朝日新聞1月18日の朝刊で、福島の事故の賠償をどこが責任をもって行うのか、お金を集めるのかの決定過程が説明されています。結論は、全国の電気利用者ら、すなわち、私たちが負担することになったのです。どうして、どうしてそんなことが許されたのか?
本来、原子力損害賠償法(原賠法)によると、原子力事業者の「無過失責任」、「責任集中」、「無限責任」の原則が明記されています。この点はすでに私のブログで何度も記しています。
原発問題の本質を衝く熊本さんとの学習会で学んだこと
http://oklos-che.blogspot.jp/2015/05/ymca-httpoklos-che.html
朝日新聞の小森淳司記者の取材で新らしくわかったことの裏話を紹介し、最後に問題提起をしています。しかし私は実名の記事なのだからもっと突っ込んで問題の所在を書いて欲しかったという感じがします。連載の行き先を期待しましょう。
事故直後、民主党政権で官房副長官を務めた仙谷由人は、東京電力会長の勝俣恒久と事故の損害賠償について話し合います。
勝俣側は、原賠法第3条を盾に、「事故は天地異変で起きた。東電を免責に」と訴え、莫大な投資を東電にしている都市銀行も東電がつぶれないことを仙谷に訴えたとあります。
一方、原賠法の「責任集中」と「無限責任」の原則に基づき、東電の「法的整理」を求める声も強くありました。しかしそうすると、国が賠償金を払わなければならない、そんなことは「財務省が受けるはずもなかった」という状況で仙谷は、震災から1ヶ月後に内閣に「経済被害対策室」を立ち上げ、「原発をもつ電力会社に分担を求める「奉加帳」を回し、電気料金に上乗せして利用者から徴収する案」を考え出したのですが、事故後に決めたやり方で遡って今回の事故の賠償として実行できるのでしょうか?
当時の民主党政権は、6月14日、今後、事故が起きても各社が助け合う、「相互扶助」の考え方で「東電のためだけではない」ということで、東電支援策を法律にした原子力損害支援機構法案を閣議決定しました。それは熊本一規教授が指摘するように、あきらかに原賠法違反です。しかし内閣法制局の「お墨付きをもらって」、「法施工前に生じた損害にも適応する」と附則に書き込みました。なるほど、大事故で世間が動転している間に、矛盾する法律を作ったわけです。私の記憶する限り、マスコミは両手を上げて賛成していたように思います。
このことで、電気料金の明細には出てこないのですが、平均的な各家庭で毎月数十円が全国の沖縄を除く原発をもつ電力会社に支払われ、電力会社は国の東電支援の窓口になった「支援機構」に賠償金の原資を払っているのです。
朝日の記事は、今後の動向として、すでに原子力事業者の「無限責任」を「有限」にする議論がはじまっており、「国費(税金)の投入に道筋をつけたい経産省がもぐりこませた」、11年の支援機構法の附則を紹介して、記事をこのようにまとめています。
原発事故を起こしても電力会社はつぶさないという枠組みは、どんなに大きな事故でも、賠償など事故の対応費用を、国民と電気利用者が際限なく面倒を見るということを意味する。国策として原発を進めた国の責任も正面から問われないまま、見直しの議論が粛々と進む。
(編集委員・小森淳司)
上記の支援機構法の附則の内容には記事は触れていないのですが、このようになっています。
機構法附則6条2項はこうなっています。
「早期に、事故原因の検証、賠償実施の状況、経済金融情勢などを踏まえ、東京電力と政府・他の電力会社のと政府・他の電力会社との間の負担のあり方、東京電力の株主その他の利害関係者の負担のあり方等を含め、法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じる」
熊本さんはこのように書かれています。「今日に至るまで、一切見直しは行われておらず、原子力村の負担はゼロのままである。要するに、機構法に基づく仕組みは、「原子力村の救済」を至上命令とした仕組みであり、そのツケが電気料金や税金を通じてこ国民に押し付けられているのである。」
附則にある「その他の利害関係者の負担のあり方」などをふまえ、原発メーカーにも事故に対しては免責ではなく、責任を取らせる措置を政府はとるのでしょうか?
私たちが2014年に東京地裁に提訴した原発メーカー訴訟は、原発メーカーは免責されるのではなく、精神的損害という視点から、責任があるということをあきらかにするものです。被告の東芝・日立・GEの代理人の主張は、原告弁護団と私たち本人訴訟団の主張を退け、早期に裁判を終了することを求めています。ここから私たちの反論がはじまります。読者のみなさんのご支援を願います。
法廷で陳述される内容を事前に公表しますー原発メーカーの責任について
http://oklos-che.blogspot.jp/2016/01/blog-post_16.html
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