1.昨年のクリスマスイブに書いたメッセージです。
クリスマスイブのメッセージーー絶望のなかで「日立闘争」勝利の意義を問う
http://oklos-che.blogspot.jp/2015/12/blog-post_24.html
40年も前の日立闘争に触れて、今の絶望的に見える社会の中で、いかに生きようとするのかについてです。
今思えば、私たちにどのような展望があったのでしょうか、何か、勝てる要素が見えていたのでしょうか。しかしそのなかで私たちが勝利したのだというのが、私のクリスマスイブのメッセージです。人間の判断や分析、意思だけでこの世のことが全て見えるわけではなく、「混乱」のなかから真実が見えてくるという希望を持ち、やるべきことをやり抜く、その苦しみのなかにおいて真実を求め続ける、そして求め続けることのなかに希望を見出すのです。
その直後、福井で再稼働を認める逆転判決がだされ、一昨日は従軍慰安婦問題での日韓の合意がなされ、韓国では当事者のハルモニたちや市民団体からの反対の声が聞こえてきています。世界の為政者は当事者の思いよりこの合意を支持し、政治を優先する決意のようです。しかし、日本政府(軍隊)がはじめた兵士のための慰安婦制度の責任の取り方はこの合意で決着がつけられるとはとても思えません。日本は今年、参議院選挙、沖縄の問題、TPP、戦争法案など、更なる混乱の時代を迎えるでしょう。
2.新年にあたっての私たちの決意
新年にあたって、私はそのような混乱の時代の中で自分のできることを明確にしたいと思います。そのささやかな闘いが、多くのみなさんのさまざまな闘いと通底し、時代に抗い、新しい時代を待ち望む一役を果たしたいと願います。
それは原発メーカーの責任をあきらかにする、メーカー訴訟のことです。世界39ヶ国から4000人の原告が集まり、福島事故を起こした原発の製造者である東芝、日立、そしてアメリカのジェネラル・エレクトリック(GE)社を訴える裁判を東京地裁で始めました(2014年3月10日 2次)。昨年になってようやく口頭弁論がはじまり、今年からいよいよ本格的な裁判がはじまります。
3.「選定者」によるメーカー訴訟の闘いは当事者主権
当事者主権、自分のことは他人に任せないで自分でやるということです。このメーカー訴訟もそうですが、当事者はメーカーを訴えることを決意した原告です。その原告の法廷における訴訟行為の代理人として選任されたのが弁護士です。ところがメーカー訴訟の22名の代理人(正確には1名の代理人と21名の復代理人)は、自分たちが裁判を主導しようとして、「原発メーカー訴訟の会」の現・前事務局長との委任契約を解除して代理人を辞任し、原告の有志の集まりである「訴訟の会」との対話を拒み続けています。
前・現「訴訟の会」事務局長とそのような弁護団を解任した原告は本人訴訟を決断し、選定当事者制度を活用することを決めました。
(参照:「選定当事者制度とは」 http://nonukes.eyedia.com/jp/selection/)
これは民訴法の改正によって作られた制度なのですが、これによって、裁判の当事者に当てはまる人ができるだけ多く裁判に関わることができるようになりました。欧米ではClass Action、日本の集団訴訟の一形態です。
4.選定者は仲間内から選定当事者を「代理人」として選びます
わたしたちのメーカー訴訟に関していうと、メーカーの原発製造に起因する過酷事故の発生によるさまざまな事象(汚染水、低線量などによる被害)や、通常運転においても発生している地域住民のさまざまな疾患の発生に対して「不安」「恐怖」を抱き基本的人権を侵され精神的損害を負うた人は誰でも選定者になれます。その参加は、選定者として仲間うちから選定当事者を選任する用紙を裁判所に提出することで可能になります。もちろん、原告も選定者になることが可能です。その場合は、弁護団との委任契約は解除されることになります。従って、選定当事者制度の活用によって、メーカー訴訟の当事者としてメーカーに精神的損害を訴えることを決断した人は誰でも選定者になれるということになります。。
