2013年5月2日木曜日

川崎市長あての抗議・要望書の提出、市民への説明を求める


5月1日、川崎市の汚染されたごみ焼却灰の海面埋立の再開に抗議し、市長あてに要望書を提出した「放射能汚染を考える川崎市民連絡会議」は同日午後、記者会見を行いました。この案件に関しては環境局の環境処理計画課に出してほしいという市側の要望に従い、正道寺 民幸課長と30分間、市民連絡会議共同代表の今井克樹さん、川口洋一さん他、4名が公開抗議・要望書について話し合いました。

市民連絡会議の方は、共同代表の今井さんから、川崎市は「核兵器廃絶平和都市宣言」であり、公害を克服してきた都市であるのに、市民に説明することなく海面投下を強行再開することは許されない行為であるという抗議を行いました。同川口代表からは、飛灰だけでなく、この間継続して行われてきた主灰の海面投下も、総量としては300-600億ベクレルに達しており、実験室レベルでの数値から市の安全宣言は問題があるという指摘をしました。

一方、正道寺課長はこの場での回答は避けたい、検討をしてお答えするという姿勢でした。私たちは、国の基準(これも法的な根拠はないのですが)よりさらに数値を下げようとする川崎市の姿勢は理解するが、現行のやり方の決定過程(他の方法に関してもその実験結果が公表されている)を明らかにすることを求めました。同時に、市の「安全を期した」やり方についても、直接的な海面投下ではないとは言え、生態濃縮・食物連鎖の危険性は否定できず、セシウムを含む希釈された海水を外洋に放流した場合、問題があってもそれを処理する方法はなく、事前の対応が不可欠だということを主張しました。

私たちは5月11日の回答を市民の前で説明していただきたいと要望しましたが、その日の回答が可能かどうかわからないということでしたので、逆に市側の都合のよい日にちをしらせてもらえば、市民連絡会議はそれにあわせるようにするので、課長と事務局長の崔の間で日程調整をすることになりました。

以下、市長あての公開の抗議・要望書と、各党派はこの問題に賛成した意図と私たちの提起する問題点に関する見解を求める要望書を出しましたので、それらを公開します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


川崎市長 阿部孝夫殿
放射性物質に汚染されたごみ焼却灰の海面埋立再開に対する抗議と要望
                     2013(平成25)年
                         放射能汚染を考える川崎市民連絡会議
                   共同代表:今井克樹、川口洋一

川崎市は「公害の街」から「市民が安心して暮らせる街」に歩みを重ね、1982年には人類悲願の「核兵器廃絶平和都市宣言」をした、環境と平和を希求する街です。
3・11の福島第一原子力発電所事故によってわたしたちは、原子力の平和利用という名目で作られてきた原発が「安全でクリーンでコストが安い」というのは「神話」だと思い知りました。原爆と原発は表裏一体であり、そのいずれもが放射能によって人類と自然に取り返しのつかない危害をもたらすことを身をもって知りました。
原発事故が放出した膨大な放射性物質は今なお増え続け、東日本の大気・水・土壌の環境をくまなく汚染し、川崎においても毎日排出されるごみ・下水汚泥の焼却灰の処理さえできず臨海部に積み置きされる事態が続いていました。 
しかし、川崎市は、放射能汚染されたごみの焼却灰の安全性を検証せず、市民への充分な説明も尽くさないまま、海面埋立の再開を25日に発表し、翌日から実施しました。わたしたちは市のごみ焼却灰海面埋立再開に強く抗議するとともに、疑問を質し、問題解決のための要望を提案しますので、誠意ある回答をお願いいたします。

第一、25日に記者会見をして26日に海面埋立を実施するということは、市民が意見を出す間もなく、いわば意見の封じ込み強行ではないでしょうか。それは川崎市の環境を放射能物質の汚染にさらし、市民生活の安全を脅かす行為であり、ひいては東京湾を放射性物質で汚染し、長年の公害克服の営為と核兵器廃絶平和都市宣言の精神を放擲し愚弄する行為ではないでしょうか。

