参照:地域の変革と国際連帯の運動によって日本をよりよい社会へ―(その1)福島事故は脱アジアを掲げ近代化を求めてきた結果―
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/05/blog-post_15.html
地域の変革と国際連帯の運動によって日本をよりよい社会へ
―その(2)Act and think, locally and globally
崔 勝久(チェ・スング)
(NNAA-J事務局長、原発体制を問うキリスト者ネットワーク(CNFE)共同代表)
先月号では、福島事故は日本が脱アジアを掲げ近代化を求めてきた結果であるということを書きました。「今は、どのような時代になってきているのか」ということで、アジア諸国と敵対し在日朝鮮人を差別抑圧する安倍政権が憲法改悪を目指そうとしているということ、また「私の現状認識」ということで、韓国と北朝鮮と日本はどのような歴史的な関係になっているのかということを具体的な日韓条約の内容をあげて説明しました。最後に、「原発は最先端の科学であり、未来の豊かさのシンボルであったのです。福島事故は脱アジアを掲げ近代化を求め続けた日本のたどりついた姿です」ということで「私の歴史認識」というサブタイトルを掲げて説明いたしました[i]。
今回は、No Nukes Asia Actions(NNAA)を昨年立ち上げた経緯と、日本においては再稼働反対と同時に原発輸出反対も掲げられなければならず、原発体制に反対するには各国、各地方において市民が力を合わせる、国際連帯運動をしていこうという主張をどのように具体化しようとするのか書いてみます。
(1) 日本の原発輸出の現状
安倍首相はまず4月1日にモンゴルを訪問しました。「戦略的パートナーシップ」の構築を謳いながらこの時の成果はあまり大きく新聞報道されていません。今回のモンゴル側の目玉は、「エルチ・イニシアチブ」とモンゴル語で活力を意味する単語を使ったことから、日本からの経済協力を得ることであったのでしょう。「エルチ・イニシアチブ」には「石炭やレアアースなどの資源開発に向けての日本の投資を促すことや、モンゴルの大気汚染対策への技術協力も盛り込まれた」そうです。これは表向きの(モンゴル国民に向けた)メッセージだと思われます。
しかしあれだけ話題になりながら、またモンゴル政府がもっとも力を入れたがっている
ウランの開発や原子力に関しては一切言及がなかったことから、大阪大学の今岡良子准教授はかえって、かつて東京新聞がスクープした日米モンゴル間のCFS(包括的燃料供給)構想や、使用済み核燃料の埋蔵の件が話し合われなかったはずはないと見ます。私も同意見です[ii]。
この5月、安倍首相はロシアとUAE(アラブ首長国連合)とトルコを周り、参院選を前にして大いなる外交的成果、とくにそれが本人もトップセールスマンだと言いながら原発輸出の成果を誇っていました。
まず安倍首相はUAEの副大統領と2国間の原子力協定の署名を行い、今後のUAEへの原発輸出の段取りを済ませました。「中東諸国から日本の世界最高水準の技術と過酷な事故を経験した中での安全性への強い期待が寄せられた」そうですが、まるで福島事故は解決して、住民の問題も原発の事故の究明も終わったと言わんばかりですね。あきれてしまいます。
その後はトルコに向かい、原子力協定を締結しました。フランスのアレバと組んだ三菱重工が東日本大震災後初めての輸出をすることになります。日本での増設や再稼働が難しいとされているなか、「海外市場への輸出を活性化し、成長産業の柱としたい」という考えだそうです。しかし原発予定地域は風光明媚で地震の多いところです。何もよりによってトルコ住民の反対するそんなところに原発を建設しなくてもよさそうなものですが、日本側としては、「先方の期待」に沿うということなのでしょう[iii]。しかし日本の原発輸出を望んでいるのは誰なのか、しかと把握する必要があります。リトアニアは国民投票で日立の原発建設を否定しています。フィンランドでも東芝の原発建設を住民は反対しています。
これからヨルダン、ベトナム、台湾での原発建設が決定された地域の住民反対運動が厳しくなることが考えられます。4月末に台湾を訪問した私の経験では、間違いなく台湾は台北から30キロも離れていない第四原発の建設の是非を問う国民投票を実施するでしょう[iv]。
さすがに朝日新聞(5月4日)は控えめながら、「原発事故の原因も完全に究明されたとは言えず、長期的な原発政策の方向性を決めずに輸出を先行すれば、参院選を前に世論の反発を招く可能性もある」と日本政府の原発輸出に批判的です。しかし経済がよくなるのであれば、憲法改悪も目をつぶろうかという現在の自民党、みんなの党、維新の会に対する好意的な反応はどう理解すればいいのでしょうか。みなさんはこの7月の参議院選挙にはどのような基準で選挙に臨まれるのでしょうか。
