2015年11月29日日曜日

次は、被告日立に対する裁判所を通した公的な質問です。

今回は、原発メーカー日立の抱える問題について、東京地裁に質問をしました。残念ながら民事においては、原告が被告に直接質問することは認められていなくて、裁判所に、「求釈明書」なるものを提出し、裁判所から被告にそれらの質問に答えてもらうというやり方をとるしかありません。
しかし仮に被告メーカーが私たちの質問に答えなくても、私たちが各メーカーにどのような疑問をもったのかということは公的な文書として残ります。だから私たちは、彼らへの疑問を公開します。読者の中からさらなる疑問がだされれば、それを追加の「求釈明書」として東京地裁に提出し、さらにその内容を世界的に公表していきたいと思います。

東芝の不正問題、過酷事故の責任問題等について裁判長に質問書を提出しました

http://oklos-che.blogspot.jp/2015/11/blog-post_14.html

02015年(ワ)第2146号 原発メーカー損害賠償請求事件
 原告 朴 鐘碩、崔 勝久
 被告 株式会社東芝 ほか

2015年(ワ)第5824号 原発メーカー損害賠償請求事件
 原告 朴 鐘碩、崔 勝久
 被告 株式会社東芝 ほか



             求 釈 明 書(1)

                   2015年10月18日

東京地方裁判所民事第24部合議D係  御中

                       原告    朴 鐘碩
                       同     崔 勝久


 原告らは、以下のとおり求釈明を行います。

1.    被告GEジャパンについての求釈明
2.    被告東芝についての求釈明
3.被告日立についての求釈明
(1) 企業としての道義的、社会的責任(CSR)について
被告日立は、1970年国籍を理由に朝鮮人青年(本件原告・朴鐘碩)の採用を取り消し、民族(就職)差別事件を起こしました。日立の民族差別への抗議は、日本だけでなく国境・民族を越えた国際的な人権運動に拡がり、横浜地方裁判所裁判官は、民法90条に違反すると判断し、原告の勝訴が確定しました。この日立就職差別裁判闘争勝利は今も、公立学校の教科書に記載され、人権運動の歴史に刻まれています。判決から5年後の1979年、日立は「あらゆる差別をなくし」、人権を擁護する企業グループ・東京人権啓発企業連絡会(人企連)に加盟しています。また、環境保護を謳っています。
3・11福島第一原発事故は原発立地地域の住民のみならず、「不安」と「恐怖」で世界中の人々の基本的人権を侵害するものであることは既に述べた通りです。被告日立が設計、建設、メンテナンスしてきた原発が事故を起こしたのですから、事故の原因究明とその責任が問われるのは当然ではないでしょうか。
原発の安全神話が唱えられてきましたが、実際に過酷事故が起こるとさまざまなことが明らかにされました。使用済み核燃料の処分は決まっていない、処理できない大量の汚染水は海洋に流され環境を汚染している、事故によって地元住民は、被曝して健康への悪影響をうけ、避難させられ、家族の絆を引き裂かれ、自然・土地も破壊され、食の安全も脅かされています。
被告日立の謝罪の言葉がないのは、明らかに企業としての道義的、社会的責任(CSR)に反します。被告日立の会長、社長はじめ経営陣から過酷事故を防げなかったことに対する謝罪と企業としての道義的、社会的責任についての誠意ある見解を求めます。

