2013年3月1日金曜日

珍説か新説か、興味深い話を聴きましたー安倍の再稼働宣言を批判します

小川さんの新説
「珍説か新説か」とは大変失礼なタイトルをつけました。まずは反原発の立場の有識者が言えないことを自分は失うものがないのでしっかりと発言すると話された、講師の小川さんの決意を愚弄するかのようなタイトルにしたことをお詫びいたします。

昨日、川崎ミューザでー現代技術史研究会主催の講演会があり、新しく長崎大学工学研究科教授に就任された小川進さんのお話を伺いました。小川さんは放射線と金属との関係を専門にしながら、土木や気象学というように幅広く研究され、東京都や農林水産省にも勤めながら、すべてをなげうってタイでボランティア活動をされたというユニークな方でした。

60歳の小川さんは反原発の旗手ともいうべき小出さんや広瀬さんたちの語る、例えば水素爆発についてもそれは酸素がなければならず、基礎的な科学知識に欠けるという厳しい批判をし、この40年、反原発側の理論が進展していないこと、また反原発の立場の有識者が専門外のことについては誤った記述をしていることを指摘しながら、ご自分の立場と研究方法を話されました。それが初めて聞く話しであり、反原発派の、それでも日本では冷や飯を食わされて来たはずの彼らへの批判がどのような意味で、またどのような射程の批判として語られているのかわからず、戸惑いを表す意味で付けたタイトルです。ご理解をいただければ幸いです。

リスク学の観点から言えば関東で一番がんで死亡する人の数が高いのは、東京であり、次に神奈川と言いながら、海に向けて爆発した1.2.4号基の影響で南北海道から500キロ下の神奈川の沿岸に至るまで汚染されたこと、3号機は内陸部に向けて爆発したが、30キロ圏内で留まったのは1000メートル級の山脈があったからで、チェルノブイリの100キロ県内の汚染を考えると危険地域を30キロ圏内に原子力規制員会が設定するのは根本的に誤り、などなど私たちが初めて聴く話しが多くありました。

爆発後の黒い雲の正体については、すべての放射性同位体を付着したコンクリートや家屋の粒子であり、モニターはその一定の大きさのものしか測定できず、重い粒子は先に落ち、軽いものは風に乗って遠くに行くということです。しかし福島は震源地から30キロのところに山があり多くはそれが壁になって30キロ範囲内に落ち、越えた粒子は軽いもので量がすくなったことが幸だったそうです。


その放射性同位他を付着した粒子は地上に落ちると地下に潜りこみ地下水に流れ込むので首都圏の地下水を水道水にすることは大変危険であったそうです(にもかかわらず石原元都知事は安全宣言をしたそうですが)。山の手前に落ちた粒子は地上に落ちて放射線をばら撒くので、80%山林の福島ではいくら家屋や道路を除染をしても森林に付着した放射性物質が次から次と流されて来るので、永遠に除染できないと断定していました。

小川さんの基本的な認識はもうそのような地域で人は住むべきでないという認識に立たれているように思いました。

その粒子は風向に沿って一定方向に進むのでなくなんと、摩擦抵抗が少ない国道や新幹線に沿って降り落ちるという説明でした。モニターで関知される粒子はわずかで、多くは地下に浸透し、関東圏の地下水は飲料水にはもはやならないということです。例えば今でも水俣の海水は測定すれば水銀が検出され、広島・長崎も同様に地下水に放射性同位体が検出されるそうです。


また電気は福島や新潟から東京に送られ現地では使われていないような報道の仕方に対して、福島や新潟、青森の人口から計算すると基本的には現地で消費されているのではないか、利根川の水が東京に実際には来ていないのと同じで(ご自分の都の水道局で働いた経験から)、何かそこにからくりがあるのではないか、というお話しでした(もう少し詳しくコメントに記しますので、参照ください)。

またSPEEDIは今回は人為的なミスで機能しなかっただけで役に立つことは折り紙付きということになっているが、放射性物質が様々な大きさの粒子に付着して飛来するので、事故現場の温度や爆発の実態という重要な情報をインプットしないとSPEEDIはそもそも機能しないという説明でした。

その他、使用済み核燃料の最終候補地は国は既に綿密な調査を進めており、最適地は岩手県の遠野であるということは、日本では知っているひとはほとんでいないという情報も披露してくれました。ただし、勿論、そこが実際に選定され、地方自治体の賛同をえられるのかどうかはまったく別問題です。