考えてみれば、明治以来の日本の植民地支配は日本国の富国強兵のために拡大していきました。キリスト教会をはじめ労働組合も女性解放運動も、自分たちの生活がよくなることを望みナショナリズムに酔いしれ、天皇制国家主義を支え絶対視してきたのではなかったのでしょうか[v]。今、安倍政権が向かおうとしているのは、そのような「過去の栄光」を目指し世界の冠たる大国になることであるように思えます。
(2)国際連帯運動を目指して
NNAA(No Nukes Asia Actions)の結成は歴史の必然であるように思えます。日本の運動が再稼働反対に留まらず、原発輸出反対、使用済み核燃料のモンゴルへの持込み反対を掲げることは、一国平和主義に陥りがちなこれまでの日本の運動の歴史からすると
、これは絶対に必要であると私たちは強く主張してきました。
日本に住む市民として、原発の再稼働と自分の傍に置きたくない使用済み核燃料の再処理を許さず、同時に海外に原発を輸出させない、核廃棄物を日本からモンゴルに持ち込ませない、ここから戦後初めての、海外において反原発の運動を進める市民との国際連帯が始まるのであり、それなくして反原発の運動が勝利することはありません。
私たちは昨年の11月11日にNNAA結成集会を持ちました[vi]。モンゴル、韓国、台湾を訪問し、アメリカそしてフィンランドやリトアニアの人たちとも情報交換をしながら、国際連帯運動によってどのような反原発に向けた運動ができるのか、話し合っています。
まずNNAAとして今年最も力をいれるべきだと考えているのは、11月11日に福島原発事故を起こした原発メーカーである日立、東芝、GEの社会的・道義的責任を問う裁判闘争です。テレビなどで被害の現場を見て精神的ショックを受けた人は全世界どこの国の人であっても原告になれるような裁判にしようと考えています。
メーカーというものは製造物責任という法律(PL法)があって、どんな事故でも責任を取らなければならないのですが、原発に関しては、原子力損害賠償法という法律によって原発メーカーは免罪されています。だから原発メーカーは3・11以降も謝罪をすることなく、どんどんと日本政府の支援によって(それは国の事業として予算化されている)海外輸出を進めようといているのです。今回の安倍首相の訪問で結ばれたUAE、トルコとの契約は全てそのためです。
私たちは上記の原発メーカーの責任を問う裁判を「原発モンスター」裁判と名付けました。どなたでも原告になれ、また原告になることを躊躇される方はサポータになれます。チラシや委任状が完成しましたら、みなさんに見ていただき、原発メーカーの責任について世界に向けて一緒になって声をあげていきたいと思います。ご支援、ご協力をお願いいたします。
また台湾で国民投票の日にちが決定されるのも時間の問題だと思われます。国会にあたる立法府で決定されると1~6か月の間に国民投票の日が決定されます。3月のデモでは22万人の人が参加しました。私たちは台湾の人たちの反原発運動を支援したいと願っています。台湾長老教会と相談をしながら、彼らが4万部を発行している新聞一面に私たちの意見広告を出せればと考えています。日本国内だけでなく、世界中からその意見に賛同する個人・グループを募集するつもりです。その節はみなさんもご参加ください。
韓国は現在でも原発21基と世界最高の密度なのですが、2030年に前大統領はそれを倍増すること、そして世界の新規の原発の20%を取ることを政策として発表したことは前回触れました。新しい大統領がどのような決定をするのか未定ですが、私たちは韓国の脱原発を唱える市民・環境運動体、及びキリスト教や仏教などの宗教団体と協力していきます。先の「原発モンスター」裁判は台湾、韓国においても賛同者を募りたいと願っています。
6月18-23日に、韓国全原発地域訪問ツアーを実施します。21基の原発全てを見て、その地域の住民、反対運動をしている人たちとの交流の場をもちます[vii]。そしてお互いが抱えている問題を話し合いながら、事故の場合の住民の安全な避難計画は作られているのか、そこに住民は参加しているのかなどについて意見の交換をしたいと考えています。日本では原発立地地域での選挙は3・11以降、原発に反対する候補者は全敗です。再稼働を望む保守派に負けています。韓国においても原発立地地域で脱原発の声をあげることは絶望的にむつかしいのです。
当初日本からは15名の参加者を予定していたのですが、20名の希望者が全国各地から現れ、特にその中でも20-30代の青年たちが5名にもなり大いに期待しているところです。
9月には今度は反対に韓国から北海道の泊原発を訪れ、住民や地域活動家たちとの交流をすることになっています。いずれそのような企画は台湾や、モンゴルにおいても毎年実施されるようになると思います。どうぞ、みなさんもご参加ください。
(3)地域から声をあげよう