(2)契約関係について
1.被告日立が主契約者になったときの米GE社の役割は何でしょうか。被告日立と被告GEジャパンとの契約はどのようになっているのでしょうか。JPDRの原研と米GEとの契約のように、被告日立と被告GEジャパンの役割は明記されていなかったのでしょうか。シビア・アクシデントの可能性はゼロではないと認識していたのであれば、両社の契約において過酷事故に際しての責任の所在、新たな費用についてはどのように記されているのでしょうか。
2.被告日立が米GEにライセンス料を払わなければならない技術は何ですか。ライセンス契約の内容、金額、期間、支払い方法(一括アドバンスか、年払いか)はどのようになっているのでしょうか。これは総建築費の中に含まれ、電気料金の中から支払われたものであり、電気需要者としては知る権利があります。総建築費の内訳の公開を求めます。
3.現在運転が休止した状態でもライセンス料は発生しているのでしょうか、定期休止の場合との違いは何なのでしょうか。
4.被告日立が主契約者になった4号機の建設・運転・メンテナンスの過程において、細かな故障その他のことで米GE社及び被告GEジャパンの手助けをうけたことはありますか、その場合の費用は別立てでしょうか、その場合の費用も総建築費の中に含まれているのでしょうか。またそれはどこで確認できるのでしょうか。
5.被告日立は米GE社との提携を深め、2007年に米国のゼネラル・エレクトリック社と日立製作所によって日立GEニュークリア・エナジー株式会社(以下、日立GEとする)が設立されていますが、2011年の事故以降、日立GEと被告日立との業務上の関係はどのようになっていますか。
6.被告日立が海外に原発を輸出してきたこれまでの実績と今現在進行している案件、今後の予定(国名、台数)を明らかにすることを求めます。被告日立は英国で始めたように、鉄道や集合住宅の建設と合わせたインフラ事業として積極的に原発輸出を推進していく方針なのでしょうか。
7.被告日立の原発輸出に対してリトアニアの国民は国民投票で2012年に62%が反対の意思表示をしました。それにもかかわらず、被告日立は原発輸出を断念することなく、リトアニア政府への働きかけを続け、「2014年内にリトアニア政府とビサギナス原子力発電所建設計画の事業会社を設立すると発表」しました(日刊工業新聞 2014年7月31日 http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0320140731bjbk.html)。被告日立は国民投票の結果をどのように捉えたのでしょうか、市民の民意に応えなかった理由は何ですか。
8.日印原子力協定を締結することが両国で検討されていますが、インドはNPT(核不拡散条約)に未加入で原爆実験の実行も公言しています。そのような国と日本政府が協定を締結した場合、被告日立は原発が軍事利用される可能性があることをわかった上で入札に参加するのでしょうか。インドでは原発建設に際して市民の権利が侵害されることが多く、市民の原発反対運動が激しく展開されていることをご存知でしょうか、その点に関する配慮は一切されないのでしょうか。

(3)販売を支える金融システムについて
9.発展途上国へ原発輸出をする場合、購入資金に関しては被告日立が日本の保証会社と提携して日本の金融機関が貸出し、保証会社が保証する仕組みになっているのですが、それぞれ金融機関と保証会社を明らかにすることを求めます。金融機関と保証会社の海外企業に対する融資及び保証について、そのあり方が問題になった場合、被告日立はどうするのでしょうか。
10.もし原発輸入国の事情で原発計画が中止になった場合、国が関係する保証会社であれば、その損金は税金で支払われることになりますが、事前に日本の納税者に説明する義務があるのではないでしょうか。プロジェクトを進めてきた被告日立に責任はありませんか。
11.金融機関も保証会社も現地の市民の反対があったときには、貸出及び保証はできないという定款があるはずです。また、原発輸出に日本の金融機関及び国が関与する保証会社が関与することは、世界銀行や国連の動向と反するのではないでしょうか(1128 AFP】世界銀行(World Bank)と国連(UN)は27日、最貧国に電力網を整備するため数十億ドル規模の資金援助が必要だと訴えるとともに、いずれの国においても原子力発電への投資は行わない考えを表明しました)。

