2013年5月24日金曜日

現川崎市長は市民との対話の意思のないことが判明ー市長の回答・説明会より

5月23日、川崎市長から「放射能汚染を考える川崎市民連絡会議」の共同代表宛に、ゴミ焼却灰の海面埋立の問題に関する公開の抗議・質問・要望に対する回答があり、その説明が環境局からなされました。

テレビ神奈川ニュースで報道 2分間
2013年5月23日 川崎市 ごみ焼却灰埋め立て 市民と対話の場
http://www.youtube.com/watch?v=BUQNB2zQSi0&feature=youtu.be

公開の書簡に関しては以下のURLをご確認ください。
川崎市長あての抗議・要望書の提出、市民への説明を求める
http://www.oklos-che.com/2013/05/blog-post.html

記者クラブへの案内には以下のように記しました。
抗議と要望の主旨:
川崎市は「公害の街」からの脱却と、「核兵器廃絶平和都市宣言」をした環境と平和を希求する都市であり、その精神と伝統に照らせば、放射能汚染されたごみ焼却灰の海面埋立は自然を汚染し市民の健康を損ない、市民の不安を煽るものです。市は即刻「試験的埋立」を停止し、市民の納得できる説明を行い、市民と共に問題解決のための対案を検討すべきです。

(市長の回答の内容)
阿部市長はテレビのインタビューで、海面埋立の再開が記者への発表の翌日に決行されたことに対して、「闇討ち」ではなく「計画通り」だが、そのように受け取られても仕方がない面があると釈明していました。私たちの予想は、今回の回答もそのような「釈明」から入ると思っていたのですが、環境局は公開質問・要望に対しては彼らなりに正面から応えようとしたものでした。

まず最初の段落では、今回の「試験的埋立」は川崎市の震災対策の一環として決定・確認されたことであり、「昨年の11月の方向性確認後、市議会、地元町内会、浮島地区の企業、関係者を中心に、対応の検討状況、安全対策などについて丁寧に説明を行い、ご理解をいただいたものと考えています」とあり、そういう意味ではやるべきはすべてやってきた、何も問題はないという市長見解です。ここには市民の不安に対してそれをどう思うのかという点に対する考慮或いは配慮がまったく見られません。不安に思う市民の気持ちを逆撫でします。

次にゼオライト使用の効果の確認を強調し、その後、ビーカー試験から即実際の内海にセシウムを付着させたゼオライトを灰ととも海面に投げ捨てることへの批判に対する若干の抗弁を試みています。つまるところは、ビーカーだけでなくタンクも使っているよということと、実験内容やゼオライトを使った安全対策については有識者のお墨付きを得ていると言うことのようです。

生物の影響に関しては、セシウム137をあげ、約50日で「半分が排出される」という農水省の結果から、「食物連鎖を通じて魚体内で蓄積し続けるわけではなく」、「魚体内中に入った放射線物質は体外に排出される」と断じています。しかし継続してモニタリングを実施すると強調しています。

最後は、今回は一か所のゴミ焼却炉からの灰だが、すべての処理センターの安全対策工事を行いモニタリング測定結果も確認したうえで「本格実施に移行する予定」だそうです。そうすると毎日出る1100トンのゴミのうち150トンの焼却灰が東京湾の内海の埋立地に放置されるということになるのです。

そして最後にとってつけたように「これまで、市議会をはじめ、地元町内会、企業、関係者を中心に説明を行い、御理解をいただいてきたところですので、引き続き、溶出試験結果やモニタリング結果を公表し、適切に説明を行ってまいりたいと考えています」と書いています。

(その後の質疑応答ーその1)
改めて町内会、市民への説明の実態を聞いたところ、各海辺の地区の町内会長や「全町連」(?)の会長に資料を渡して組織のみんなに説明しそれで問題や質問・要望があれば説明に行くつもりであったが、どこからも何の質問も要望もなかったので、海面埋立に理解してもらっと考えている、「いまのところ市民との対話は必要ないと考えている」ということでした。

川崎南部の海辺に近いところに住むという今井代表からは、工事再開に対してまったく市民に何の連絡、通知もなかった、公害を克服してきた川崎市としては環境アセスメントに準じる配慮をすべきではなかったという厳しい質問があり、市側はHPでの掲載はあったものの市民への印刷物の配布は一切なかったことを認めました。」

