2015年9月16日水曜日

憲政会館で話した、「広島・長崎の地であった悲しい出来事」ー国際連帯を求めて

昨日は安倍打倒の叫びがうずまく国会のすぐ横にある憲政会館で、「憲政の神様」尾崎行雄とゆかりのある「学堂会」のお招きで『日韓のはざま・在日の視点から見える世界』というタイトルで話をさせていただきました。

講演の内容の要約

外国人としてはもっとも日本を知り日本社会と密着して生きている「在日」であるがゆえに、日本人からはよく見えない存在であっても、「在日」であるがゆえに見えるところがあるという話しをしました。

そしてよく言われる、(戦争や原発事故において)被害者として自分たちを位置付けながら、外部から加害者であることを指摘され居座りが悪い感覚を持つ人は一体、この問題をどのように考え、どのように行動すればいいのか、ということを率直に話しました。


韓国の著名な歴史学者の韓洪九(ハン・ホング)教授からのお話です。

私が最初に話したことは、「広島・長崎の地であった悲しい出来事」です。これはつい最近、私が釜山に行ったときに被爆2世についての集会で知ったことでした。強烈なショックであり、また同時に何か心の底からふつふつと湧き上がるものを感じさせる内容でした。話し手が、韓洪九という著名な歴史学者でなければ私はその話をまともに受け止めなかったかもしれません。

彼もまた、その話を聞いてから、韓国における被爆2世の問題に真剣に関わるようになったという説明をしていました。この話は広島・長崎で被爆した朝鮮人が帰国し、そこで広まった話だということです。私は帰国して在外被爆者救済運動を長くやってこられて市場淳子さんに念の為に電話で確認をしたところ、同じ話をされていました。その記録をまとめた報告書をなんとか入手したいと思っています。みなさんのご協力をお願いします。

在外被爆者及び被爆者2世の問題

つまり広島・長崎で被爆した朝鮮人は長く外国人だという理由でまったく日本政府の責任による援助・救済がなかったのです。そこで日本に密航してきた被曝者たちが裁判を起こし、何度も何度も負けながらやり続け、ついにその治療を受ける権利が承認されるようになりました。その間、市場さんのような日本人の献身的で地道な活動があったからこそ実現されたのです。そしてつい先月、海外での治療費の支払いを拒んでいた日本政府はそのことも撤回しました。これで海外の被爆者もようやく国内の被曝者と同じ待遇を受けるようになったのです。しかし70年、かかってますね!

しかし忘れてはいけない問題、これは北朝鮮に帰国した被曝者の問題です。彼らは日本との国交がなく、日本政府からの一切の支援を受けていません。植民地支配の清算(精算)がなされていない例のひとつにいずれ浮上するでしょう。

そてもう一点、被曝2、3世の問題です。この点は日本政府も韓国政府もその存在を認めていません。科学的な証拠がないという理由です。しかし韓国ではその実証より救済を、ということで制定化の動きがありますが、これもなかなか遅々として進んでいないようです。

しかし実生活において貧困、差別、苦痛に苦しむ被爆2世の証言は誠に生々しく、ずっしりと人の心を打ちます。彼らは日本人の被曝2世との連帯を求め、自分たち同じ目にあわせてはいけないということで、原発廃止を求め、そして自分たちの被爆の苦しみを与えた最大の責任者としてアメリカ政府の責任に目を向けます。

韓国の被爆2世からの心打つ、未来に向けたメッセージ
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/07/blog-post_23.html

「広島・長崎の地であった悲しい出来事」とは何か

ここからが私のいう「広島・長崎の地であった悲しい出来事」です。韓教授によると、広島・長崎で被爆した人は70万人、そのうち朝鮮人は1割の7万人で、そのなかで4万人が死亡したそうです。私は朝鮮人の死亡者数までは知りませんでしたが、7万人の被曝者がいたことは知っていました。しかしそれにしてもどうしてそのうち、4万人もの死亡者がでたのか、その割合は日本人被爆者に比してあまりに高いではないか?

