2012年9月21日金曜日

川崎は3・11と同規模の直下型地震で数十万人が死傷する、市にその危機感無し(参考資料の紹介)



川崎は3・11と同規模の直下型地震で数十万人が死傷する、市にその危機感無し

1.川崎市の危機管理室との質疑応答
今日は9月18日の「川崎市被害想定調査の見直しの中間とりまとめなどについて」市長記者会見の報道が翌日なされたものですから、どのように「中間とりまとめ」をしているのか教えてほしいということで、事前に電話予約をして危機管理室を訪問しました。

対応してくださったのは、総務局危機管理室の浅岡担当係長でした。浅岡さんは記者会見のときの資料を基にして「被害想定調査の見直しの中間とりまとめ」について詳しく説明をしてくれました。以下、彼との質疑応答のなかで私が質問した内容(浅岡さんはしきりに答えられず申し訳ないと恐縮していましたが、私はそれが今の川崎の危機管理室の実情だと感じました)を列記します。

川崎市の防災対策スケジュールによると、「地域防災計画第一期修正」が去る7月になされ、今月の「見直し」を経て、来年の3月に「地震被害想定調査の実施」が「公表」され、いくつかの素案とパブコメの後、最終的に「地域防災計画第2期修正」が来年9月に「公表」されることになっています。

2.川崎市の直下型地震って、震源地はどこに設定しているのですか。
川崎市は大規模海溝型地震として「相模トラフ沿いの地震」と、「川崎市に最も大きな被害を及ぼす地震」として「川崎市直下の地震」(以下、川崎直下型地震)をあげています。私は「川崎直下型地震」の震源地はどこですかと尋ねたところ、川崎直下型だから「地震の始まり」は川崎市内と言ってましたが、最終的にはそれは東京都の東村山市であり、そこを震源地とした理由は南北に細長い川崎市に「満遍なく」影響を与える位置にある活断層があるからで、地震は点より面で捉えるから、今回は以前から震源地としていた地点より2.5キロ離れたところを想定したということでした。

その根拠は、東大の佐藤教授がこれまでの関東地区における地震の「理論」(仮定)を変更し(アップデートということでした)、これまでの想定より震源地盤モデルが3キロ深くなり、それを国と神奈川県が採択した結果、川崎直下型地震の震源地の移動を考えたということのようです。

しかし3・11以降、地震は既存の活断層でなくどこで発生するかもわからないので、もっとも地震が起こっては困るところを想定するというのが、地震学会の一般的な意見ではないのか、そうだとすると、川崎市南北に「満遍なく」影響を与える地点より、最も大きな被害が想定される、川崎南部の工業地帯である臨海部(東京湾南部)で地震が発生した場合を川崎市の直下型地震として考えるべきではないかと質問しました。

3.東大の佐藤モデルを採用した根拠はなんですか、反対意見はないのですか。
東大の佐藤教授の「理論」(仮定)を採択した根拠は何か、地震学会は3・11によってこれまでの理論は変更を迫られており、佐藤さんとは違う意見もあるはずです。佐藤理論を推した「東日本大震災対策検討部会」(学識経験者として7名、庁内関係部局も部会に参加。しかしどうしてここに市民が入っていないのでしょうか?)内の検証経過を公表できるのか、と質問しました。おそらく、東京大学理学部教授のロバート・ゲラー氏などは異なった意見をおもちなのではないでしょうか。

『日本人は知らない 「地震予知」の正体』を読んで
 http://www.oklos-che.com/2011/09/blog-post_14.html

4.臨海部を震源地の可能性として取り上げなかった理由はなんですか。
川崎直下型地震として、最も大きな被害が想定される臨海部で発生する地震の可能性について危機管理室から「検討部会」に検討を依頼しなかった理由は何でしょうか、私たちは質問状の形で何度か問題提起をしたにもかかわらず、どうして危機管理室はその市民の意見をとりあげなかったのでしょうか。

2011年6月2日、1年以上も前にこの問題を指摘し、増子室長から「被害想定を行う上ではあらゆるケースが想定されますので、本市の防災対策に必要となる想定を今後検討してまいりたいと考えております」という回答をいただいています。http://www.oklos-che.com/2011/06/blog-post_03.html