第二、ゼオライト採用の理由及び「安全」とした根拠について
ごみ焼却灰にゼオライトを混ぜることで、ふくまれる放射性セシウムを完全に除去できるのでしょうか、その工学的科学的な根拠を分かり易く説明してください。

(連絡会議の見解):環境局は、ごみ焼却灰に含まれる放射性セシウムをゼオライトで吸着し、海水の濃度を「管理目標値10ベクレル/L」を確保するという。しかし、融点28℃のセシウムは、液体でも気化するため、水温上昇やセシウム濃度低下など、条件が変われば吸着されたセシウムはゼオライトから脱着し、降雨と風により大気中へ飛散して海中、更に地下へも浸透する。また従来から、環境を汚染する放射性物質32種を文科省は示し少なくとも10種については規制値を必ずクリアするよう指導している。セシウムだけを取り上げ、他の放射性物質を等閑視することは、安全安心な市民生活の安定的な確保ができなくなる。
第三、実験方法の問題点
市の「安全宣言」はビーカー実験の結果を根拠にしており、気象の変動、海水温の変化などをどのように想定した実験だったのでしょうか、その実験計画・結果・評価の情報を公開し、その妥当性を説明して下さい。

(連絡会議の見解):「実験室」レベルの小規模(ビーカーレベル)実験のデーターをもって現実の処分場に埋め立てた場合の結果を推量するのはあまりに飛躍が大きく非科学的です。少なくとも、埋立事業所施設の海面及び陸上の実態に即した、中規模の模擬実験(水槽等を用いた実験)過程を経ることが常識的な科学的手法の一つでもあり市民感情を納得させるものです。

第四、規制値以下でも重大な事故は発生する
市の努力で放射性物質を希釈し規制値以下の数値にしてもセシウムが含まれる大量水を東京湾に放流すれば、生物濃縮・食物連鎖による危害をもたらしませんか。

(連絡会議の見解):市の想定通りに、海面埋立された焼却灰からのセシウム溶出が低く抑えられたとしても、東京湾に放流される放射性物質の総量は増える一方です。このことは希釈した、基準値以内の有機水銀濃度であっても水俣病が発生した過去の公害病事件の経験からも黙過できません。 
「安全神話」の崩壊は、放射性物質を環境汚染防止のひとつと法定の緒に就いたばかりです( 環境基本法13条の適用除外の削除 )。東京湾に面する浮島つり園で市民が釣った魚は、放射性物質の生態濃縮によって数万倍から数百万倍に汚染されるでしょう。市は外洋への放流水はセシウムを定期的に測定するから「安全」に管理できると考えているようですが、しかし一旦外洋に放出されたセシウムは取り除くことができないのです。

第五、「試験的埋立」の停止と対案の検討を要望
市民の納得できる回答がない限り、「試験的埋立」を即時停止し、並行して現在のやり方以外の対案を市民とともに検討することを要望します。

 (連絡会議の見解):最終処分には土木技術の有効性を発揮できるベントナイト使用の「地中ピット処分」などもあり、放射性物質による汚染防止を既存の処分方式に拘泥せず、海面埋立よりも汚染流出の防止効果が高い「安全」で廉価な方式の検討・提案は可能だ、と私たちは考えております。どこまでも東京湾への汚染拡大に不安と疑問の残る海面埋立にこだわらず、市民、市議会、有識者、企業にひろく呼びかけ、(「汚染焼却灰の最終処分に関する川崎市対策会議」などに)衆智を結集し、海洋汚染防止を第一とした処分方法を検討されるよう要望します。
なお、この質問は市民の皆さんに一般公開致します。市には市民の負託に応えるご回答を頂きたく、5月11日に市民の前で説明してくださるようにお願いします。 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


○○○党 御中
                             2013年5月1日

                      放射能汚染を考える川崎市民連絡会議
                      共同代表:今井克樹、川口洋一

本日、5月1日の午後1時に阿部孝夫川崎市長宛に、「公開質問 放射性物質に汚染されたごみ焼却灰の海面埋立開始についての抗議と要望」を提出したことをご報告いたします。