最後にどんな偉大な学者、運動に貢献してきた学者だからといってその権威や世間の評価に盲信・盲随せず、市民感覚で話し合い問題点を探ることが重要だという小川さんの主張はその通りだと思います。小川さんのご意見がすべて正しいのか、それもまた仮設である以上、お互い謙虚に自説を公にして相互批判しあうことが運動にとっても必要と感じました。

川崎のことに関して言うと、ゼオライトで放射性物質を取り除こうという川崎市の焼却灰の処理方法について質問しましたが、完全に取れるとはとても言いきれないと断定されていたので、私たちもこの春から埋立地を放射線量が高い焼却灰で埋めるという市の方策が安全なのか、東京湾への影響はないのか、小川さんからアドバイスをいただきたいと思いました。


安倍首相の施政演説を批判する
「東京電力福島第一原発事故の反省に立ち、原子力規制員会の下で、妥協することなく安全性を高める新たな安全文化を創りあげます。その上で、安全が確認された原発は再稼働します」これが安倍首相の再稼働に関する見解です。しかしここには、住民の安全を最大限保障するという考えが全く見られません。


運転中止中の原発周辺の住民は安全なんでしょうかー脱原発運動の取り組む課題について
http://www.oklos-che.com/2013/01/blog-post_29.html

福島の事故の原因は何であったのか、不可抗力の津波のせいであったのか、地震による配管の損傷であったのか。このことを調査すべく国会調査委員会は作られたはずなのに、東電は暗くて見えない、危険だなどと嘘を言ったことが明らかになったのですが、これに対しても言及はなく、展望は全く見えません。地震による配管の破損は小川さんから言わせば当たり前のことで、震度5-6でほとんどの建造物は崩壊するというのです。

ましてや放射線同位体をすべて運ぶ粒子は国道や線路に沿って移動するということになれば、福井や浜岡を含め他の原発立地地域においても住民は避難ができないのではないか、
しっかりとした避難計画、避難先の準備など万全な対策をとって初めて安全と言えるのであって、安倍首相の再稼働宣言はまず原子炉の自分たちで設定した安全基準に合格すればいいという、住民の安全を無視したものです。

安倍首相は70%台の支持率にまで上がったようですが、要危険人物です。私たちは総合的に彼の目的と対決しなければならないでしょう。

3 件のコメント:

  1. Tさんからのメール

    早速昨夜の講演会をまとめられているのですごいなと感心しております。ありがとうございます。

    小川進さんはかなり自己意識(自己愛)の強い方なので私はかなりの違和感を彼そのものから受けながら話を聞いてましたが、話した内容はほぼまっとうと思ってます。
    彼は40年間反原発の理論的レベルは旧態然として進歩していないと言われてましたが、その言葉は彼も含めて自分自身に突き刺さってくるものだと思います。
    崔さんが要約してくれた文章への私の意見、感想は下記の通りです。

    「福島は永遠に放射性物質を除去できない」(崔)に対して;
    コンクリートやアスファルトなどの道路はある程度除染可能と言ってました。山林、田畑の多い福島でははほとんど出来ないと、私も思います。

    「福島の電力は東京に来ていない(?)」(崔)に対して;
    福島の電力消費量と福島での原発発電量からの推測でした。こういう視点で考えたことがなかったので、実際福島原発の電気が東京にきていなかったのかどうか要チェックと思います。

    「癌による一番多い死亡者は確率論的に東京、次に神奈川」;
    人数で言うならばその通りだと思います。線量と癌死亡率と人口の掛け算ですから。広瀬さんも同じことを言っていたかと思います。

    「SPEEDIはまったく役に立たない等など」(崔)に対して;
    まったく役に立たないとは言っていなかったと思います。
    初期値入力(温度、線量)が出来ない、多くの核種を一括に取り扱えないなど4つの理由を挙げてました。
    信頼性については以前から?ですが、しかし限界はあるとはいえ、手探り状態の事故の初期段階で一つの予想として取り扱うことについて意義あるものだと思ってます。

    「しかし一概に珍説と破棄できない科学的な論拠に基づく
    仮設であり、今後長崎に行かれてどのような活動をされるのか、注目したい。権威に頼るな、市民の自分の頭で考え議論せよ、それは限られた専門分野のことしかわからない著名な学者の講演を聴くより意味がある、とのこと。一理あり」(崔)に対して;
    われわれ市民レベルでも勉強しなくてはと思ってます。
    珍説はなかったのではと思ってます。

