発は過酷事故がなくとも、存在そのものが人々の健康を害し、自然を汚染し、潜在的核兵器へと利用されます。ですから、私たちは原発そのものの製造及び輸出は違憲であると主張したのです。原告弁護団と私たち本人訴訟団とは精神的損害賠償の根拠が異なり、根本的な主張の違いがある以上、裁判長に両者の分離の決定をお願いします。


 (8)
最後は、被告メーカーに対して裁判所が釈明権の行使をしていただきたいということです。私たちは裁判長に提出した求釈明書では、各社に様々な疑問への回答を求めていますが、彼ら3社はこぞって回答を拒否しました。しかし、特に「契約」に関することは、「公序良俗」違反と、本件事故による賠償責任に関わることであるので、公正な判断のために裁判所からあらためて、被告3社に対して誠実に回答をするように釈明権の行使をお願いいたします。





3 件のコメント:

  1. 懸念1:この趣旨だと海外のメーカーが免責(waive)されてしまわないか?
    懸念2:高浜判決は高く評価できると思う。しかし、原発問題の背後に有るのは憲法を超える日米協定の縛りであり、これこそが憲法違反(最高法規と謳われている)なのに、それを管轄する司法も行政の支配下であり、三権分立が有名無実化しているという事実がある。さらに国際法(条約)と国内法の優先順位については学者の間でも意見が別れるという現実。これらに立ち向かうには?

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  2. 補足:裁判所自体が憲法に反する行為(判決)を為した場合の(市民の側の)対処方法はあるのだろうか?裁判において「裁判所の姿勢をただす、あるいは見解を問う」という行為は成り立つか?

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  3. 澤野義一教授の東京地裁に提出した証拠論文があります。
    「原発メーカーの原発製造等と輸出の公序良俗違反性(澤野義一教授論文)」.
    http://www.nonukes-maker.com/%E7%AC%AC%EF%BC%94%E5%9B%9E%E5%8F%A3%E9%A0%AD%E5%BC%81%E8%AB%96%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%A6/

    1.被告GEジャパンは準備書面で、自分たちは原発に関しては直接的。間接的にも一切関知していないと答弁しており、それに対して、私たちは反論しています。日本の54機の原発でGEを除けば全部、国産です。

    2.普通は国際法優先とされていますね。

    日本からの原発輸出に関して、澤野義一教授の論文を紹介します。

    そこでこのような記述があります。

    「日本の原発輸出は、日米核同盟やアメリカのエネルギー安全保障の一環として展開されており、アメリカの事前了解なくしては行えないという政治経済的従属性の問題もある(1988年発効の日米原子力協定4条) 。
     ②の点に関しては、原発メーカーが国内的に「公序良俗」違反の原発ビジネスを海外輸出で展開することは、上記のような諸問題を引き起こし、「平和を愛する諸国民の公正と信義の信頼」原則(憲法前文)に反する。また、日本政府が原子力協定に基づいて、国内的に違法・違憲の法律行為(輸出契約)を大臣が許可(国際技術移転契約に関する外為法が原発を許可)することは、内閣の外交・行政権を逸脱し(憲法73条)、違憲の条約締結を禁ずる憲法98条にも違反する。要するに、原発輸出が違憲だとすれば、原発輸出ビジネス契約は「公序良俗」違反として許されないし、政府の原発輸出政策を憲法に適合する「国際貢献」として評価することもできない。」

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