被爆し路上で倒れる多くの被爆者のなかで、朝鮮人は「水がほしい」「痛い」「助けて」ということを朝鮮語でしぼりだすかのような声で助けを求めたのでしょう。しかしお水やおにぎりは彼らには渡らず、そして病院に運ばれなかったがゆえに、それほど多くの朝鮮人が死亡したという話です。

私は帰国後、この話を妻に言ったら、私のような活動家でない彼女は黙ってすっと涙を流しました。そうです、直截的な怒りより、まず悲しかったのです。そしてそのあとに、なんともやりきれない怒りがふつふつと湧き起こってきたのでしょう。おそらくこの話を聞く韓国人、そして「在日」は同じような対応をするんだと思います。

日本社会はこの事実を確認し、しっかり受け止める必要があるのではないか。

今年は日本のマスコミでも戦後70年ということで、被爆された方々の新しい事実を公開していました。しかしこのような「悲しい」出来事があったことは未だに報道されていません。今ならまだ間に合います。当時のことを経験した人が生存しているはずです。いくら残酷であっても、悲しくとも、この事実を発掘し、そして事実、日本人の被害と残酷な「加害」があったことをあきらかにしていくことが必要だと私は痛切におもいます。

考えてみると、関東大震災時、朝鮮人数千名が虐殺されました。それが1923年(大正12年)です。それからわずか30年ばかりしかた経ってない日本で、広島・長崎で起こった「悲しい」出来事がまったくありえない、ということはなかったということでしょう。

加害者性の強い自覚と責任は、被害者からの徹底した加害者の責任を追求する中から生まれるのではないか

私はこの話を福島の原発の問題と同じようにとらえるのです。もちろん、16万人もの人が福島原発によって故郷を離れざるをえなくなった、このことは絶対に許されることではありません。未曾有のこの事故は、その悲惨さをいくら強調しても強調しすぎることはないでしょう。しかし日本は同時に3・11直後から、原発事故の原因もわかならいのにアジアへの原発輸出を始めたのです。ベトナムに売り込んだのは菅直人氏です。

日本が原発を最初に売り込んだ先は台湾だったのですが、その原発への反対運動が起こったとき、どうして日本は再稼働反対だけでなく、現j発輸出反対の声をあげられなかったのでしょうか。日本の運動は一国平和主義的であるという歴史的な弱点を持っています。敗戦後、日本の植民地支配の問題を徹底して追求できなかったのです。その根は実に深いと思います。

「広島・長崎の地であった悲し出来事」で書いたように、本当に加害者として自覚、強い意思が生まれるには、被害者が自分たちの蒙った悲劇を作り出した組織・責任者への徹底した責任追及があるなかで生じてくるということを私は、オバマ大統領に謝罪要求の手紙を出した広島平和団体からの手紙から私は学びました。

私は国際連帯に夢を託します。福島事故は「人災」です。原発体制とはなんであったのかの徹底した分析と、その責任を追求して、二度と原発事故のおこらない社会にしなければいけないのです。
その社会は、またいかなる差別も許さない社会であるはずです。

広島の平和団体からオバマ米国大統領への手紙
http://oklos-che.blogspot.jp/2014/03/blog-post.html

8 件のコメント:

  1. トルコから久美子の手紙2015年9月17日 6:09

    憲政会館での講演の内容を教えていただきありがとうございました。8月私は日本に帰国した際、「少年T」のヒロシマ・ー今伝えたい真実の叫び:田邊雅章著 (第三文明社) Born at Ground Zero を購入し、一気に読みました。英語と日本語と書かれています。国民学校2年生・8歳で被爆され、家族全員亡くなられ、田邊少年一人、生き残り、ヒロシマから他県に住むおばあさんのもとに行かれ、おばあさんが亡くなられた後は一人で生きてこられたそうです。是非、崔さんからご連絡してみてください。私は本を読んで大変感動し、田邊氏にお電話しました。今年4月、田邊氏は、被爆者を代表して国連でスピーチされ、そこで、ご自分が作られた映像を国連で紹介されたそうです。被爆者の今なお続く「原爆の悲劇」・・・いかに必要であったとしてもいかに正当な理由があったとしても原子爆弾の投下は許すことのできない「極悪非道な国際犯罪行為」であったと言っておられます。文中で、反原発も訴えておられます。更に、「原爆の子基金」の設立を提唱されています。きっと、韓国人、朝鮮人他外国人の被爆者のお役になれるかもしれません・・・。今年3月8日私は、トルコの村人たちと一緒に、ヒロシマ・ナガサキ平和広場を作りました。そこにトルコ語で憲法9条の石碑を立てました・・。何か接点ができるかもしれません・・。