市としては、「安全性の確認」をしたから問題はないと言うばかりで、問題点や課題が何で、様々な意見ややり方があるなかでどのようにして現行のやり方を決定するに至ったのか、「安全性の確認」は行政がやればよく、その報告も町内会の会長から下に伝えてもらうというその考え方、やり方が市民を疎外する最大要因ではないかと言う意見が続きました。


(その後の質疑応答ーその2)
市側は灰にゼオライトを混ぜ粘土状にして海面に投下しても国の安全基準をはるかに下回る海水浴場や飲料水並みであり、これ以上悪化しない対策を講じているが、それでも万が一、内水の放射線量が高くなった場合は、灰の投入をストップして、新たに設置した装置にゼオライトを入れそこで海水に拡散させるので問題はない、二重の安全装置を設置している、「安全性の確認」はしっかりとやっていると、まるで原発のときにこれまで聞かされてきた、何重にも安全装置を作っているので問題は起こりえないという安全神話を思い出しました。

その他、ごみの焼却に際して大気中に放射性物質が飛び散らないようにフィルターを設置しているが、それで本当に安全と言えるのか、放射性汚染された灰を直接海に投下しないで、その前の段階でセシウムやその他の危険物を取り除く前処理のようなやり方に関する意見もでました。かえってそれは危険で処理できないという市側の見解でしたが、現在、8000ベクレルを超える灰は放置されたままで、その処置の方法も明らかにされておらず、あらゆる問題点、解決方法に関しても市民の意見を聞き、一緒に解決策を模索すべきではないかという方向に話は推移しました。

時間がなくなり討論できなかったのですが、地震や津波が来た場合の対策はどうなるのか、内海の数値があがり危険だということで再度ゼオライトを使用した場合、そのゼオライトの処理はどうするのか、食物連鎖はセシウムだけでなく、他の放射性物質も含まれているはずで、問題はないと言い切れるのか、太平洋のプラクトンに放射性物質が含まれていたと新聞されていたが、東京湾の魚を調べて問題ないと言うが、プラクトンの調査はしたのか(していないとの回答)、モニタリングをしっかりとするというが、外洋で放射性物質が発見された時にはすでに処置のしようがなく、むしろ徹底して放射性物質を海に放流しないということに注力すべきではないか、という意見が継続しました。

参加された方の中には、市民の中で放射能の問題でまだ知らされていないことが多くあるのに、どうして川崎はそんなに急いで海面埋立を再開したのか、という声もあがっていました。

(結論)
まず市民の関心(反応)がなかったのは市民への徹底した通知、報告、情報公開がなかったからで、市側が改めて市民への説明をする気がないというのであれば、私たちで関心のある市民を集めるので「市民の要望には応」えていただきたいですね。そこで改めてどうして安全と言えるのか、市側にはしっかりとした説明をする責任があります。

また私たちの方でも、大気中に流されるセシウムの問題点、食物連鎖の問題、ゼオライトの有効性の問題、事故を起こした東京電力との問題(市側は高い放射線量の測定や処理による費用を東電に請求したが、まだ解決は見ていないとのことでした)などには市民として積極的に学習して関わっていくべきだと痛感しました。

市民は安全に関して行政に全てを委ねているのではありません。安全の問題に当事者として関わり、その解決を担う立場であることを行政は理解できていないようです。これは3期を終える阿部市政の限界でした。結局彼は12年間、市民の声を聞くとしながらも(私も一人、市長室に招待されたことがありました)、それは市民の声を「聞き置く」ということであり、決して市民と一緒に対話をして課題の解決策を模索するということではなかったのです。行政は(お上として)市民に何かやってあげる、何が正しいか、何が安全かは行政が決めるという考え方です。

このことはこの秋に阿部市政の後、新たに市長になる人が選ばれます。昨日会議に参加した環境局の人の話しぶりを聞いても市民と一緒にやることの意味を理解していると感じました。問題はトップです。次の市長は、地方自治とは住民と一緒になってよりよい社会を作ること、住民との対話(それも決定の過程にまで参画させる)が重要だと認識する人を選びましょう(私は選挙権はありませんが、そういう人ならばしっかりと応援いたします)。

