2020年10月17日土曜日

「国民投票」は、「住民投票」とは似て非なるもの ―大阪都構想の住民投票と外国籍住民:田中 宏(一橋大学名誉教授)

田中宏さんからのメールの添付資料の内容、賛同して、みなさんにもお伝えします。崔 勝久

「国民投票」は、「住民投票」とは似て非なるもの ―大阪都構想の住民投票と外国籍住民

                          2020年10月6日                           田中 宏(一橋大学名誉教授)

外国籍住民が、日本で初めて投票したのは、2002年1月、滋賀県米原町の町村合併につ いての住民投票だった。首都から遠く離れた地で始まった新しい流れは、その後、全国に 波及し、少なくとも200を超える住民投票において、外国籍住民の参加が実現した。 「住民」と「国民」は、そもそも区別されるべきなのである。例えば、在外邦人が、選 挙で投票できるのは衆議院議員と参議院議員の選挙に限られ、地方自治体の首長や議会議 員を選ぶ選挙には投票できないのである。国政には「国民」の意思が反映され、地方政府 には「住民」の意思が反映されるからである。

大阪市の行く末を大きく左右する「大阪市を廃止し、特別区を設置する住民投票」にお いて、すべての「大阪市民」が投票することによって、初めてその正統性が担保されるこ とは言うまでもない。「外国籍住民」が除外されるならば、それは単なる「国民投票」に 過ぎず、「住民投票」とは似て非なるものである。

大阪市に居住する外国籍住民は約15万人で、人口の5%を占める。しかも、その約75% におよぶ外国籍住民の国籍は、「韓国・朝鮮」又は「中国」で、日本と深い歴史的関係に ある近隣諸国の出身者及びその子孫である。住民投票が、「外国籍住民」を加えた「真正 なる住民投票」となったのは、2002年の「米原」からである。

「米原」からの新しい流れを、この2020年に、大阪で「逆流」させることは許されない のである。今回の住民投票において、外国籍住民の投票を実施するために、制度上何らか の「障碍」があるとすれば、まずそれを取り除くことが先決である。大阪市は、大阪から 日本を変える意気込みで、まずそのことをやり遂げて、初めて二度目の住民投票に挑戦す べきではなかったろうか。大阪市の名誉のためにも、足元の民主主義の欠陥を示す今回の 事態は、憂うべきことというほかない。

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