2013年3月28日木曜日

ジュネーブ市長 レミー・パガーニから、前双葉町長 井戸川克隆への書簡


NNAAとして参加してるeシフトのMLに「ジュネーブ市長 レミー・パガーニから、前双葉町長 井戸川克隆への書簡」が紹介されていますので、多くの方に読んでいただきたいと願い、私のブログで掲載させていただきます。なおこの書簡は井戸川さんの承諾を得られたものです。
前双葉町長 井戸川克隆の辞任には、町長の独善という批判の裏側に、双葉町に中間貯蔵施設を造れという声があり、それを井戸川さんは断固拒否していきたといういきさつがあるようです。

再稼働を公言する安倍首相の登場で、3・11福島事故はわずか2年で「風化」する様相を呈しています。被害者への補償問題も進展がなく、事故の徹底的な責任追及もなされず、曖昧なまま、想定外の津波による事故というところで決着がつけられるのでしょうか。時代の流れは、「3・11以前の日本を「再稼働」する」(小熊英二)方向に動き始めています。

3月26日の朝日新聞は、「原発事故原因 新事実なし」「原子力学会中間報告 独自調査せず」という見出しで、「東京電力福島第一原発の事故原因を調べている日本原子力学会の事故調査委員会は27日、想定を超える津波で冷却機能が失われたのが原因とする中間報告を公表した」と伝えています。東電の国会事故調査委員会を嘘で現場調査を拒んだことなどはまったく問題にされてませんね。

世界中が日本を注目しているのですが、このまま3・11前の日本の再稼働に進むのでしょうか。私たちは地域社会のなかで、そして反原発を求める世界の市民と連帯してそのような「再稼働」に抵抗します。


(以下転載)
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ジュネーブ市長 レミー・パガーニから、前双葉町長 井戸川克隆への書簡
http://rollienne.jp/?p=340
井戸川克隆様
                           ジュネーブ 2013年2月13日
拝啓
昨年のジュネーブご訪問に改めて感謝申し上げます。Palais Eynard(市庁舎)に井戸川さんをお迎えでき、大変光栄に存じます。2011年3月に発生した原発事故後、日本国民の皆さんが直面している問題の理解がより深まりました。

1月23日に双葉町長を辞職されたと伺いました。苦渋の決断だったとお察しいたします。井戸川さんは福島県の首長の中でただ一人住民を県外に避難させ、原発事故の深刻な状況に対し無策、無責任な態度を取る政府、東電を公然と糾弾されてきました。放射能被害から町民の皆さんを守るために、あらゆる措置を講じられてきました。辞職されたことは残念に思います。

昨年10月にお会いした際、チェルノブイリと日本の避難基準を比較した表を見せて下さいましたね。日本政府が、直ちに健康への影響はないとの見解から、年間の放射線許容量を20mSvまで引き上げたと知り驚きました。ご存知の通り、ICRPは一般公衆の年間被曝許容限度を1mSvと勧告しているほか(原発作業員の被曝許容限度は年間20mSv)、子供は大人よりも放射能に対する感受性がより高いことは周知の事実です。

また、放射能が及ぼす健康被害についても幅広く論文化されており、最近ではニューヨーク・サイエンス・アカデミーが2009年に発行した研究書に詳細が述べられています(脚注にあるA.ヤブロコフ博士、A.ネステレンコ、V.ネステレンコ著の「チェルノブイリ:事故が人々と環境に与えた影響」が該当する研究書です)。そして、多くの独立した研究者が数十年来の研究結果から、被爆に安全なレベルはないと唱えています(ICRPも閾値なし直線仮説を認めています)。

ICRPが勧告した年間被曝許容限度の引き上げ正当化の立証責任は、日本政府にあります。しかし、そんなことを実証できるのでしょうか。実際には、これ(1mSv)以下の低線量被爆による健康被害が認められていることから、許容限度などは意味を持たないのです。政府に福島県民の皆さんがモルモットにされている事態は許しがたいです。事実、政府はIAEAとWHOの協力のもとに、福島県民の健康実態のデータを集めようとしています。

これは人権侵害であり、即刻阻止されなければなりません。井戸川さんは、今後も政府当局による非人道的な扱いから市民の皆さんを守るために戦っていかれると伺いました。もっと多くの人々が共闘することを望みます。

人々が高濃度汚染地域での生活を強いられていることは到底受け入れられません。政府と福島県が、双葉町の皆さんを致死的なレベルに汚染された地域に帰還させようと画策していることは狂気の沙汰としか言いようがありません。

また、福島県の約40%の子供達に甲状腺の異常が認められたことは由々しき事態です。福島県外でも、甲状腺異常の発生率が増加していると伺いました。このような非常事態の中、医療関係者は真実を隠蔽し、被曝の影響を否定しています。お会いした時にも井戸川さんが強調なさっていた通り、日本人はチェルノブイリから学ばなければなりません。福島の状況は、住民の皆さんの健康被害の発生頻度を見る限り、チェルノブイリよりも更に深刻に思えます。