市民もまた政党や政治家、行政に自らの生命、安全に関する問題の解決を委ねるのでなく、自ら当事者として関わって解決策を模索する立場にあることを確認していきたいと思います。



1 件のコメント:

  1. 川崎市長 阿部孝夫の回答
     2013年5月23日(木)18:00〜20:00、川崎市第2庁舎601号室
     出席者
      川崎市環境局施設部処理計画課 課長・正道寺、
    施設整備課・野田、ほかに課員2名。
      放射能汚染を考える川崎市民連絡会議。13名。  
        共同代表;今井克樹・川口洋一、
        事務局長;崔 勝久、事務局;伊藤英雄、島安治、野副逹司、朴鐘碩 
        市議会議員;猪股美恵。
    松崎玲子(DCI子ども人権連)、佐藤悠子・瀬川千恵(脱原発かわさき市民)、西村光子・小松終子(自治市民かわさき)。
      
    司会;川口洋一
    挨拶;今井克樹、
      川崎市にとっては今日の会議は節目だと思っている。川崎市は公害に対して日本ではかつて無い取り組みをしてきた。今回の公害は核の汚染であり、それに川崎市がどのように対処するのか。核の廃絶の問題は非核の問題として扱ってきた。大きく言えば核兵器につながる。憲法の問題から言っても核の問題は非常に大きい。放射能汚染された灰の埋立てを市民抜きでやったと言うことは、果たして川崎市の歴史に照らして良いものか、そういう疑念を持っている。
    回答;正道寺課長、
     (配布された文書=「放射能物質に汚染されたごみ焼却灰の海面埋立再開に対する抗議と要望」
      への回答について」=A3版一枚に従って読み上げたあとで、項目ごとに質疑応答した)
     第1点(市民への周知)について、
    「(経過)福島第一原発の事故の影響で、ごみ焼却灰から放射性物質が検出、本市の埋立処分場が水面埋立のため安全面を考慮し、コンテナで一時保管し、東日本大震災対策本部会議や放射性物質対策検討特別部会で、安全な処分に向けた検討を行った。その結果、昨年11月の東日本大震災対策本部会議で、ごみ焼却灰の取扱いに係る川崎市の対応の方向性を確認し、2月26日(火)の放射性物質対策検討特別部会で検討後、3月22日(金)の本部会議で、ゼオライトの溶出抑制などの対策を 講じたうえで、本年4月以降の埋立処分の開始を確認した。
     これまで、ごみ焼却灰(煤塵)の試験的埋立に際して、昨年11月の方向性確認後、市議会、地元町内会、浮島地区の企業、関係者を中心に、対応の状況、安全対策などについて丁寧に説明を行い、埋立処分の、ご理解をいただいたものと考えている。」
     全町連会長および田島大師町会長を通して市民に伝え、企業は昭和会、土曜会などの協議会をとおして各社への説明を依頼した。 
    連絡会議;
     会長や協議会を通したと言うが、質問が無ければ諒解して貰ったというのは言語道断、きちんと市民に周知すべき事柄である。説明の要望がないから…もう説明は要らないというのはおかしい。環境アセスについて当然やるべき手続きをなぜ踏まないか。やらなかったか。
     市;
     環境アセスについては、放射性汚染の恐れのある廃棄物は一般廃棄物ではなくアセスをやるやり方がなかった。

    回答;第2点(ゼオライト)について、
     「火山岩が凝固した鉱物のゼオライトは、これまでの様々な研究結果から、放射性セシウム(以下セシウム)に対し、高い吸着性と同時にイオン交換によるセシウムの保持を示し、周囲の環境に左右されず、その効果を持続する特性を持つことが確認されている。
     ごみ焼却灰(煤塵)中のセシウムは、国立環境研究所との共同研究で、水への溶出が確認され、その溶出率はほぼ100%だが、これまでの試験等では、ゼオライトがセシウムを吸着、保持することで水への溶出率を30%以下に抑えることができることを確認した。
     なお、セシウムはゼオライトへのイオン交換の優先度が最も高く、海水中のナトリウムなどの他田の物質(イオン)と比べてよりセシウムを保持することが確認されている。」
    連絡会議;
     ・「溶出率が30%以下に抑える」とは、70%しか吸着しない。
     ・毎日のごみの量は1100トン、15~16%が焼却灰になり日量150トン。0.01ベクレル/kgで0.26μSv/kg。それだったら、薄めたりしないで国に処分して貰えばいい。なぜ、川崎市は薄めて処分するか。