    以上です。

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  2. そうですね、ひとつの仮説であり、それなりの根拠を示されているのですから、珍説は失礼ですよね(笑)。本文にも書きましたが、それほど小川さんのお話に当惑したということです。

    福島から電力は来ていないという言い方が既に挑戦的ですね。開沼博の「フクシマ」論によると、国内植民地として福島は戦後、米や石炭、人力を都会に供給させられてきたというこの間、通説になっていることを否定するのですから。

    そもそも福島の原発は東京への供給用に作ったのではなかったのか?それはそうだとして、今は福島県ですべて消費しているというのであれば、それは福島の稼働している原発の全供給量を知ればわかります。

    それに止まっている原発の供給能力を知れば、私は首都圏への供給はもともと意図されていたことだし、福島から東京に電力が来ているということは当然だと思いますよ。それと青森も新潟も全部その地で消費されているというのは信じられません。それを証明するには、いつからそうなのかの証明が必要です。

    また首都圏の電力は首都圏内の火力発電ですべてカバーしているというのは事実でしょうか、どのような事態でも圏内の発電所の供給で間に合うのですか、リニアができても?

    つまり彼は反原発側のステレオタイプな認識、物言いにクレームを付け、原発立地地域でも電気を大量に消費しているという当たり前のことを言っただけではないのでょうか。また小出さんたちが神様みたいに扱われているが、長く助手をしているということは後輩の機会を奪っているという、わたしたちが考えてもいなかったことを言っただけ、または水素爆発についての誤った認識をもっていたということを指摘をしただけ、どうもそんな感じがします。

    それと彼は道路などの放射性物質の除去もいくらやっても山林から来るものでまた汚染されるので、際限がない、それは永遠に続くので、毎年一兆円使うよりは、残っている人に一億円払ってでも立ち退いてもらった方がいいと言ったんですよ。そもそも福島は人が住める場所でなく、一日もはやく立ち退いた方がいいという認識の上です。

    しかしこれは本当に実現はむつかしいことです。本来なら原発を押し進めてきた国家と東電が全責任をもって被害者の要求に無条件に応じれば可能かもしれません。しかし事態はまったく逆になってますね。

    砂が放射性物質をすべて付着して運んだなど、このてんはSPEEDIはおりこんでおらず実際上役に立たないという、極めて理屈に合う主張をされてるので、私はしっかりとフォローしたいと思っていますよ。特に川崎市が焼却灰を埋め立て地に使うということが理論面で安全を保障するものでない、あるいは保証するものなのかお聞きしたいと思っています。

    それではまたどこかの会場でお会いしましょうね。

    崔勝久

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  3. 崔さま 昨日の現代技術史研究会主催の小川進さんの講演会のまとめありがとうございます~。

    私は小川さんはお会いしたことがないですが、現代技術史研究会の本)徹底検証 21 世紀の全技術』藤原書店http://p.tl/nXF9 が2010年に発売になった時、欲しかったのですがビンボーで買えなくてそのままになってて、たしか、その本の編集は井野博満先生だったなあ、と思ってたので、ああ言った立派な本を出すような会の方が主催で呼ばれる講師の方の話は聞いてみたかったのですが、チェックが甘く、講演会を知ったのが当日だったので都合がつかず、残念だったです。

    で、崔さんのレポートでいくつか気になったので質問すいません。良かったら教えて下さい。

    小川先生のプロフィールを検索していまいち専門がわからなかったのですが、大学では『小川 進 教 授 リモートセンシングとGISによる応用研究 』と言う研究をなさっているということは、リモートセンシング とは対象を遠隔から測定する手段って今検索かけたら書いてあったので、何らかの方法論で、汚染の広がりの情報を持っている方と思ってよろしいのでしょうか?(どういう手法なのかプチメカオタクな私は個人的には気になりますが、今回は、まぁ、質問からは省きます)

    以下質問です。

    >60歳の小川さんは反原発の旗手ともいうべき小出さんや広瀬さんたちの事実>認識について厳しい批判をし、反原発側の理論が進展していないこと、専門外>のことについては誤った記述をしていることを指摘しながら、ご自分の立場と>研究方法を話されました。

    1.小出さんと広瀬さんの事実認識の批判とは一体どういう事をさしますか?彼らがどう言ってることが間違ってると小川さんは言っているのでしょうか?具体的にお願いします。

