2012年3月17日土曜日

ウラン鉱山の実態ーBS1「原子力の残痕」をめぐって

「原発体制を問うキリスト者ネットワーク」(CNFE)のMLで、大久保さんから以下のように、TV報道されたBS1の「原子力の残痕」の内容の紹介と感想文が送られてきました。その文書の紹介と共に、私がモンゴルに関するウラン鉱山の問題にも触れました。(崔 勝久)

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ウラン鉱山の実態    大久保徹夫

皆さま、
BS世界のドキュメンタリーで3/13の深夜にBS1で放送された「原子力の残痕」を見ました。ウラン採掘鉱山の実態報告でドイツ2010年の制作です。

まず、東ドイツでドイツ統一前にウラン鉱石が採掘されていたザクセン・チューリンゲン地方のビスムート鉱山会社の話です。ここでは1トンの採石から数グラムのウランしか取れない。(ということは、100万キロワットの原発を1年間動かすウラン30トンを採取するのに、約1000万トンの鉱石を採掘しなければならない)

ドイツ統一後、1990年に鉱山は閉鎖されたが、高さ60m以上の放射能を帯びたボタ山が1000個以上残され、精錬の際に出る放射能レベルの高い鉱滓(汚泥状のもの)の見渡す限りのダム湖ができる。(精錬されて、最終的に商品としてウラン濃度60%程度の粉末のイエローケーキができる)後に残されたこれらのボタ山と鉱滓湖をどう処理するか・・・。

まず、ドイツ政府は、このザクセン・チューリンゲン地方は非常に危険な地帯であると宣言した。ドイツは20年の歳月と6500億円を掛けて、このボタ山を埋め戻す作業を実施するそうだ。但し、埋め戻した後、百年、千年後に地下水などの環境にどのような悪影響が出るかは分からないとのこと。

環境活動家のミヒャエル・ベライテス氏は「自分の国のエネルギー需要を満たすために他国からウランを輸入することが果たして道義に叶ったことなのか。原子力発電でエネルギーを生み出すことが他国のリスクを生み出している事実に目をつぶっていていいのか」と問う。

ここで働いていた労働者には鉱山作業が如何に危険かなどとは一切知らされておらず、仕事のない労働者が大量に雇われた。インタビューに答えた元労働者は、数を挙げられないほど多くの鉱山労働者の友人がその後亡くなったと言う。

次にアフリカのナミビア共和国の世界最大とも言われるロッシングウラン鉱山(イギリスのリオティント鉱山会社所有)の話。ここからは1トン当たり265グラム以上のウラン鉱石のみ採取され、それ以外のほとんどの鉱石は捨てられる。ここで働く人はナミビアでは特権階級だそうだ。働いている人は皆楽しそうにしている。しかし、ここでも労働者には危険性について何も知らされていない。

経営者は会社がナミビアの社会事業に寄付しているし、ナミビア共和国の経済に大いに貢献できると自慢げに語る。しかし、ここでも鉱山のボタ山、鉱滓のダム湖は地平性の彼方まで続く。

そして、最後にはカナダのウラニウムシティーの話が続く。ここは昔、ウランが出ることで採掘に賑わったが、現在は数十キロ離れたところにより純度の高い鉱石が出る鉱山が発見され、さびれている。しかし、地元の若い女性たちが、地域のあちこちの放射線量を測定し、土を採取している。できるだけ放射線量の強い場所を探して、純度の高い鉱山を発見し、再び以前のようににぎやかな街を取り戻したいとのこと。

放射線に対する恐怖はないのか?とインタビュアーが問うと「地質学者はもっと強い放射線を浴びても大丈夫みたいだから、私たちは大丈夫」と自信ありげに語る。

(感想)
日本はウランをイエローケーキの形で輸入しているが、それに至るまでに、こんないのちを削る労働、そして、後は野となれ山となれと言わんばかり、将来の世代に禍根を残すボタ山、鉱滓ダム湖が残されることは、すべてのウラン鉱山の「解決されない」課題だ。

高レベル放射性廃棄物をどこに埋めるのかも大きな問題だが、このボタ山、鉱滓ダム湖もひどい問題だと気付いた。

しかし、ここでも、危険性を知らされない労働者が、数十年後の問題発生を知らされないまま、働くという悲劇がある。原発は廃絶しないといけないと改めて思いました。

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大久保さんの文書に対する崔の感想文ー具体的なアクションを起こしませんか

毎日新聞のモンゴルについての報道姿勢に疑問(3月13日)
http://www.oklos-che.com/2012/03/blog-post_14.html

ドイツのその酷い状態は実は、オーストラリアやカナダでも同じで、間違いなくモンゴルにおいてもそうだと思われます。それはモンゴルの元「緑の党」党首のセレンゲたちが口を酸っぱくして話している内容で、ウランの発掘そのものを止めようという主張です。

私は昨年10月にモンゴルを訪問したとき、ウランの発掘現場まで行く余裕がありませんでした。その代り、最後の夜、ウランの外資系の会社の技術者だという若い青年に会いました。まだ30歳くらいの彼は、既に肝臓を病んでいると言っていました。本人の自覚では被曝していると思っているようでした。彼から聞く話は、外資系の会社でのモンゴルの株の比率はいずれも20%以下で、結局、海外の会社が世界のウランの15%の埋蔵量をもつモンゴルを食い物にしているということでした。「緑の党」はそのようなモンゴルの現実を批判する正当な視点をもっているということなのでしょう。

番組が取り上げた地方がどのような地方なのか、歴史・社会的な背景まで番組が追っているのかよくわかりませんが、原発基地が作られた地方は日本だけでなく世界どこにおいてもこれまで内在的な発展がなされなかった、孤立したところであったという共通点があると思われます。それは植民地をもたない、戦後の植民地主義というものはどのようなものかという視点からとらえると、国内植民地主義という概念に至るはずです。開沼博が、著書でその概念を何の説明もなく使っていますが、おそらくそうとしか言えないのでしょう。

私はその青年が、自分たちにガーガーカウンターがあればウラン鉱山の地方の村を回り住民の実態と、ウラン鉱山労働者の実態を調べ、それを世界に情報発信したいと話したことが脳裏を離れません。彼らを信頼し、ガイガーカウンターといくばくかの活動費を私たちで送れないものでしょうか。外資系のそれらの会社は各労働者に対して決して内部情報を漏らしてはいけないという契約をしているそうです。黙して語ることのないそれら被曝労働者の実態は必ず公にされる必要があります。

ウラン鉱山の更なる付加価値をつけ国内産業に役立たせたいという建前が、現地での原発建設という計画につながっているのだと思います。これを止めさせ、自発的、内在的な国内産業の育成、モンゴルの伝統・文化を活かし、国内の、地方の民主化を目指すのは彼ら自身の責任であり、役目でしょう。それは私たちも同じです。だからこそ、お互い協力しあい、学び合わなければならないのです。

私はこのような具体的な国際連帯による脱原発の活動をすべきだと考えています。日本の脱原発運動は一国主義では絶対に勝てないと私は確信るからです。モンゴルにガイガーカウンターを送る運動をしませんか、
いかがでしょうか?賛同される方は連絡をください。

参考までに
モンゴルとフクシマの類似点ー開沼博『フクシマ論』を手掛かりに(2011年10月15日)
http://www.oklos-che.com/2011/10/blog-post_15.html

毎日新聞のモンゴルについての報道姿勢に疑問(3月13日)
http://www.oklos-che.com/2012/03/blog-post_14.html

1 件のコメント:

  1. ガーガーカウンターと書いていますがガイガーカウンターの間違いでは?

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