5.川崎北部の急斜面の崩壊、中部の高層ビルについての地震対策はどうなっているんですか。
3月に発表された「川崎市地域防災計画」で、「崖崩れが発生するおそれがある傾斜度30度以上で高さが5メートル以上の急傾斜地崩壊危険箇所は506箇所(平成13年度調査)あり、市北西部に集中している」という記述があります。そこは直下型地震による影響はあるのか、調査したのでしょうか。

また、その場では話になりませんでしたが、中部の小杉を中心にした高層ビル街が長周期地震によってどのような影響を受けるのか、いまだ学問的な実証結果による被害想定もだされていないと聞いていますが、早急に対策を立てなければならないでしょう。

6.川崎市は市民と実際の対話をして災害対策を一緒に考えようとしないんですか。
川崎市は危機管理室を通してパブリック・コメントで市民の意見を聴いてきたと言っていますが、300ページもの資料を読みこなし意見を出す人は何人もいないはずです。このように対話をすればいろんな危機管理室が答えられないような問題もでてくるではないですか、どうして市民と直接対話をする場を設定しようとしてこなかったのか、それは川崎市の政策の問題(やろうと決断すればできること)ではないのでしょうか。

7.津波・地震が起こった場合臨海部はどうなるのか具体的な調査項目はあるのですか。
地震の影響に関してはコンサル会社として筑波の応用地質という会社を使っているということはわかりました。今回の「中間見直し」で死亡者数などは地震による建物倒壊による限られたものですね。津波や臨海部の油や劣化ウラン、塩素などの危険物が流れ出る危険性があります。また自動車による津波火災が問題になっており、それらの原因による死亡者はどこで算定させるのですか。

コンサル会社はどこで、コンサル会社に調査依頼した項目はあるのでしょうか。そもそも危機管理室にそのような危機感、問題意識はあったのでしょうか。コンサル会社はクライアントの依頼に応じて一般的なソフトやマニュアルを活用して回答してくるだけだから、市からの調査依頼の項目が重要になってくるはずです。それを公開できますか。

8.臨海部の工場内の危険物資の内容と管理状態、その他液状化の実態を報告させる法的根拠は。
臨海部にあるすべての工場に対して側方流動・液状化の実態、保管する危険物の実態、管理方法をアンケート調査をするということですが、それは市民の生命と直結する問題なので、回答を義務付ける規制が必要なのではないですか。条例化については検討したのでしょうか(一切ない、ということでしたが)、今後はどうでしょうか。

以前市民フォーラムの場で、増子室長は、臨海部にある石油タンクは地震が来ても側方流動・液状化の影響はなく、タンクが壊れたり、そこから石油は漏れることはない、と断言していたのですが、数多くある石油タンクのすべてに蓋があるわけでもなく、地震による液状化、側方流動に対して臨海部の石油タンクには問題はないとは言えず、早急な対策が求められるはずです。

9.津波の高さは防潮堤を超えるんじゃないですか。
川崎市の防潮堤は3.1メートルで神奈川県の発表では3.7メートルの津波が来る可能性を指摘しています。市は百年に1回くるかどうかの地震対策を考え、千年単位でくるかもしれない大地震は考慮せず、基本的にはハード部分の改良は最低限にして、後は「自助」「共助」のソフトで災害に対応しようとしていますね。

しかし確率の問題でなく、実際に3・11という未曽有の地震が起こったわけだから、行政は市民を災害から守るべく最大の努力をすべきではないですか。限られた予算の中から決めるという発想に問題があるのではないですか、市の政策の問題として超党派の市会議員、市民、行政、企業が一体となって対話を進める必要があるのではないでしょうか。

10.津波の高さの想定はいつ決定するのですか。
地震に関しては東大の佐藤「理論」を採択したようですが、地震の津波の高さに関してはどうして明確な想定を出せないでいるのでしょうか、3.11以降、もう1年半も経つのに、津波の高さの想定させできていないというのは怠慢ではないですか。

