2013年6月18日火曜日

国民国家を支える国旗・国歌を拒否し、植民地主義を克服する反・脱原発運動を目指して―朴鐘碩

私のブログに反原発運動に日の丸は必要なのかと問うた朴や私に対して、原発体制が植民地主義というのは問題だとか、基本的に日の丸を掲げながら反原発運動をすることを肯定的に捉える若い人のコメントが目立ちます。

原発反対に日の丸は必要なのか?(コメント欄参照)
http://www.oklos-che.com/2013/06/blog-post_14.html

私は敢えて反論していません。彼らの主張がよくわかるようにそのまま掲載しています。手続きを彼らから批判された人のコメントは本人の意向もあり削除しました。より多くの市民を集めるために日の丸を掲げる右翼も包摂する、市民に反発されないように再稼働反対以外のスローガンを禁止(規制)し、左翼っぽく見える組合の旗などを掲げることも禁じているそうです。もっと自由にやればいいではないか!

私たちは「明後日」のことを考えると野間は批判していますが、その通りです。「明後日」のことを考えない運動は、単なる目の間の小賢しい戦術だけであり、戦略にもなっておらず、ましてや40年前、華青闘の告発に自己批判した新左翼の真の問題点を考察するような歴史意識や知識もないようです。私は問題は一国平和主義の克服の困難さだと考えています。

彼らは植民地主義とは何なのか、なぜ今、それを問題にするのかまったくわからないようです。私は個々の問題がばらばらに論じられる現在、包括的・統一的に見る仮説として西川長夫の<新>植民地論は特に注目されるべきだと考え、平和学会においてもそのことを強調しました。

原発体制に抗する理論化のスケッチー平和学会で公表

http://www.oklos-che.com/2013/06/blog-post_6483.html

関西においても平和学会で私の発題を聞いた人が嘆いていましたが、実際に反原発のデモに参加する多くの市民が減ってきている現実は深刻です。私や朴を「あなたたち」と呼ぶ彼らは、私たち在日も日本人の左翼運動をしてきた人もひとまとめにしているようです。まったくわかっていない、まったく私たちのことを理解していないようです。

行動からどのような地平が見えてきたのか、そのことの検証なしには前に進めません。仏大統領来日に反対し院内集会と200名の官邸前集会をもった私たちは、8月4日に「反原発」と「反植民地主義」を謳う集会(場所未定)を持ち新基軸を提案します。スピーカは数十万人にもなる日立社員の中でただ一人、日立のあり方を批判する要望書を公開した朴鐘碩の予定です。さあ、野間や彼の追随者たちにも是非、来てほしいものです。歓迎します。

再稼働反対と共に、原発輸出を反対するべきです。   崔 勝久

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「植民地主義の時代を生きて」西川長夫著(平凡社 2013)を読んで
国民国家を支える国旗・国歌を拒否し、植民地主義を克服する反・脱原発運動を目指して


                                                                       朴 鐘碩 2013年06月16日

戦後の植民地主義である原発体制を解体する市民運動に、何故日の丸が登場するのか?
戦前、多くの日本人は国策に従い、君が代を斉唱し、日の丸に見送られ植民地に新天地を求めた。天皇(制)の下、日の丸・君が代は侵略戦争に利用された。国旗・国歌をシンボルにした国民国家が日本人の心に深く根付いた。日本は、アジアへの侵略戦争の加害者となり、同時に民衆が(被曝の)犠牲となった。

原発メ-カである日立・東芝・三菱などの企業で国旗掲揚は日常行為であり、それに抗議する労働者は皆無に近い。まして企業の戦争責任を問うこともない。

しかし、戦争責任を問わない(教育)労働者は、戦後、(核)戦争に反対し、平和・人権を求めた。敗戦から70年近くなるが、再び戦前の体制が構築された。学校現場で国旗・国歌が強制され、沈黙する教師は少なくない。教え子を戦場に送らない「平和教育」を求め、生活・生き方を賭けて、国旗・国歌の強制を批判・拒否する教育労働者もいる。しかし、国民国家を支える教育も「植民地主義の再生産装置となる」のか。

1970年代の日立闘争に多くの日本人青年、教師が関わった。彼らは民族の主体性=朝鮮人と考え、子弟に本名を名乗らせる「教育」に関心を示した。しかし「本名教育」を目指した教師は、国旗・国歌を拒否・批判する声を発したのだろうか。

日の丸を常時掲揚するために新たにポールを設置した川崎市は、「当然の法理」で外国籍住民を「2級市民」扱いする「運用規程」をつくった。これで差別を制度化した。全国の自治体は、この川崎方式を採用した。被災した東北太平洋沿岸の自治体も同じで例外はない。平和・反差別・人権を求める教師は、教え子が「2級市民」として(就職)差別されているのに何故足元の自治体に抗議しないのだろうか、という疑問がある。外国籍住民を「2級市民」扱いすることは、国内植民地主義である。

