「慰安婦補償協議 外相応じぬ考え」「解決確認」(朝日 5月23日)
岸田外相は旧日本軍慰安婦への補償について、日韓国交正常化時の請求権協定により「解決されたと確認されている。紛争は存在しない」と述べたそうです。しかし岸田外相は、韓国政府の要請は協定3条に基づくことを認めています。そのうえで、2条で「完全かつ最終的に解決された」ので、3条により解決すべき「紛争」に含まれないと表明しています。
この発言こそ、日本のマスコミ、多くの市民がだまされてきた内容を示しています。すなわち、もう「解決された」のに、どうして韓国はしつこく問題だと言うのか、一度は「解決済み」ということに同意したのではないのか?
日韓基本条約の関係諸協定、日韓請求権並びに経済協力協定(1965年6月22日)(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)
第2条
① 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。
第3条
① この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。
② ①の規定により解決することができなかった紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から30日の期間内に各締約国政府が任命する各1人の仲裁委員と、こうして選定された2人の仲裁委員が当該期間の後の30日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその2人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との3人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であってはならない。
③ いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかったとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかったときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが30日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもって構成されるものとする。
④ 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。
岸田外相の言い分は無理です。どうして第3条があるのか、①「この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争」として、第2条に拘らず、問題が起こる場合想定して第3条があることは明らかです。なお、この第3条はあえて日本側から提起されたと聞いています(どなたか、日韓条約研究者の方のご意見をお願いします)。
私見では、第3条の④で、「両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする」とあり、日本政府はそれに従うことを潔しとせず、入り口で議論をしないと言っているのです。
日本の市民の誤解をこの際、解きたいですね。
吉澤 文寿さんからの返信
(吉澤 文寿、新潟国際情報大学 准教授、研究分野;朝鮮現代史、日朝関係史
http://www.nuis.ac.jp/shoukai_old/staff/profiles/nu1211111151051229711997.html)
岸田外相の発言は韓国側の異議申し立てが、第3条の「紛争」に当らないと言うことだそうですが、合意議事録を見ても、そのように解釈できる文言は見当たりません。協定第3条1の「この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする」を素直に読めば、協定の解釈に関する「紛争」が存在することは明らかです。どちらが第3条を提起したかについては、時間がかかりそうですが、これから調べてみます。
重要な論点を整理してくださる記事に感謝します。一昨年の韓国憲法裁判所の決定にあまりに鈍感であった野田政権の振る舞いが、その後の独島・竹島をめぐる抜き差しならない状態を招きました。あのとき、外務省は、最初の一歩を踏み出してもいいと考え始めていたようですが、すべてを野田と玄場がつぶしてしまいました。そして日韓に極右政権が生まれて、ますます厳しい状況になっているわけですね。
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