2013年6月15日土曜日

原発体制に立ち向かう国際連帯運動をめざして―発題内容の主旨  


日本平和学会2013年度春季研究大会(6月15日[土]~16日[日]、於大阪大学豊中キャンパス)がもたれます。その中で私も報告者の一人になりました。

日本平和学会2013年度春季研究大会(日本平和学会40周年記念大会)

 統一テーマ:平和の文化―継承と警鐘―

 6月16日(日)14:30-17:00

部会4(開催校企画部会):「昂進する軍事化に抗う」

報告:アンドレアス・ザイフェルト(軍事化情報協会)
「ノーベル平和賞受賞者・欧州連合の軍事化」
報告:崔勝久(No Nukes Asia Actions Japan[NNAA-J]事務局長)
「原発体制に立ち向かう国際連帯運動をめざして」
 報告:藤目ゆき(大阪大学)
「広島湾地域の軍事化と性暴力」
 報告:山根和代(立命館大学)
「平和博物館の展示改変に対抗する草の根の取り組み」
司会:松野明久(大阪大学)




原発体制に立ち向かう国際連帯運動をめざして―発題内容の主旨  
  
614日本平和学会2013年度春季研究大会にて
崔 勝久(No Nukes Asia Actions(NNAA)事務局長)

1.原発体制は植民地主義
①原発体制は被曝労働者と地域社会の犠牲の上に成り立つ国内植民地主義
②被爆国日本が原発体制になったのはなぜか―原子力の平和利用の神話
 ・戦後日本の経済復興(原子力の平和利用を歓迎)、日本の安全保障政策(アメリカの核の傘と潜在的核保有)
・日本の国内情勢
レジューム・チェンジへの助走開始、弱者切り捨て政策、国内の外国人抑圧(民族学校への差別)、差別言辞の横行、在日を排除する「当然の法理」、ナショナリズムの喚起(領土問題)

2.原発体制は核保有国による世界支配(NPT体制)
①原子力損害賠償法による原発メーカーの免責(PL法を適用せず)→江戸末期の黒船
②3・11以降、原発輸出にシフト
・安倍の経済成長戦略の柱としての原発輸出(ヴェトナム、リトアニア、フィンランド、ヨルダン、トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)等、モンゴル(CFS構想)

3.日本の反原発運動の進むべき方向性
①未だ小さい原発輸出反対の声→日本の植民地主義理解の根本的な問題点、「再稼働反対」に運動のスローガンを一本化することの是非
②市民による国際連帯運動の強化→台湾の「日の丸原発」建設反対の国民投票に注目
③アジアに集中する原発建設(2030年には世界の半分が集中)

4.No Nukes Asia Actions(NNAA)の運動方針
 ・韓国全原発地域訪問ツアーの実施、台湾の現地新聞での意見広告
 ・11/11に原発メーカーの日立、東芝、GEを提訴)、原告は全世界から1万人募る

5.結論
私の主張を結論的に言います。原発体制は植民地主義であり、それは国家と資本が作り出したグローバリズムだということです。従って、反原発運が「再稼働反対」のスローガンに掲げても、「原発輸出反対」を同列にしなかったというのは、原発体制はグローバリズムであり植民地主義であるという本質を見抜いていないということになります。

一国平和主義の枠を批判的に超えずして、グローバルな原発体制と闘うことはできません。そしてこの一国平和主義こそ、戦後日本の平和運動、そしてそれを批判してきた新左翼も超えられない枠であったのです。原発反対運動も同じ過ちを犯すのでしょうか。

日本の戦前の植民地主義は清算されておらず、戦後はそれを引きずったまま戦後の経済復興とともに原発体制を作り上げていきました。在日への差別、民族学校への弾圧、原発輸出は戦後の新たな、植民地なき植民地主義の実態を示しています。反原発運動は本質的に植民地主義と対峙するものであり、反核・反戦・反差別を謳うものです。

みなさんは植民地主義とは何かということを、植民地主義による抑圧、搾取された人達の立場から考えたことがあるのでしょうか。「在特会」と対峙するとき、自分自身の価値観の中にその植民地主義の、原発体制を推し進めてきた価値観が巣食っていると考えたことがあるのでしょうか。植民地主義との闘いは、外在的なものに終わらず、ただ「原発ムラ」への反発に終わらず、内在的なものであり、自らの解放のためであるということを自覚しているのでしょうか。