「植民地主義の時代を生きて」の著者・西川長夫教授は、「『フランス革命史』に描かれている、アナカルシス・クローツという奇妙な人物がそれぞれに民族衣装を着た20人ほどの外国人を連れて立憲議会を訪れ、連盟祭への参加を要請する面白い場面を引用している。クローツはラジカルなジャコバン派として活躍するが、フランス革命がフランス国民の革命でなく全世界の人類のための革命であることを要求し、つまりフランス共和国を否定して最後には外国人スパイとして、ロベスピエールによって告発され処刑されます」と書いている。これは、「国民/外国人という区別を作った」、「自由・平等・友愛」を目指したフランス革命は、排外主義を克服できなかった、ということである。

戦後の反戦(核)、平和、人権運動は、侵略戦争の責任を問うことはなかった。植民地となった外国籍住民の問題も欠落したのではないか。反核・平和運動から排外主義を克服できないのか。戦争責任を問わないのか。一方で資本のグローバル化は、「植民地拡大」に繋がった。

反核・反原発を訴えることは、排外主義を克服し、開かれた地域社会を作り出す運動である。同時に外国籍住民を排除する思想も問われなければならない。一国主義でなく、アナカルシス・クローツが訴えたように人間性を求める市民運動は、普遍性を持つ「全世界の人類のための革命」でなければならない。それは国際連帯で実を結ぶだろう。

「われわれ自身のやり方で国民国家の構造とその歴史を改めて問い直すことによって、その閉じられた地平ふたたび開けることもできるのではないか」

住民を騙し犠牲を押し付けた原発体制も国内植民地主義である。また外国籍住民を「2級市民あるいは準会員」扱いすることは、植民地なき新植民地主義である。原発体制は、国策によって多くの日本人民衆が騙された。植民地主義に繋がる原発体制の解体を求める反原発運動は、同時に排外主義を克服する運動でもある。当事者主権を求める国籍を超えた住民主体の市民運動である。

沈黙を強いられている学校現場の教師は、原発(核)の恐怖、3・11の核爆発を被曝の影響を最も受けやすい子どもたちにどのように伝えているのか。「世界で最も安全な日本の原子力」「核の平和利用」などと子どもたちを騙す、間違った教育を繰り返すべきではない。

原発事故のメ-カ責任を明らかにしない日立は、「より安全で」、最も危険な原発を開発・製造し、さらに海外に輸出しようと企んでいる。「技術の日立は、地球のために」環境保護を謳っていながら世界中に放射能を拡散している。20万人近いと言われる避難者への社会的責任を問われないままだ。日立で働く多くの労働者は、資本の論理に従い、黙って上司から課せられたノルマを遂行するだけである。「原発事故」という言葉は出ない。労使一体で労働者に自由にものを言わせない、閉鎖的な企業である。私は、これを植民地的経営あるいは企業内植民地と理解し、会長・社長に再度原発事業からの撤退と輸出中止を求めた。

「戦後とは植民地なき新植民地主義である」と喝破したのは、国民国歌を痛烈に批判し、「植民地主義の時代を生きて」きた元西川長夫立命館大学名誉教授である。「私たちは現在の植民地主義と闘わなければならない」

2 件のコメント:

  1. 「反核・反原発を訴えることは、排外主義を克服し、開かれた地域社会を作り出す運動である」に、共感します。今まで、ともすると原発事故の責任を、東電幹部と官僚だけに目を向けがちであったけれど、製造企業の責任を追及することは、本当に大事で、会社における人権侵害や、排外主義を放置することが、これらの事故につながっていることがよくわかりました。本当に戦争に反対するのなら、自分の働いている会社で武器を作ることに反対しなければなりません。労働者の人権を守るのなら、労働者を被ばくさせる原発そのものに反対の意思表示をしなければならないはずです。この一番大切なことを、わたしを含めて多くの人がサボってきたことは明白で、もっと自由に物を言え、多様な価値観を持った人たちが切磋琢磨できる地域(会社)を作れればと思いました。貴重な意見を有難うございました。

    返信削除
    返信
    1. 今思えば、1970年に始まった日立就職差別裁判闘争は、植民地主義との闘いでした。6月19日は、横浜地裁で完全勝利判決が出された日です。40年経過しても日立闘争の意味は生きています。

      「植民地主義の時代を生きて」西川長夫著(平凡社)を読んで(2)
      何故、原発メ-カ(日立製作所)の企業責任を問わないのか?
      植民地主義を克服する(反・脱原発)運動を目指して

      外国人への差別を許すな・川崎連絡会議-コミュニケーション-掲示板
      http://homepage3.nifty.com/hrv/krk/index2.html
      に投稿しました。
      朴 鐘碩

      削除