わたしたちは、放射能汚染されたごみ焼却灰を浮島の海面埋立を強行した措置に抗議し、川崎市民としてこの問題に取り組むべく「放射能汚染を考える川崎市民連絡会議」(共同代表:今井克樹、川口洋一)を立ち上げました。メンバーは各運動体やこの問題に関心をもつ市民が個人の立場で参加しています。

「抗議と要望」の要約:
川崎市は「公害の街」からの脱却と、「核兵器廃絶平和都市宣言」をした都市であり、その精神と伝統に従えば、放射能汚染されたごみ焼却灰の海面埋立は自然を汚染し市民の健康を損ない、市民の不安を煽るものです。市は即刻「試験的埋立」を停止し、市民の納得できる説明を行い、市民と共に問題解決のための対案を検討すべきです。

以下、貴党のご見解を伺いますので、よろしくお願いします。
1.「公害の街」からの脱却と「核兵器廃絶平和都市宣言」の精神と伝統から今回の、市民の意見を封じ込めるような市の措置をどのようにお考えですか。
2.放射能汚染されたごみ焼却灰の海面埋立を実施した川崎市の政策に関して貴党はどのような対応をされましたか、その理由をお聞かせください。
3.私たちが市長に提出した要望と提案に対する貴党のご見解を伺います。
第一、ゼオライト採用の理由及び「安全」とした根拠について、
第二、実験方法の問題点
第三、規制値以下でも重大な事故は発生する
第四、「試験的埋立」の停止と対案の検討を要望
4.貴党は市民の提案を受け、市民・議員・行政・有識者・企業が放射能汚染されたごみ焼却灰の海面埋立について一緒に話し合い、問題点を探り、具体的な解決策を検討していくことに賛同されますか。もし反対の場合は、その理由をお聞かせいただきたい。

以上です。ご協力ありがとうございました。


 

1 件のコメント:

  1. 4月13日 毎日新聞
    放射性物質含む廃棄物、悩む自治体 行き場を失う焼却灰

    国基準に従うだけでは解決せず
    福島第1原発の事故で全国に飛散した放射性物質は、發災から2年を経た今ち県内自治体を悩ませる。藤災前は建築資材に再利 用されだり、埋め立てなどで処分されたりしていたごみや下水汚泥は焼却灰になることで、放射性物费が漠縮されてしまろ。受け入れる民間業者や処理施設近隣の住民の理解が不可欠だが、一部の自治体では、処理できない焼却灰が行き場を失ってたまり続けている。県内自治体の現伏を探った。

    報道後に拒否 藤沢市
    約1600卜ンの下水汚泥焼却灰を一時保管している藤沢市。たまり続ける焼却灰を処分するため、同市は土砂などを混ぜて溉 度を下げた上で建築資材に再資源化する装圈を新股し、来年2月から稼働させる。
    震災前はセメン卜原料などとして民間企業に再利用を委託していた。だが震災後、焼却灰の放射性物質の濃度は、最大で1キロあたり6415ペクレルを検出し、建築資材に利用できる国の基準(1キ□あたり100ペクレル以下)を大きく超えた。これまで委託していた業者は「濃度が高い」として受け入れを拒否した。

    焼却灰は当初、下水処理施設で焼却炉を備える辻堂浄化センター)に保管していた。ところがスペースがいっぱいになり、現在は市内にもう1力所ある、大清水浄化センターに倉庫を建て、保管している。倉庫を建築 した時には、地元住民向けの説明会を開いた。保管期間は最長5年とし、その間に焼却灰を処理をする方針を示したことで同意を得た。

    導入予定の装置匾は、土砂や水と焼却灰を混合してセメントなどの原料を作るもので、受け入れ業者の望む基準に疝じて混ぜる土砂などの割合を増やす。迁辻堂浄化センター内に設置し、約5000万円の整備費用と月額約540万円のリース代などは、東京電力に賠僂請求するという。