私たちは首都圏反原連及び6月2日に分裂行動をした反原発を掲げるふたつの団体も、すべて反原発の運動が原発の「再稼働と輸出反対」と両方を大きくスローガンとして掲げることを願います。

参考文献:ブログ「オクロス」で検索ください。
●西川長夫『植民地主義の時代を生きて』(平凡社 2013年)
●原発反対に日の丸は必要なのか?
http://www.oklos-che.com/2013/06/blog-post_14.html
No Nukes Asia Actions (NNAA) 出発にあたって:原発輸出と闘うべき理論的根拠の確認 http://www.oklos-che.com/2012/11/no-nukes-asia-actions-nnaa.html
●地域の変革と国際連帯の運動によって日本をよりよい社会へ
http://www.oklos-che.com/2013/05/blog-post_15.html
●「日本、トルコへ原発輸出」安倍、胸を張る
http://www.oklos-che.com/2013/05/blog-post_4.html
●安倍首相はモンゴルで何を話し合ったのかー公表されていない内容の推測
http://www.oklos-che.com/2013/04/blog-post.html
●地方自治体の在日差別・抑圧の根は何か

http://www.oklos-che.com/2013/04/blog-post_6.html
日本はアメリカの従属の下で原発体制を作りはじめたー武藤一羊さんの著書を読んで
http://www.oklos-che.com/2012/12/blog-post_11.html


参考資料:
原発体制に立ち向かう国際連帯運動をめざして―提出したレジュメ

崔 勝久
No Nukes Asia Actions(NNAA)事務局長

1.原発メーカーの責任
いまだ福島事故の原因もあきらかにされず、その上、原発地域の住民の安全な避難の計画もないまま、安倍政権になり原発の再稼働が具体化されています。3・11以降、福島の事故を起こした原発メーカーは自分たちの社会的責任に一切触れることなく、世界中に原発の輸出を進めようとしています。しかし日本においてはこの原発メーカーの社会的責任は問われないまま今に至っています。また再稼働反対を掲げる運動においても原発輸出を取り上げ、輸出メーカーの責任を追及する運動はあまり見られませんでした。

アメリカは核による世界支配を貫徹するために「原子力の平和利用」を掲げ、日本に原発を売り込んだのですが、その際に、原子力メーカーの責任を不問にするという法律を日本に作らせました。原子力損害賠償法(原賠法)です。PL(製造物責任)法を適応せず、原発メーカーの責任を免責しました。

私はこの事実を知ったとき、江戸末期の黒船を思い出しました。西洋列強による開国の脅しに屈した日本は、数十年後、まったく同じ方法で韓国、台湾に開国を迫り植民地支配をしました。原発大国になった日本は、今度は海外への原発輸出を謀るのですが、そのとき自分達がアメリカから強いられた方法と全く同じように、輸出国に原発メーカーの免責を立法化させます。

2.日本の原発メーカーの実態
 メーカーの免責の保障を受けながら、3・11以降も日本政府の後押しで、原発メーカーとして今や世界のトップ企業になった御三家の日立、東芝、三菱重工は世界中に原発を売り込もうとしています。日立は国民投票で反対されたにも拘らずリトアニアに、三菱重工は地震国トルコへ、東芝はサンタとムーミンの地フィンランドへ、その他ヨルダン、ヴェトナムも決定済みです。そう言えば、日立は英国の原発メーカーを買収し、最大3基原発を建設する予定です。

 今年の5月になって安倍首相はトルコ、UAE(アラブ首長国連邦)を訪れ、原発建設の契約を締結し、インドとも原子力協定を締結する約束をしました。日本での増設や全ての原発の再稼働が難しいとされるなか、阿部政権は成長戦略として「原発活用」を盛り込みます。早急に再稼働を果たし、「海外市場への輸出を活性化し、成長産業の柱としたい」という考えなのでしょう。

それに台湾の首都台北の30キロ圏内にGEを頭に日立、東芝、三菱重工が建設した4基の第四号原発があるのですが、住民の反対で完成したものの運転はできない状態が続いています。まもなくその建設の是非をめぐって国民投票が行われます。私たちは台湾の新聞一面に意見広告をだし、連帯の意思を明確にしたいと計画しています。