    市;第3点(実験方法)について、
    「溶出抑制試験では、実際の埋立処分場の内水を使用し、環境省告示第13号および廃棄物関係ガイドライン(第五部 放射能濃度等測定方法ガイドライン)が定めた方法(JIS溶出試験)で実施。実施規模は、実験室でのビーカー試験、タンクを使つたカラム試験で、溶出抑制効果及びゼオライトのセシウム吸着効果を確認した。この実験内容や本市が行うゼオライト処理による安全対策については、複数の有識者にも、確認および評価をいただいた。」
    連絡会議;
     ・市議会への説明文書では、実験規模は適切な広さの土地が無く、シュミレーションを行ったと書いてある。実験規模については、通常の実験室レベル→実証レベル→実用レベルでのそれぞれの段階を踏まえるがどうしてビーカー実験だけで良しとしたのか。シュミレーションの諾否はどうなる。
     ・内水だけでは実際の環境の変化を反映できない、不十分な実験ではないか。

    市;第4点(生物への影響)について、
     「「濃縮係数(生物中濃度/海水中濃度)」で示される生物濃縮は、農水省(水産庁)の資料では、DDTやPCBの環境汚染物質と比べて、セシウムは海産魚の濃縮係数は大幅に低い(セシウム⇒5~100、DDT→12000、PCB→1200~1,000,000)。また同じく農水省(水産庁)の魚の室内実験では、体内に入つたセシウム137は約50日で半分が排出される結果がある。セシウムにつては、「放射性物質は、水銀や有機塩素化合物などと異なり、食物連鎖を通じて魚体内で蓄積し続けるわけでなく」、「魚体内中に入つた放射性物質は体外に排出される」という結論です。
     さらに、本市では、管理型埋立処分場からの内水濃度について、国の基準が75ベクレル/L(目安
    値)に対し、国の海水浴場における海水の指針値であり、食品衛生法上の飲料水の基準値でもある10ベクレル/L以下を目標値として、内水、放流水を管理することによって安全を確保するとともに、外海水(埋立処分場近辺海水)、川崎港の魚介類についても継続的にモニタリングを実施します。
    連絡会議;
     「半分が排出される」ではなく、半分が体内に蓄積されるということ。体内被曝を考えるとどうなるか。市民が安心できる資料を出して貰いたい。チェルノブイリの被災した子ども達のことから考えてほしい。放射能汚染に対する予備的調査を早く実施してほしい。どうしてこんなに早く川崎市は埋立処分をやるのか。毎日の市民生活で、政府への不信感がある。また、家族が働く企業への気遣いからあえてことばに出したくても出せない事情が市民にはあると言うことも充分考慮すべきだ。「安全率」は安全か。プルシアン・ブルーがれきを受け入れない。作業員の被曝を考えて、放射性廃棄物であっても総量規制が原則であり、容量規制でどんなに薄めてもそれは放射能まみれの緩慢な被曝が続くことには変わらない。濃度を薄くしても放流すれば東京湾は汚染され他の都市も大いに関心を持っている。1から10まで環境局だけでなく、市民の協力も得て放射性物質を扱い慣れた市内の会社や企業の能力を活用する前向きな姿勢で取り組んで欲しい。

    市;第5点(今後の試験的埋立に係わる対応)について、
     「浮島処理センター、堤根処理センター、王禅寺処理センターおよび浮島浮島処分場の安全対策工事を行い、試験的埋立の実施中のモニタリング測定値、溶出試験などの結果を確認します。その後、これらの測定値や試験結果を確認し、本格実施に移行する予定です。
     これまで、市議会をはじめ、地元町内会、企業、関係者を中心に説明を行い、ご理解をいただいたので、引き続き、溶出試験結果やモニタリング結果を公表し、適切に説明を行います。」
    連絡会議;
     処理センターのバグ・フィルターについては、セシウムの補足は不可能という意見もある。放射性物質専用のバグ・フィルターは無いと言われているが、セシウムが飛散することはないか。 
    市;
     処理センターで実測すると、飛灰そのものにふくまれるセシウムがほとんどない。



    次回の提案については、後日事務局と調整する。

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