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  2. 土田さん、ありがとうございます。土田さんのコメントを読み、以下の文書を書き加えました。

    「私は国際連帯に夢を託します。福島事故は「人災」です。原発体制とはなんであったのかの徹底した分析と、その責任を追求して、二度と原発事故のおこらない社会にしなければいけないのです。
    その社会は、またいかなる差別も許さない社会であるはずです。」

    田邊さんともお会いし、知らされていなかった「悲しい出来事」のこともお話し、一緒に核のない社会を目指した運動をしていきたいですね。

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  3. 日本人は原爆被害において被害者であるとともに朝鮮民族への加害者であった。すまないと思います。蔦村的子

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  4.  原発再稼動=積極的戦争主義法案などの必要性を訴える人々を見ていますと、以前から話題になっている、男性脳(自閉症脳)と女性脳が関係しているように思います。国民を無駄に振り回しているこれらの騒動は、おそらく発達障害特有の発想ではないでしょうか。彼らの冷血非道な発想は、明らかに共感力の低さからくるものですし、アスペルガーなどの発達障害の特徴として、物事の全体像を掴むのが苦手、つまり、先(のリスク)が読めない、急な予定変更を嫌う性質のため、たとえ間違っていても一度計画したことは撤回したくない、などがそのまま当てはまるのです。
     NHKでトラウマの解消法を公開していた杉山登志郎精神科医の著書には、
    「発達障害者が他者の心理を読む場合、健常者とは違う脳の部分を使い、異なる戦略を用いて「心の理論」課題を遂行していることが確かめられている。健常者が直感的に速やかに他者の心理を読むのとは異なり、彼らは推論を重ねながら苦労して読んでいるようである。」とあります。さらに、その特徴ゆえ、いじめなどを招きやすく、迫害体験から対人関係を被害的に読み誤ることを繰り返すのだそうです。
     我々人間は有史以来、戦争を繰り返してきましたが、加害者、被害者双方の敵は真実に対する無知であると確信します。一人の被害者も生まない社会の成熟が今後の我々の課題ですね。

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  6. 平和を希求し、反戦、脱原発運動などを継続されている全ての方々にお願いしたいことは、相手の残虐非道な行いを糾弾することではなく、どうして相手がそのような異常行動に走るのか、その病理を暴いて、相手の精神の救済を図ることです。残念ながら、犯罪を犯した青少年など個人への働き掛けは弁護士や専門家が行う制度がありますが、国家や軍隊、いわゆる戦争屋と言われる権力集団を相手としたそのような取り組みは聞いたことがありません。精神医学界では相当なレベルまで解明されている、そうした症例および治療法について、もっと一般の方々によって注目、活用される必要性をこれほど感じる時代はありません。

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  7. Ai Shibahashi さんへ
    ありがとうございます。なるほど、なるほどと我が意を得たりというかんじですね。妙に納得いたしました。
    「相手の残虐非道な行いを糾弾することではなく、どうして相手がそのような異常行動に走るのか、その病理を暴いて、相手の精神の救済を図ることです。」
    そうだと思います。しかしそれは「国家や軍隊」と同様に、実に対処がむつかしいですね。しかしおっしゃることを心いたします。

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  8.  チェさんのように、何十年も彼らと向き合って来た方でも、難しく感じるなら、今、反戦デモに参加している人生経験の浅い学生などは、尚更でしょうね。でも、イギリスでも、コービン氏が労働党の党首になられたり、米国大統領選で若者からサンダース氏が支持を集めていることや、アボット豪首相が退任されたりと、軍事色を嫌う流れが起こりつつあるようで、少しは希望を持っていいのかな、と思っています。
     一方で、いまだに中国が攻めてくるかも知れないから、沖縄に基地は必要と恐怖を抱いている日本人もいるようで、核武装必要論にも繋がるそういった国民の不安をどうしたら払拭できるのか、我々の課題ですね。
     いつも、国際連帯の輪を広げて下さり、ありがとうございます。

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