「国民投票」は、「住民投票」とは似て非なるもの
―大阪都構想の住民投票と外国籍住民
2020年10月6日
田中 宏(一橋大学名誉教授)
外国籍住民が、日本で初めて投票したのは、2002年1月、滋賀県米原町の町村合併につ
いての住民投票だった。首都から遠く離れた地で始まった新しい流れは、その後、全国に
波及し、少なくとも200を超える住民投票において、外国籍住民の参加が実現した。
「住民」と「国民」は、そもそも区別されるべきなのである。例えば、在外邦人が、選
挙で投票できるのは衆議院議員と参議院議員の選挙に限られ、地方自治体の首長や議会議
員を選ぶ選挙には投票できないのである。国政には「国民」の意思が反映され、地方政府
には「住民」の意思が反映されるからである。
大阪市の行く末を大きく左右する「大阪市を廃止し、特別区を設置する住民投票」にお
いて、すべての「大阪市民」が投票することによって、初めてその正統性が担保されるこ
とは言うまでもない。「外国籍住民」が除外されるならば、それは単なる「国民投票」に
過ぎず、「住民投票」とは似て非なるものである。
大阪市に居住する外国籍住民は約15万人で、人口の5%を占める。しかも、その約75%
におよぶ外国籍住民の国籍は、「韓国・朝鮮」又は「中国」で、日本と深い歴史的関係に
ある近隣諸国の出身者及びその子孫である。住民投票が、「外国籍住民」を加えた「真正
なる住民投票」となったのは、2002年の「米原」からである。
「米原」からの新しい流れを、この2020年に、大阪で「逆流」させることは許されない
のである。今回の住民投票において、外国籍住民の投票を実施するために、制度上何らか
の「障碍」があるとすれば、まずそれを取り除くことが先決である。大阪市は、大阪から
日本を変える意気込みで、まずそのことをやり遂げて、初めて二度目の住民投票に挑戦す
べきではなかったろうか。大阪市の名誉のためにも、足元の民主主義の欠陥を示す今回の
事態は、憂うべきことというほかない。
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