川崎市では3・11以降、毎日出るゴミの焼却灰が放射線量が高く処理できず東京湾を埋立てた臨海部に積み置きされていました。これは元々は東京電力が起こした事故で、このような高線量の放射線による処理の費用はすべて東京電力が支払うということが原子力損害賠償法に明記されています。いずれこの保障問題が地方自治体でも問題にされなければならないでしょう[ix]。
川崎市は処分地に困り、日本政府の基準以下だから安全だとして、その焼却灰を東京湾(臨海部)の埋立に使うことを決定し、4月末から実際に焼却灰をトラックで運び、海岸で灰による埋立作業を始めました。私たちは、市が実験室のビーカー実験で得た数値に基づいて安全宣言をしてただちに実際の海での埋め立てに使うことに反対しています。最低でも、実験室での実験の後は、海岸で一定の施設を作り自然条件下でも同じ結果が出るのか一定期間試すというのが常識的な科学的方法です。また、現行のやり方以外に他の方法はあるのではないか、そのことを市民と話し合って対案を検討することを申し入れました[x]。
またその埋立地は外洋と壁ひとつで分離されているだけであり、内海の放射能に汚染された焼却灰はその中に埋められていき、放射能を希釈しながらその内海の海水を外洋に放流します。そうすると東京湾にその放射能の希釈された海水が流れ込みます。いくら基準値以下だとしてもそれは生体濃縮・食物連鎖によって濃度は高まり、人間が魚介類を食するのは大変危険なことになるということは、水俣病事件をみても明らかで(当時、水銀の値は同じく希釈されて政府の定める基準値以下でした)、そのような危険なことは事前に止めさせなければなりません。
私たちは、この件は川崎のことだけではないと考えています。東京湾に面する横浜・神奈川、東京、千葉の人たちとも情報を交換し合って、地方自治体に働きかけ、東京湾の放射能汚染の問題に対処できるような連絡会議のようなものを作っていきたいと考えています。川崎では、「放射能汚染を考える川崎市民連絡会議」を作り、市長への公開の書簡をだしています。
再稼働の問題や六ヶ所村での再処理の問題に取り組みながら、自分たちの住む地域はどのようになっているのか、想定外の津波が来た場合どうなるのか、食物や地下水(飲料水)はどうか、ゴミの焼却灰はどのように処理されているのか、これらの問題を地元の議員や政党に委ねるのではなく、住民が自ら立ち上がり行政に働きかけ、議員と企業と一緒になって問題点を探り、解決策を求めることが重要です。これは住民主権であり、民主主義の基本だと思います。
このように自分の足元の問題に取り組みながら、一国では解決できない原発を廃止していくような運動は国際連帯によって取り組もうというのが私たちの考えていることです。情報交換しあいながら、一緒にやれることは立場や主張に拘らず一緒にやっていきたいものです。皆さんのご意見はいかがでしょうか。このような寄稿の機会を頂きありがとうございました。
(崔 勝久 CHOI Seungkoo 連絡先)
Mobile: 090-4067-9352
[i] (月刊『社会運動』398号(2013.5)市民セクター政策機構発行)
[ii]今岡さん、安倍首相のモンゴル訪問の隠された意図を語る
http://www.oklos-che.com/2013/04/blog-post_30.html
[iii]「日本、トルコへ原発輸出」安倍、胸を張る
http://www.oklos-che.com/2013/05/blog-post_4.html
[iv]台湾5日間ー反原発の国際連帯を求めて
http://www.oklos-che.com/2013/04/taiwan-symposium-report.html
[v]偏見に満ちた群衆の横暴さを批判し、朝鮮人を守った日本人を“記憶”するー鄭玹汀
http://www.oklos-che.com/2013/04/blog-post_29.html
[vi] No Nukes Asia Actions (NNAA) 出発にあたって:原発輸出と闘うべき理論的根拠の確認 http://www.oklos-che.com/2012/11/no-nukes-asia-actions-nnaa.html
[vii]韓国全原発地域訪問ツアーに参加しませんか
http://www.oklos-che.com/2013/04/in-6-19-23-2013-19-23-10-15-nnaa-15.html
[viii]脱核(原発)アジア平和のための韓国原発地域、韓日市民ツアー企画案
趣旨:韓国と日本各地域で脱核(原発)運動を展開し続けている地域住民組織、市民団体間の韓日交流を通じて、原発と脱核運動の経験と情報を共有し、交流と連帯に基づいた脱核アジア共同行動を実現するための相互訪問
[ix]焼却灰どうする?~東京湾を放射能汚染から守るために~
http://www.oklos-che.com/2013/04/blog-post_5.html
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