何冊かの参政権に関する本と、論文を読みましたが、私は近藤敦の『Q&A外国人参政権問題の基礎知識』が一番簡潔に書かれていると思います。ただ気をつけなければいけないのは、この本の出版時には法案は北朝鮮の排除は明記されていなかったのですが、今回の法案には、国交のない国を対象にしないという口実で、韓国籍以外の「在日」は適用外にしています。近藤さんは以下のように説明されています。
>執筆時に念頭に置いた2000年の法案では、排除要件がなかったように思います。
>http://www.dpj.or.jp/news/?num=10952
> http://www.dpj.or.jp/news/?num=10950
> もちろん、現在、検討されている法案には、排除要件があることは、近年の報道の通り
>だと思います。
気をつけて見てみると、明石書店から参政権に関する本が多いですね。改めて会社の姿勢を評価すべきだと思いました。この本を購入されるのが一番いいのですが、本の内容を抜粋してみなさんに「基礎知識」をお知らせします。
(1) 最高裁は、永住外国人の地方参政権を認めているのですか?
参政権に反対するHPは随分と多く、「在特会」を始め、「外国人参政権に反対する会・公式サイト」(http://www.geocities.jp/sanseiken_hantai/)があり、それだけを読めば、憲法論の展開があり、気をつけないと妙な説得力があります。近藤さんの本としっかりと読み比べ自分で考えることをしないと相手の国民国家論、ナショナリズムに巻き込まれます。だから「在特会」が怖いのは、多くの人にとっては、あんな極端な右翼は嫌いと言うでしょうが、彼らの憲法論を展開しながらの国を憂う国民国家論は恐らくストンの心に沁みる可能性があるのです。
ここでまず近藤さんは、第一のこの質問から説き始めます。
反対論者は、最高裁の判決で外国人の参政権にふれた部分は傍論で、本論では参政権を否定していると言います。1995年の最高裁判決は、本論において、「我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない」とあり、傍論では補足で、永住権者等に、「法律を持って、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講じることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生じるものではない」と記しています(最判1995年2月28日民集49巻2号164頁)。
憲法解釈には、「要請」「許容」「禁止」の3通りがあるのですが、「禁止」は文字通り憲法が禁じているということ、「要請」は憲法が要請している、即ち認めているということであり、「許容」はそのどちらでも違憲ではないということになるのです。この「許容」説を今回の問題に則して言えば、永住者に参政権を認めても認めなくとも、そのどちらも違憲ではないということになります。それは国会が立法政策の判断をすればよく、そのどちらの判断でも合憲である、ということなのです。
鄭香均の東京都を訴えた最高裁判決では、東京都が国籍を理由に外国人を管理職試験を受けさせなかったことは違法ではない(=他の自治体が受けさせる判断をしてもそれはそれで違法ではないということでもあるのですが)ということになりましたが、その傍論では彼女の主張に一定の評価をする意見もあります。しかしそれは判決とは関わりがないと言われます。しかしこの参政権の場合、訴えた個人の権利を否認する結論を出しながら、傍論においては立法改革の必要性、可能性を国会に示す判決は、他の制度改革を目的とした訴訟では例があるそうです。だから一概に傍論だから、拘束力をもたないというような乱暴な主張ではないということでしょう(1992年の台湾住民元日本兵戦死者の損失補償請求事件など)。
参政権反対論者は、最高裁判決の本文で、「付与することは許されない」とあるので、憲法上、外国人への参政権は禁止されていると誤読しているのです。これは「許容」説という憲法学説からすれば矛盾した判決ではなく、むしろこれまでの消極的な判決からすれば、まあよくやったというのが近藤さんの意見です。私もそう思います。だから、今回の政府案としてだされる外国人の地方参政権法案は、傍論に乗っかっているといって、決して違憲ではなく、憲法上の解釈においても問題があるということではないのです。
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