    2・専門外では誤った記述をしているとはどういった事実があるのでしょうか。

    広瀬さんは、確かチェルノブイリ後の時も反原発の科学者から非科学的というレッテル貼りをされ運動内から攻撃を受けて相当大変な思いをした、その事が運動を小さくさせてしまったという経緯あるとチェルノブイリ前後から反対運動をしていた人から聞いたことがあります。私自身は広瀬さんが全部全く正しいとは思いませんが、重箱の隅をつつくような専門的な話で運動を潰してきた結果が、反原発運動の広がりを妨げたものだと感じています。

    私自身も専門家ではなかったので力いっぱい地震で原発は爆発すると運動内でも言えない時があったのですが、結局原発はあんな無様な格好で爆発してしまいました。推進派の科学者はおろか、反対派の理系の人たちに裏切られたと正直感じています。原発反対運動内における専門性、科学とは一体何なのか。と思っています。

    ですので、是非そこはお手数ですが、詳しく教えて下さい。


    >リスク学の観点から言えば関東で一番がんで死亡する人の数が高いのは、東京であり、次に神奈川と言いな>がら、海に向けて爆発した1.2.4号基の影響で南北海道から500キロ、神奈川の沿岸は汚染されたこ>と、3号機は内陸部に向けて爆発したが、30キロ圏内で留まったのは1000メートル級の山脈があった>からで、チェルノブイリの100キロ県内の汚染を考えると危険地域を30キロ圏内に設定するのは根本的>に誤り、などなど私たちが初めて聴く話しが多くありました。

    3 確かに汚染の広がりを考えれば危険地域が30キロ圏内と考えるのは間違いだと私も考えていましたが、運動内では30キロ圏内で想定されてたのでしょうか?(そこの方が私は初耳だったのですが)

    4 現在は癌死以外のリスクもあるのではと言う風にネットの風潮はなっているような気がしていましたし、私もそう考えていましたが、その辺はどうおっしゃってたのでしょうか?


    >爆発後の黒い雲の正体については、すべての放射性同位体を付着したコンクリートや家屋の粒子であり、そ>れが地上に落ちて放射線をばら撒いているので、80%山林の福島はいくら除染をしても永遠に除染できな>いと断定していました。

    5 3号炉の爆発については、核爆発だと言う話はあったのでしょうか?核爆発ではない。と言う事を言うために、黒い雲の正体について述べられているのでしょうか。除染は無理。って言うのは同意です。


    >福島は永遠に放射性物質を除去できない、福島の電力は東京に来ていない(?)。

    6福島の電力は東京にきていないというのは事故後の話をおっしゃってるのでしょうか?

    又どういった文脈の中でのことなのでしょうか。東電には火力があって、あんな事故があっても尚福島は東京から搾取されてると言っている人がいました。
    広野火力です。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E9%87%8E%E7%81%AB%E5%8A%9
    B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80

    これは東京に送られていないのでしょうか?又これが福島原発のためにある火力だとすれば、やはり東京のために使われているのではないかと思いますがいかがでしょうか。


    >権威に頼るな、市民の自分の頭で考え議論せよ、それは限られた専門分野
    >のことしかわからない著名な学者の講演を聴くより意味がある、とのこと。
    一理あり。

    一番最初の方に 『反原発側の理論が進展していないこと、』と、ありましたが、そこはまぁ、そうなのかなと思っています。私が一番感じるのは、専門家の使い方が間違ってると思う点です。専門家を運動のカリスマに仕立ててはいけない。と思います。カリスマや、特定のリーダーを作る運動は間違ってると考えます。(脱原発川崎ではそういう事はないと思っていますが、まぁ、原発に反対する方々の中にはそういう場面もあるのは見ています。)そういう意味では、広瀬さんや小出さんを反原発リーダーに仕立て上げたら、目立つ人ばっかり矢面にたてて、批判させて、疲弊させるのにはリスクが多すぎます。

    そういう意味での小川さんの、広瀬・小出批判・運動批判なら、わからんではないような気がするのですが。

    上記の私の意見は余談ですいません。で、質問ですが、

    それで、
    7 小川さんの言う反原発の理論の進展とはどういう事を指しているのでしょうか?又は崔さんがどういう事を指していると読み取れましたか?そこを教えて下さい。


    7つも質問すいません。

    お時間あったらでかまいません。
    よろしくお願いします。

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