2012年1月10日火曜日

韓国の大学教授が脱原発に立ち上がった!

1月14-15日の2日間、パシフィコ横浜において「脱原発世界会議」が開催されます。李元榮教授は「脱核エネルギー教授会」の事務局長で、ご多忙なところ来日を要請し、私たちCNFEが企画した日韓蒙三ケ国の活動家によるシンポジュームに参加していただくことになりました。

韓国ではアラブ首長国連邦への原発輸出が決定した日を祝日にするほど、原発に対する思い入れが大きく、その分、学者は「御用学者」として政府の原発推進に賛成する立場の人が圧倒的でした。そのため1000名の大学教授を目標にする「脱エネルギー教授の会」の発足は大変注目されます。李教授が当日のプレゼン用の資料として準備くださったものを事前に公表いたします。韓国の状況をもっと詳しく知りたい方はどうぞ、「世界会議」においでください。アジア最大の環境団体である「環境運動連合」の事務局長の金恵貞さんも来日され、そのシンポに参加されます。

その他、韓国の被爆者運動をされている方や、牧師でありながら地域活動の専従として日韓の市民運動を育てることに邁進されている李大洙さんも来日され、CNFEのブースで市民運動の人たちと話し合いの場をもちます。日本の被爆者運動の責任ある立場で活動されている大阪の市場淳子さんも参加されるとの連絡が入りました。この世界会議をきっかけにして各地の運動が国籍や民族を内から貫き、植民地主義によって作られた原発体制を突き破りたいものです。

崔 勝久

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韓国の脱核エネルギー教授の会について
韓国 水原大学 李元栄 (WONYOUNG LEE, PROFESSOR OF SUWON UNIV. OF KOREA)
2012.01.14.


2011年11月11日、韓国では脱核エネルギー教授の会(K-POPONS, Korean Professors’ Organization for a Post-Nuclear Energy Society)が旗揚げした。6人の共同代表と35人で構成される執行委員会がある。現在会員は115人。筆者は執行委員の一人として、総務を務めている。

教授の会が結成されるまで
韓国には、李明博(イ・ミョンバク)政権の初期運河事業に反対して結成された約2500名の運河反対教授の会がある。彼らは2008年の結成以来2011年に至るまで、運河の変形である四大江土木工事に一貫して反対してきたが、3.11核災害を経験するにあたって大きな衝撃を受けると同時に、成功例としてのドイツの脱核ドライブに注目するに至った。そこで、運河反対教授の会の幹部を中心として約20人の教授、カトリック神父、言論人らが6月末にドイツを訪問し、ドイツの脱核とエネルギー転換の成功事例を見聞きしてきた。その内容を8月に国会に発表し、冊子としても刊行している。

韓国における反核運動はかなり長い歴史をもつものの、そこにおいて知識人が声を上げることはほぼなかったと言ってよい。今まさに言語道断の事を進めている李明博政権を含めて、所謂民主的政府として知られる金大中(キム・デジュン)、蘆武鉉(ノ・ムヒョン)のときでさえも、核発電をめぐる問題意識が全くなく、進歩的知識人でさえも核問題に対しては沈黙あるいは同調で一貫してきたのである。

しかし、3.11以後、その姿勢は変わった。ぼんやりと考えられていた危険性が人類存亡の可能性として迫ると、自省が起こり、知識人の役割を問う声が高まった。そうしたなか、個別で行われる活動の限界を克服し、シナジーのために教授の会の結成が必要であるとの要請が起こった。そして、9月からおよそ二ヶ月間の準備期間を経て、11月に出帆式が行われた。