東芝はスリーマイル事故以来40年近く原発建設がなかったアメリカで2基の建設をすることになり、また、子会社のウエスチング・ハウス社と組んで中国で10基の原発建設予定です。さらにマイクロソフトのオーナーであるビル・ゲイツは東芝に私財を投資し、「小型で安全、廉価」を旗印にした新型の原発を共同開発し、中国と大型契約をしようとしています。今後増大する中国での原発製造はすべて東芝が引き受けることになるでしょう。

3.No Nukes Asia Actions(NNAA)の設立―原発体制に立ち向かう国際連帯運動を
このような状況の中で私たちはNo Nukes Asia Actions(NNAA)を昨年11月11日に立ち上げました。現在、日本の他、韓国、台湾、モンゴル、アメリカの市民が参加しています。日本の運動が再稼働反対に留まらず、原発輸出反対、使用済み核燃料のモンゴルへの持込み反対を掲げることは、一国平和主義に陥りがちなこれまでの日本の運動の歴史から抜けだし、市民による国際連帯の運動を展開する第一歩になると考えます。海外において反原発の運動を進める市民との国際連帯なくして反原発の運動が勝利することはありません。

 一昨年、私はモンゴルを2度訪れ、日米モンゴル3ヶ国がモンゴルのウラン開発から使用済み核燃料の持込み・埋立を一括する構想を知りその実態を見て来ました。先月の4月下旬には台湾を訪れ、彼らの運動との共通課題を話し合いました。6月後半には韓国の全
原発立地地域訪問し、「脱核とアジア平和のための韓国原発地域 韓日市民ツアー」を行い日本から20名の人が参加します。現地の住民と話し合い、お互いの抱える問題を率直に
話し合うことになるでしょう。

4.福島事故を起こした原発メーカーを提訴、「原発モンスター」裁判
11月11日には、福島原発を起こした原発メーカーのGE,日立、東芝を相手に裁判を起こし彼らの社会的、道義的責任を問います。原告は世界中から募る方式を採用します。テレビなどで被害の現場を見て精神的ショックを受けた人は全世界どこの国の人であっても原告になれるような裁判にしようと考えています。


2 件のコメント:

  1. 原発再稼動にNO! 改憲にNO! ‏@kenshimada 4時間

    本質付いてる。ここまで踏み込まないと原発は止まらない。RT @che_kawasaki: 「原発体制は植民地主義であり、それは国家と資本が作り出したグローバリズムだということです。反原発運動は本質的に植民地主義と対峙するものであり、反核・反戦・反差別を謳うものです」。"

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  2. El Cheさま、
    私にはまったく仰せのとおりだと思える主張でして、いったい、反発している人たちはEl Cheさんの主張の何が気に入らないのでしょうね???
    ↓ に「原発事故を起こした国民の責任を明確にするため、安易に国境を越えるな」という主旨の意見がありましたが、「責任の主体」を明確にするなら、たとえば「自民党に投票してきた人たち」の責任を問うべきでしょう。
    たとえば私自身は、
    ・ 20年ほど前から明白に反原発を主張してきましたし、
    ・ その主張を始める際、まず自分の電気消費を、東京の原発依存率以上に減らしました。それ以来、私の部屋の照明は蛍光灯や蛍光電球で、TVもここ何年も持っていません。可能な限り、自動車や電車という「電気食い」を避けて、真夏でも自転車で移動しています。
    ・ 自民党には、投票したことがありません。原発と「核兵器製造能力」を推進している政党だと、昔から知っていたからです。
    で、こんな人間まで、たまたま日本国籍だからといって、「原発事故の責任」を負わされるのでしょうか??? 日本になど、選んで生まれてきたわけではありません。あるいは、自民党支持者も、Greens Japanのような政党を以前から待ち望んでいた人も、「日本国籍だから」同じように責任を負うのでしょうか??
    まったく不条理です!
    「責任を明確に」するのなら、「国民(国籍民)」なんて曖昧で雑多な集団を単位にしていては、お話になりません。たとえば、「日立、東芝、GE、MHI」、「自民党」、「正力松太郎とそのメディア コングロマリオット」くらいの具体性を追求しないと、お笑い沙汰です。
    その意味で、「モンスター訴訟」は実に明確に責任を追及する、すぐれた”反原発運動”だと見ております! 

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