    ところが今月、焼却灰を混合して処理する装置の導入方針を一部メディアで報道されると、数件の苦情が同市に寄せられただけでなく、当初は受け入れを予定していた2社のうちの1社が拒否に転じた。市は「風評被吾を気にしているのだろう」と見ている。

    独自に埋め立て 川崎市
    川崎市は震災後、ごみの焼却で生じた主灰(しゅばい)(燃え殻)の海面埋め立ては続けたが、より放射性物質が濃縮される飛灰(ひばい)(ばいじん)は11年7月から、下水汚泥焼却灰は同年5月から、コンテナに入れるなどして浮島地区で一時保管を続けた。

    国が海面埋め立てに関する明確な基準を示さない中、市は国立環境研究所との共同研究などを基に昨年11月、国の基準(排水1リットルあたり75ペクレル以下)より厳しい、排水1リッ卜ルあたり10ペクレル以下とする独自基準を設けた。 さらに放射性物質の流出を防ぐ鉱物を散布する施設なども導入。ごみ飛灰は対策が整ったとして、海面埋め立てを今月中旬から開始することを決めた。埋め立て地の排水の濃度は1リッ卜ルあだり3〜4ペクレル程度を予想している。

    ただし、埋め立て対象は、今後新たに発生する飛灰のみ。これまで保管してきた飛灰や下水汚泥焼却灰については、最大で1キロ当だ:り1万32 00ペクレルを検出するなど放射性物質の趣度が高いため、引き続き処理方法を検討している。

    飛灰の埋め立て処理開始に当たっては、周辺の企業や町内会長に個別に説明をしたほか、今後ち要望があれば説明会を開催するとしている。

    攒浜市は埋め立て計画凍結 その他
    横浜市は県内で最も多い2万2800卜ンの下水汚泥焼却灰を保管している。11年9月に下水汚泥焼却灰(1キロあたり展大 6468ペクレル)を南本牧廃棄物最終処分場(中区)へ海面埋め立てする方針を示したが、港湾関係者や地元住民らの反発で計画は凍結されたまま。ごみ焼却灰については、当初から主灰だけでな<、飛灰も原発事故前と同様に海面埋め立てを行っている。

    陸地に管理型処分場を持つ県内の多くの自治体は、震災後も変わらず埋め立て処分を行っている。ところが民間業者に埋め立てや再利用在委託している自治体は、11年11月に国の基準が示されるまでは受け入れを拒否されたところが相次いだ。県が管理する下水処理場4力所では、最大で計5300卜ンの汚泥焼却灰がたまっだが、12年1月から処理業者による受け入れが再開され、現在は相模川流域2力所の3860卜ンにまで減少した。

    震災前は全量を再利用していた横須賀市だが、現在は排出される焼却灰の3割程度しか受け入れてもらえず、残りは市の浄化セ ンター内で保管している。鎌倉市も業者が受け入れを止めていた、11年度の約360卜ンの処理方法がまだ決まっていない。

    「取り組むほど理解得られぬ」
    「まじめに事実を明らかにし、取り組むほど、なかなか理解が得られない」。焼却灰の処理に悩む自治体担当者が漏らした。対策が市民の知るところとなったため再利用や埋め立てが進められな
    1キロ当たり8 0 0 0べクレル以下=廃棄物を管理型処分堤に埋め立てできる
    1キロ当たり100ペクレル以下=廃棄物を建築資材などに再利用できる

    ▽1リットル当たり75ペクレル以下=1キロ当たり8000ペクレルを超える特定廃棄物を水面埋め立てする際に発生する排水の濃度
    ▽1リットルあた010ペクレル以下=飲料水、海水浴揚の濃度

    県内自治体にたまる下水汚泥焼却灰
    保管量(トン)
    横浜市22800
    川畸市7438 (ごみ焼却灰)15500
    相模川流域(広域処理)3860
    横須贸市1634
    藤沢市1600
    鎌倉市360
    箱根町15

    返信削除