2013年4月14日日曜日

It's a show time. 構成、歌唱力、演技力抜群、お勧めします:「ジーザス・クライスト=スーパースター」 


今日は妻とアリーナ・ツアー2012『ジーザス・クライスト=スーパースター』観ました。素晴らしい出来です。是非。お薦めします。私は妻とよく映画を観ますが、感動したという言葉は初めて聞きました。

「ジーザス・クライスト=スーパースター」は40年前に北米で公演され、それ以来、世界各地の現地語で訳されて公演されているミュージカルの名作です。今回は2012年10月5日にイギリスのバーミンガム・ナショナル・インドア・アリーナでおこなわれた公演を、「ライブ感をそのままに閉じ込めたクオリティーの高いデジタル映像&音楽」で公開されました。ご存知の「キャッツ」「オペラ座の怪人」などの傑作ミュージカルを作曲してきた作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバーの傑作です。

私は40年前、日本で公演されたときに舞台を家族で観に行ったのですが、何故か記憶が薄く、砂漠でのロケハン風に作られた映画の印象が強いのです。その時のマグダラのマリアの歌った"I do not know how to love him"は今でもメロディを覚えているくらい印象的でした。しかし今回のマグダラのマリア役は、元スパイス・ガールズのメラニー・C(Melanie C)で、清純なイメージより、娼婦として少し暗い陰のある感じです。その歌の中で、I have changed・・、イエス出会ってなぜか自分は変ったというくだりで濃い化粧をその場でふき取り、その人間としての変化を実際に感じさせます。

舞台が終わり全員挨拶するところでユダとイエスが一緒に出てくるのですが、「イスカリオテのユダの目を通して、イエス・キリストの磔刑までの最後の7日間を描き、全世界を感動の渦に巻き込んだ」とチラシにあるようにユダの役柄はこの舞台では大きな比重を占めています。イエスを裏切るユダはこの社会の常識を体現し、そこから死へとまっしぐらに突き進むイエスを心配しながらも理解できず、イエスを売った自分を責め苦しみ自殺します。

イエスの演技、歌唱力も素晴らしいのですが、何といってもこの舞台(映画)を成功させているのは、設定は聖書にある通りエルサレムなのですが、現代のロンドンを彷彿させる、まさに今のこの社会の矛盾の中で生きる若者としてイエスを描ききった演出の力によると思います。新約聖書のイエスが裁判に掛けられ鞭打たれ十字架にかけられて殺される部分を完全に現代の英国の現実の中で演じきります。大祭司、ピラト、ヘロデは現代の裁判官、ディスクジョッキー、高級官僚で、反乱する若者を抑えつける支配者層の人間になっています。

冒頭は、Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)で世界に拡がった青年の反乱から始まります。青年たちはスマートフォーンを使い、今の若者そのものの恰好です。新約聖書の背景を現代社会の中で演じてもまったく違和感を感じないのは、やはりシナリオライター、演出家が聖書をしっかりと理解し、有名な聖書にあるイエスの言葉を現代の状況の中に置いてもそのまま通用するだけの設定・解釈をしているからだと思いました。

作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバー本人が舞台に上がり挨拶をするのですが、本人も素晴らしいできだと興奮していました。演技力、歌唱力、舞台構成そしてロックを舞台で演奏するミュージシャン、どれをとっても一流だと思います。

私たちは夫婦とも60歳を過ぎていますから普段の映画鑑賞は一人1000円なのですが、この映画は特別公演ということで一人2000円でした。それでももう一度観たいですね。イエスの生き方に関心のある人は是非、鑑賞ください。感動しますよ。しかし残念ながら、川崎ではチネチッタでわずか1週間の公演で、全国で公開されてはいないようです。

ミュージカル公演のライブ映像 アリーナ・ツアー2012『ジーザス・クライスト=スーパースター』予告編をごらんください。

http://www.youtube.com/watch?v=yi8I6m2r7T4


4 件のコメント:

  1. NNAFのとーちです。
    こういう話題だけ反応するのもなんなので、MLではなくこちらに書きます。
    今回の映画は、関西での上映は終わっており見逃してしまいました。残念!
    私は52歳ですが、私にとっても73年の映画版ジーザス・クライスト=スーパースターは強烈でした。まだ中学生でしたが、それまでの宗教・キリストといった概念から逸脱した斬新さに衝撃を受けたのを覚えています。音楽的にも、7拍子をあんなにすんなり聞かせるなんて、と驚きました。
    その後レコードはあったのですがアンドリュー・ロイド=ウェバーがあの映画版の演出を気に入っていないというウワサで、DVDやブルーレイにはなってませんでしたが、今回調べてみると、2000年版、20012年版と合わせて5月22日発売でブルーレイ化されるみたいです。見逃してしまったのでこれを買ってみることにします。
    それにしてもすっかり忘れていたのを、思い出させていただきました。ありがとうございました。

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  2. ジーザス・クライスト=スパースター アリーナ・ツアー2012、無理して行ってきました(笑)。音楽のあまりの素晴らしさに圧倒され、全く聖書通りでない大胆な解釈ながらエッセンスの凝縮に感動しました。

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  3. そうですか、よかったですね。私は脚本家はしっかりと聖書を読み込んでいるとみましたけど、いかがですか。それにしても現代の中でイエスの時代を語っても違和感がないのがすごいですよね。

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    1. ご返信どうもありがとうございます。もちろんおっしゃる通りで現代を舞台に福音が大胆に再構築された作品となっています。前半マリアが歌ったイエスへの愛の歌を、後半ユダも歌ったことに深く感動し、むしろ自分の説教以上に聖書に向き合う真摯なあり方に学ばされました。

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