(4)現在の原子炉からの放射性物質の漏れについて
12.3・11の津波・地震による原発事故以後、放射性物質は原子炉の配管等から漏れていることは東電の資料などから推定できますが、被告日立はそのことを認めますか。漏れているのなら場所は特定できているのでしょうか、その分量はどれほどだと想定していますか、放射能汚染水が地下水と混じるルートは特定できているのでしょうか。
13.被告日立として事故収束工事に技術支援をしているのか、説明を求めます。現在引き続き原子炉から漏れている汚染水対策に従事している被告日立の技術陣の数は何名でしょうか。それはどの部門で、どのような作業に関わっているのでしょうか。危険な区域で人間が入れないというのであればロボットの開発をしているのでしょうか。もし何もしていないのであれば、その理由は何かお知らせください。
14.原発事故現場の収束工事は、容易ではありません。収束工事に関わる技術者、労働者は被曝を避けることはできないからです。被告日立の正規労働者、現場労働に携わっている下請、孫請労働者などの被曝労働の実態、契約条件、被曝予防策を示す書類の提出を求めます。
15.パートナーである米GE社あるいは被告GEジャパン、及び東電と放射性物質の漏れについて具体的な協議をしましたか。地震による放射性物質の漏れが続いていることに対しては原子炉の基本設計・建設をした米GE社にも責任があるのではないでしょうか。両社の契約において、シビア・アクシデントの責任の取り方についてどのように明記されているのでしょうか。放射性物質の流出防止のための新たな投資が必要な案件に対して協議をしていますか。
東電との間の原発建設に関する契約書、保証書及び収束工事に関する契約書の提出を求めます。特に収束工事における相互の役割を示す書類の提出を求めます。

(5)シビア・アクシデントについて
16.米GEが設計したマークワン型は圧力抑制室の大きさや、使用済み燃料プールが耐震設計になっていない設計上の欠陥が指摘されていますが、そのことを被告日立は認めますか。
17.設計段階において、事故が起こった4基の原発は本来40メートルの高台の上に建設される予定でしたが、10メートルの高さにまで削った理由は何でしょうか、具体的な説明を求めます。その計画は誰が発案したものだったのでしょうか。
18.仮に東電であった場合、被告日立は10メートルの津波がくることを予想していなかったのでしょうか、津波のくることを考慮して設計上、何か特別なことをしましたか。設計当時の知見では地震・津波の知識がなかったとしても、その後の知見で危機感をもち、具体的な対応策をとったのでしょうか、そのアドバイスを東電にすることは事故防止のためにとるべきメーカーとして当然の責務ではなかったでしょうか。
19.軽水炉の最大の弱点は、たえず発熱する原子炉を一定の限られたスペースの中でできるだけ配管を延長するように設計して、配管の中を通した水で冷やし続けないといけないということです。3・11事故当時、冷却設備が機能しなかった結果をどのように総括しているのでしょうか、それに対処できる技術は現在完成しているのでしょうか。原子炉の過酷事故においてもっとも重要な安全装置であるECCS(緊急炉心冷却系)がどのような状況でも有効に機能するのかをそもそも実証実験をしましたか、それとも米GE社の説明を信頼したのでしょうか。
20.実際に想定されていた規模の地震に対応できなかったのは、そもそもそのような対応を必要と考えなかった被告日立及び(或いは)米GE社の責任なのでしょうか、あるいは米GE社及び(或いは)被告日立の設計ミスなのでしょうか。被告日立に全く責任がなく、全て米GE社の責任であるとしても被告日立は米GE社あるいは被告GEジャパンにライセンス料は払い続けるのでしょうか。
21.原子炉の弱点、問題点を誰よりもよく知る原発メーカーとして東電に対して危機対策、及び住民への避難計画についての対応を助言してこなかったのでしょうか。
22.事故と直結する原子炉の温度管理のソフトウェアは被告日立の独自開発ですか、米GE社か、外部の会社(米GE社は例えばIBMなどに発注していたのでしょうか)、そこには過酷事故に対するマニュアル及び責任の取り方については契約を含め、明確にしているものはなかったのでしょうか。もしないとすれば、廃炉になるまでメーカーとしての対応をするのは当然ではないですか。それは原賠法の免責事項の存在とは関係なく、メーカーの道義的・社会的責任(CSR)ではないでしょうか。
23.4号機における両社の役割分担の実態、特に使用済み燃料プール設計の責任はどちら側にあったのでしょうか。配管、バルブ内部を通過する蒸気の流れを調整するプラグはすべて被告日立が開発し発注したものですか、あるいは米GE社あるいは被告GEジャパンがしたのでしょうか。それらが機能しなかった責任はどこにあるのでしょうか。部品の設計、発注、品質管理における米GE社あるいは被告GEジャパンの役割は何であったのでしょうか。



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