設立の趣旨
教授の会の設立趣旨は、三つに要約される。
1) 核エネルギーの危険性と脱核に関する学術活動の展開
教授の会の存在意義は、学術的な部分の価値を外へ向けて発信し、共感を拡げることにある。学際間の談論と通渉的アプローチを通して、核問題と文明の誤謬を明らかにし、代案となる方向を提示できてこそ、窮極の克服が可能となる。この役割を担う。
2) 脱核への共感を拡大再生産する広報および講演
大衆向けの講演のみならず、広報物を通してさまざまな形態のメッセージを伝えることである。宗教界とも緊密に連帯し、専門知識と関係資料、最新情報を伝える役割を担う。
3) 国内外の連帯を通した勢力の拡大と共同対応
教授の会は国際的な連帯が強みとなる。国際世論づくりは要となるが、留学時代や学問の交流を通して築かれた影響力ある人々との人的ネットワークを活用することが可能であり、国際的な知識階層に向けて能動的に提案し、運営していくことも可能である。また、多様な専攻が集まっているのでそれ自体としてブレイン集団であり、そのシナジー効果を最大限に高められる。

韓国の状況と教授の会の役割
ドイツ社会は既に市民社会が成熟しており、30年間の緻密な努力を通して成功に至っている。日本は地域ごとに社会文化的な資産が蓄積されており、地域レベルでの市民運動が強いといえるが、原発の定期点検後の再稼動承認の権限が自治体の長に委ねられており、この点が突破口となっているようだ。

韓国の場合、日本に劣らず原子力マフィアが強い勢力をもっており、その展望は五里霧中である。但し、韓国ではさまざまな宗教が平和共存し、過去一世紀の間困難を潜り抜けてきた国民の精神的拠り所となっており、ここに解決への端緒があると考える。高麗の四百年には仏教の慈悲、朝鮮の五百年には儒教の仁の普遍的価値があったが、ここ百年は改新教(プロテスタント)/カトリックの愛、仏教の慈悲、圓佛教の生命などが受け継がれてきた。脱核は生命の問題である。過去数十年間民主化にも大きく貢献してきた宗教界が、より根源的といえる生命の問題から眼を逸らすことはできない。

カトリックと圓佛教は既に動いており、改新教も動き始め、仏教は時間こそかかるかも知れないが、やがて動くものとみえる。2012年には4月の国会議員選挙と12月の大統領選挙があるが、宗教界が動けば、大統領候補も脱核公約の採択の岐路に立たされるだろう。それが分水嶺となる。文治の伝統があるので宗教界も教授に信頼を寄せており、教授の会も宗教界に集中している。また今年から投票権をもつ在米同胞および在日同胞らの要求も重要なものとなった。彼らの判断も手助けしたい。

今後の計画
1. 専門的な活動 -1)放射能安全、エネルギーの転換、人権、国際比較などに関するセミナー2)‘脱核法律家の会’および‘核のない社会のための医者会’と連帯した訴訟の提起および世論の喚起
2. 講演活動 – 宗教界の講演および大学巡回公演
3. 小中学校教育界と連帯し、漫画・絵本・童話本などを刊行する。また専門書籍の刊行を通して若手の'原子核工学徒'らの目を覚まし、脱核運動に寄与できるようにする。全て新学期である3月に普及する予定。
4. 市民団体を補助してさまざまな活動を展開する。
5. 国際連帯 – 現在ドイツでは去年の3月より核に反対する1300人あまりの教授の会が結成されている。彼らの代表と今年の2月に会う予定。モンゴルにも知識人の会があるという。日本にも一日も早く教授の会が結成され、独-蒙-韓-日の教授ネットワークからつくりたい。このネットワークが築かれ、うまく機能すれば、その威力は大きいと思われる。

ホームページ http://cafe.daum.net/nonukeprofessor
E-mail leewysu@gmail.com
TEL +82-10-4234-2134
筆者はこの大会で‘核のない地球政府’をつくろうという趣旨の個人発表を行う。発表の要旨は、UNおよび既存の国際機構は権力と資本の集合体であるので人類の運命をまるごと任せられないということ、そして地球村の民衆が連合して‘核のない地球政府’をつくり、核に繋がる悪い勢力を制御しようというものである。(別添)

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