ご存知かと存じますが、チェルノブイリ周辺で甲状腺ガンの発生率は1990年代に入ってから増加し始めました。双葉町では約300人の住民の皆さんが、福島第一原発の第1号機爆発により発生した高濃度の放射能の灰を浴びたと仰っ ていましたね。にもかかわらず、政府や医療関係者は、被害者の皆さんに対して健康調査を実施しなかったとのこと。会合の際お約束しましたが、ジュネーブ市は、医療関係者やIndependentWHOなどをはじめとする
団体と協同して、適切な健康調査が実施されるよう、最大限サポートしていく所存です。

他に何か協力できることがありましたら、遠慮なく仰って下さい。今後益々のご活躍をお祈りするとともに、正義を勝ち取るための戦いに多くの皆さんが団結することを望んでやみません。くれぐれも健康に留意され、またジュネーブでお目にかかれることを楽しみにしております。
                                          敬具
ジュネーブ市長
レミー・パガーニ

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前福島県双葉町長・井戸川 克隆さんの辞任にあたってのコメント
http://www.town.futaba.fukushima.jp/message/20130123.html/

私たちは前例の無い避難という過酷な状況に置かれています。いつまでも海原を漂流するわけにはいきません。早く上陸地を国が準備して、再興できる日を求めてきました。しかし、時間が足りませんでした。放射能のないところで平和な、皆が集える町ができることを祈り町民の安寧を願って、私は本日、双葉町長の辞職申し出をしました。

(略)

 この事故で学んだことは多い。我国でも人命軽視をするのだと言うことがわかった。国は避難指示と言う宣戦布告を私たちに出した。武器も、手段も、権限もない我々はどうして戦えるだろうか。

 白河市にアウシュヴィッツ博物館がある。ナチスがユダヤ人を毒ガスで虐殺したことは衆目の事実だ。福島県内では放射能という毒で県民のDNAを痛めつけている。後先が逆だ。この状態から一刻も早く避難をさせること以外に、健康の保証は無い。その後に十分時間をかけて除染をやれば良い。

 人工放射能に安全の基準を言う実績が少ない。20msv/yで住めると言う人が家族と一緒に住んで示すことが先だろう。その安全が確認出来たら福島県民は戻ればいい。これ以上モルモットにするのは、外国の暴君が国民にミサイルを撃つのと変わり無い。

 福島の復興なくして日本の再生はないとは、人口減少の今、将来の担い手を痛めつけていては、真に福島の復興には繋がらないと心配している県民は少なくないと思う。双葉町は原発を誘致して町に住めなくされた。原発関連の交付金で造った物はすべて町に置いてきました。

 原発の誘致は町だけで出来ない、県が大きく関わってはじめて可能となる。私たちは全国の人たちから、「お前たちが原発を誘致しておいて被害者面するな」という批判を受けている。私たちはどこにいても本当の居場所がない今、苦悩に負けそうになりながら必死に生きている。子どもたち、高齢者、家計を支えなければならないお父さん、お母さんたちの悲鳴を最初に菅総理に訴えた。変わらなかった。そのために私は野田総理に国民としての待遇を訴えたのです。しかし、今の町民の皆さんは限界を超えています。何とか国には町民の窮状を訴え、町民には叱られ役をやり、マスコミに出されるようにしてきました。

 県にも窮状を訴えています。最近も質問をしました。回答は具体的な内容ではなく失望しました。知事は福島の復興のために双葉町に中間貯蔵施設を造れと言うので、双葉町の復興はどうするのですか、と聞くと答えてくれません。そこで、踏み込んで私に町をくださいと言いましたがやはり答えませんでした。これでは話し合いになりません。

 環境省の局長にどうして双葉に二つの場所を決めたのですかと聞いたら、分かりませんと言いました。では会議録をみせてくださいと聞いたら、後日ありませんと言う返事でした。このようなことで、調査だけで建設はしないからと言われて、ハイいいですよとは言えません。

 町には古くから先人が築いてきた歴史や資産があります。歴史を理解していない人に中間貯蔵施設を造れとは言われたくありません。町民の皆さんが十分議論した後に方向を決めていただきたい。若い人に決めてもらうようにしてほしい。

 今まで支えていただきました町民の皆様、双葉地方各町村をはじめ福島県内各市町村の皆様、国及び福島県そして事故発生時から避難救済にご支援いただきました国民の皆様、国会議員の皆様、全国の自治体の皆様、埼玉県と埼玉県議会の皆様、県民の皆様、加須市と加須市議会の皆様、市民の皆様、さくら市の皆様、医療界の皆様、福祉関係の皆様、貴重な情報の提供された方、最後に国内並びに世界中からボランティアのご支援をいただきました皆様、この避難を契機にご支援いただきました多くの皆様に支えられて、ここまで来ることができました。心から感謝を申し上げまして、退任のご挨拶に代えさせていただきます。

 長い間誠にありがとうございました。
 
 平成25年1月23日


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