11.津波による自動車火災や、臨海部の油の流出による火災の被害想定は。
これまでの川崎市の想定でも津波による水没は川崎駅周辺まで及んでいますね、NHKで放送された津波による自動車火災は、市街地においては避難場所に指定した大きな建物に車が流されてきてそこで炎上する可能性を指摘しています。そうなると死亡者数は何十万人という単位になるのではないかと市民は危機意識をもっていますが、それに比べると、災害者による死亡者数ゼロをめざすというのはあまりにも危機意識に欠けているのではないですか。

2012年9月3日(月)放送 津波火災 知られざる脅威
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3240.html
「安全であるはずの多くの避難場所が、津波火災に襲われやすいというのだ。」
「津波火災をはじめ、震災の最新の研究から明らかになってきた「複合災害」のリスクにどう備えるか、予測や対策が困難とされる津波防災の最前線を検証する。」

12.臨海部で働く人たちのいざという場合の救出方法は、指示体系はどうなっていますか。
臨海部の市の職員と話し機会があり、彼らは3・11のときに逃げるところもなく、幸いすぐ近くの5階建ての建造物に逃げ込めたが、もし川崎直下型の地震があれば、死ぬ覚悟はできていて家族にそのように話しているとのことでした。

実際、臨機部で働く人たちはもし、3・11のような地震・津波が川崎を襲った場合、東京湾での船の使用は困難になり、市街地につながるトンネルもだめ、ヘリコプターでの運送もだめだということだとどのような救命策が市にあるのでしょうか。一体、誰が状況判断し指示をだすのか、危機管理室か(ここは情報を集めて調整をするだけで指示する権限はないそうです)、市長か、消防署(国、県?)か。

以上の質疑応答のなかで危機管理室の担当係長は私の質問にまったく答えられず、改めて回答することを約束しました。危機管理室の回答を待ちたいと思います。私たちは批判のために批判ではなく、対話によって川崎市の災害対策を一緒に考えていこうとしているということを最後に伝え、危機管理室内部においても市民との対話の必要性を自分のことばで上司に伝えてほしいと話をしました。

市民、市会議員、有識者、企業、行政が一堂に会して災害対策(被害想定、現状及び
市の対策計画の問題点などを含む)を早急に話し合い、その結果を具体的な市の政策に反映させるようにしたいものです。

(2012年9月23日、改定)


川崎市の危機管理室とはこれまで市民フォーラムで何回かお呼びし、増子室長から3・11以降の川崎市の地震・津波災害に対する見解をうかがう機会がありました。私のブログでその話しの内容と疑問点を公開しています。また2010年から川崎臨海部の問題点に関するブログを紹介します。


参考までに:


2012年6月26日火曜日
川崎市は放射能で汚染まみれー焼却したゴミと下水道の汚泥は処理できず、手詰まり状態
http://www.oklos-che.com/2012/06/blog-post_26.html

2012年6月16日土曜日
川崎市の地震・津波災害対策に根本的な誤りがあるのでは?
http://www.oklos-che.com/2012/06/blog-post_16.html

2012年4月5日木曜日
「隠された東京湾炎上」ー川崎市内への影響は?
http://www.oklos-che.com/2012/04/httpwww.html

2011年6月3日金曜日
川崎市危機管理室との応答ーやはり危機意識に欠けています
http://www.oklos-che.com/2011/06/blog-post_03.html

2011年8月22日月曜日
投稿:「川崎市の防災体制を問う」フォーラムが開かれましたー伊藤英雄
2011年8月22日月曜日

2011年8月17日水曜日
「隠された東京湾炎上」ー川崎は想定外の地震でどうなるのでしょうか
http://www.oklos-che.com/2011/08/blog-post_17.html

2011年4月10日日曜日
脱原発・反原発に共鳴する川崎市民のみなさんへー川崎市総務局危機管理室への質問と回答
http://www.oklos-che.com/2011/04/blog-post_5517.html

2010年7月19日月曜日
臨海部についての川崎市民懇談会の報告(修正版)
http://www.oklos-che.com/2010/07/blog-post_19.html





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