現在、選定者は約40名で、選定者の「代理人」の役割をしてくれる選定当事者は9名です(うち、海外は2名)。「訴訟の会」と弁護団との関係が正常でなくなり、混乱が続きました。同じ原告の中でも意見の違いが起こり、MLでの激しい論争が続いた結果、何人かは原告を辞任しました。「訴訟の会」のMLをやめていった人も多くいます。私たちはこれまでの経験から、選定者を厳選し数を増やすことを目的にせず、メーカー訴訟との闘いを本気で担おうとする選定者を核とした体制をつくりたいと考えています。そして現在の韓国とトルコの選定当事者以外にも、今後海外でさらに信頼のできる選定者を増やしてしていきたいと考えています。
私たちは混乱の中から苦しみを経て、選定当事者制度を活用することで、40名にもなる集団本人訴訟団を結成し、文字通り、メーカーの責任を問う当事者自身が自分たちの思い、考えを裁判所に訴えることができるような体制を作りました。これによって原告当事者が真にメーカーとの闘いを続けていくことが可能になるのです。
5.選定者が自らメーカーの責任を追求するのです
同じ裁判でありながら、原告弁護団の訴状に記された主張と、私たち集団本人訴訟団の準備書面で展開した主張の二つが併存することになります。いずれ今年の初めころに、原告弁護団との分離を裁判所に求めます。しかし私たちは原告弁護団と対立するのではなく、「相補う」のです。原告としての複合的な主張をすることで、早期結審を謀る被告弁護団に対抗することになります。しかし証拠、証人は原告弁護団とは共有できず、判決も原告と選定者とので別々に出されます。
現在、事故以来続く汚染水の処理の問題はメーカーに責任があることを研究している市井の研究者の証拠論文の提出や、メーカーの責任を法的に追求する憲法学者による証拠論文と証言、原発事業者の「責任集中制度」は実質的に崩壊しており東電とメーカーの責任を問うべき政府の不作為を証明する証拠論文と証言、及び世界各国において、福島事故によって「不安」と「恐怖」を覚えて精神的損害を訴える世界中の原告からの陳述を計画しています。今後、世界の英知を集めてメーカーの責任を追求します。
裁判というものは弁護士にすべて委ねていいものなのでしょうか。私たちは40名の法律の素人ですが、これまで弁護士と裁判官という法律のプロだけで取り仕切っていた法廷の習慣(常識)を、この選定当事者制度の活用によって打ち破ろうと思います。
事実、選定者の中から海外の選定当事者を選定するこの是非を東京地裁に質したとき、裁判所は返事ができず2週間にわたり法務省と協議していたものと思われます。外国人の選定者を選定当事者に私たちが選んだ場合、仮にその人は日本の弁護士の資格がなくとも、日本の法廷で選定当事者として代理人と同じ働きができるようになるからです。民訴法の改正にあたり、そういうことは全く想定されていませんでした。私たちは裁判を進めるのに国籍や資格の枠をはずす、まさに画期的なことを始めましたのです。
6.原告弁護団の主張について
原告弁護団は内外の4000名の原告が裁判の当事者になるための立論に腐心していました。そのためには精神的損害を主張するしかないと判断したのです。メーカーが事故を起こしても、原子力事業者(=東電)だけの責任を追求し(責任集中)、PL法は適用しないと明記してメーカーの責任を免責した原賠法の「責任集中制度」が諸悪の根源であると規定して、原賠法の違憲を主張します。そうすることでメーカーを免責した条項は無効になるからです。
そして同時に仮に原賠法が違憲でなかった場合も想定して(適用違憲)、メーカーの免責を明記する原賠法の規定があっても、原告が被告メーカーの責任を追放する道を探しました。そのためにメーカーが「故意」に事故を起こしたことを証明し、その責任を追求することができる東電に代わって原告が直接メーカーに損害金を「求償」できると主張するのですが、その前提は、年間4000億円もの利益をあげている東電が「無資産」であり、原告弁護団が請求する40万円の賠償金を支払うことができないというものです。これは実に無理がある主張であると思われます。
なによりも原告弁護団はそもそもの前提として、原賠法に記された原子力損害と精神的損害を同一視して精神的損害をメーカーに賠償請求するのですが、原賠法が規定する原子力損害は、放射能の実害に対していかに賠償するのかということを規定しているのです。
原賠法 (定義)第2条 2 この法律において「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた報告をいう。
