2016年1月19日火曜日

原発メーカー訴訟の現状を報告します

1.現状
GE・東芝・日立の被告弁護団から、これまで島・河合弁護団及び私たち本人訴訟団が訴状及び準備書面で主張してきた内容に対して全面的な反論をしてきました。

裁判はご存知のようにお互いの主張、反論、再反論と議論が続く限り継続し、お互いが自分たちの主張の正当化のために証拠や証人をあげ、そしてそれで議論が尽きたところで結審を迎え、そして判決が下されます。

このような正常な過程を経る場合には審議に一定の時間がかかることは当然です。しかし被告弁護団は、島・河合弁護団及び本人訴訟団に対して、口頭弁論が8月に始まって半年でもう議論の余地なし、3回も口頭弁論をやれば十分であり、直ちに裁判を終了するように、棄却するように求めてきました。

2.島・河合弁護団への反論の内容
訴状の主張は二つです。①原賠法は、「責任集中」を掲げメーカーの責任を免責していることが違憲である。②違憲でなく「適応違憲」であっても、原賠法の免責条項を避けるために、メーカーの「故意」と「原子炉の欠陥」をあげて、原告がメーカーに賠償金を請求する「代位弁済」を主張し、その根拠に東電の「無資産」を掲げています。

それに対して被告弁護団は①「責任集中」は違憲ではなく、原発事故への賠償に備えた、国をあげての「枠組み」の一環である。②国が法律をつくり無制限の東電支援を約束しているのであり、東電の「無資産」は認められない、釈明の余地なしとしています。

それに対して島・河合弁護団は、被告の「権力の乱用」と主張し、「原子炉の欠陥」や事故による「損害の規模」をあげ(第2準備書面)、法律論と並行して現実の問題をとりあげようとするのですが、裁判所がどのように判断するのか余談を許しません。ここ数回の口頭弁論が山場です。

3.本人訴訟団への反論
原賠法は、原子力損害は放射能の実害に対する補償と明記しているため、私たち本人訴訟団は精神的損害は原子力損害には当てはまらず、原賠法に依らず直接、メーカーの不法行為を民法やPL法で問題にしたのですが、被告弁護団は、原子力損害と精神的損害は同一のものとみなすので、本人訴訟団(選定者)の主張は認められず、即却下されるべきと主張しています。

またPL法の適応に関しては3年の時効を主張し、事故が継続している事実を踏まえていません。私たちは福島の限られた区域での限られた精神的損害の症例(要介護者と移住を求める人だけに限定)に原賠法の適応をしていることをもって、それがあたかも原賠法の正当な解釈とする、白を黒と言いくるめるような暴論には徹底的に反論をします。3月23日の第4口頭弁論に提出します。

4.島・河合弁護団からの「弁論分離の上申書」提出
被告弁護団は早期終了の立場から、島・河合弁護団と本人訴訟団の分離を認めていませんが、原告弁護団は本訴訟団との分離を裁判所に正式に1月27日に要請します。この二つは同じ原告としてスタートしたものの、私たちは選定人になっているので別々に判決が出されます。

被告弁護団は、島・河合弁護団への反論は明確にできたと主張し、あとは裁判所の即時終了の判断を急がせるだけなのですが、それに本人訴訟団も一緒にしてひきずり下ろそうとしています。世界初のメーカー訴訟であり、日本の裁判史上はじめての2000人を超える外国人原告が精神的損害を訴えたことに対して、裁判を長引かせたくないのです。日本国内の問題として処理したいのでしょう。

分離裁判を認めるかどうかは裁判所の一方的な判断に委ねられています。しかし上記で説明したように、分離かどうかの前に、裁判の終了かどうかの瀬戸際に立たされているのが現状です。

5.最後に
弁護団を支援する一部の原告を除いて約4000名の原告・選定者によって構成されるメーカー訴訟の会は、弁護団と本人訴訟団をメーカーの責任を追求するものとして両者の支援を打ち出しました(会報に明記されています)。しかし島・河合弁護団は訴訟の会との対話を拒否しています。口頭弁論後の合同の報告会開催も拒んだようです。

メーカーの責任を追求するのにひとつの論理でなく、ふたつの論理・主張があることは原告側の立場を強化し、有利にします。私たち本人訴訟団は弁護団と対立するのでなく、「相補う」関係になっているのです。「小異を捨てて大同に就く」とは河合弁護団長の主張でした。原賠法の違憲論は、本人訴訟団でも最終準備書面までには論議を詰めます。それは「責任集中」ではなく、原賠法が原発をもつことを前提にしていること自体を違憲とする立場です。

右傾化する日本の裁判には意味がないとする原告もおり、法廷外の闘争を優先する(しかし法廷闘争には一切、関心を示さない)人もいます。しかし世界初のこのメーカー訴訟を数回の口頭弁論で終わらせていいのでしょうか。メーカー訴訟を世界的な規模で行うために、戦略的に「精神的損害」を理由にして提訴しました。裁判至上主義と揶揄する人もいますが、私たちはメーカー裁判をはじめた以上、徹底してメーカーの問題点、責任を法廷内で追求し、裁判の勝利を目指します。

参照
本人訴訟団のHP     http://www.nonukes-maker.com/
メーカー訴訟の会のHP http://maker-sosho.main.jp/
弁護だんHP        http://nonukesrights.holy.jp/


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