7.私たちの主張とは何か
私たちは自分たちの主張を明記した準備書面と、メーカーの問題点を問い質す求釈明書を裁判所に提出しました。(参照:準備書面及び被告メーカーへの質問をした求釈明書などの資料はすべて、本人訴訟団のHPにあげられています。http://nonukes.eyedia.com/jp/material/ )
私たちは上記6の原賠法の原子力損害の規定から、精神的損害の賠償責任は原賠法を盾にしなくともいいと判断したのです。私たちの主張の法的根拠は以下のとおりです。
①私たちの主張する精神的損害は今や原子炉 の運転、過酷事故の危険性による「不安」「恐怖」を起因とする人権侵害であ り、従って、原発の建設・輸出契約自体が法的には公序良俗(民法90条)に反する反社会的、不法な行為 であり、無効であることを私たちは時代に先駆けて主張します。
②それにもかかわらず一旦製造された原発の過酷事故、通常運転によって私たちは、「不安」と「恐怖」という人類が歴史的に培ってきた基本的人権が犯されたことを根拠として一人、100万円の損害賠償を請求しました。それは憲法前文、及び平和的生存権(25条)、基本的人権(11条)、幸福追求権(13条)、生存権(25条)、及び、世界人権宣言や国際法に反しているからです(世界人権宣言第3条「すべての人は、生命、自由及び身 体の安全に対する権利を有する。」、及び「市民的及び政治的権利に関する国際規 約(自由権規約)」6条1項「1.すべての人間は、生命に対する固有の権利を有 する」)。
③この裁判のおいて最も重要なことは、世界の原告が訴える精神的損害がいかに根拠のあるものかを実証的に主張していくのかという点です。そのために、私たちは準備書面で以下の主張をしました。この点の主張を強化すべく、みなさんのご協力をお願いします。
・原発メーカーの不良品(原子炉)事故によるいわれなき精神的苦痛と失っ たものに対する受忍しがたい喪失感
・安全神話が嘘であったことが判明したことに対する「不安」と「恐怖」
・汚染水の流出が止まらず太平洋に流れ出ている現実に対する「不安」と「恐 怖」
・低線量放射線による内部被曝の問題
・使用済み核燃料など放射性廃棄物の問題
・原発の再度の過酷事故による被曝に対する不安と恐れ
・原発の存在そのものが人類、自然にとって害悪であるということについて
・原発の存在が潜在的核兵器保有として国家の安全保障政策に組み込まれて いることについて
・原発から排出される放射能に対する不安と恐れ
8.今年の予定
1月27日の第3回の口頭弁論において、「訴訟の会」の事務局長である朴鐘碩氏は、日立の現役社員として、どうして自分が原告になったのかということを陳述し、私は、本人訴訟団の事務局長として準備書面の内容を説明します。これは東京地裁が、選定当事者が40名の選定者の「代理人」であり、原告および被告弁護団と対等な立場で訴訟を進めていく当事者であることを承認したことを意味します。
3月23日は第4回目の口頭弁論で、私たちはその前に証拠論文を提出し、具体的な証人を立てます。被告弁護団は原告弁護団および私たち本人訴訟団の早期結審を謀ろうと必死になってやってくるでしょう。私たちはそれに対抗して、徹底的にメーカーの責任を法廷において追求します。
9.最後に
私たちのこの闘いを裁判至上主義だと批判する人が原告の中にもいます。裁判ですべてかたがつくとは考えていませんし、司法界にも保守化の流れがひしひしと押し寄せていることを私たちはよく知ってます。しかし世界39ヶ国から4000人の原告を集めた者としては、メーカー訴訟において徹底的にメーカーの責任をあきらかにしながら、同時に、世界中にこの問題をアピールしていくことを私達の使命だと考えます。日本一国ではなく、国j祭連帯によってメーカーの責任を明らかにし、原発体制そのものに抗い、法定内外の運動とつながっていくしかありません。そのためには、とにもかくにも、この法廷闘争をしっかりと闘い切るしかないのです。
ブログの読者のみなさんのご理解とご支援をお願いいたします。私たちは自分たちの闘いを闘い切ることで、みなさんの闘いに連帯していきたいと考えています。どうぞ、みなさんの知識をはじめ、ご助言、ご協力をお願いいたします。
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