私は全文を英語で読みましたが、翻訳家の井上利男の訳を読み、専門家の訳というのはこんなにすごいものか改めて驚きました。独誌の記者の視点はシニカルで、ロナルド・レーガン号の乗組員である米兵が「トモダチ作戦」という日米共同の作戦の為に福島沖に留まり被爆しました。4500名の乗組員のうち250人が東電と原発メーカーを相手に裁判を起こしたのですが、その軍人の矜持と被害者としての苦しみと葛藤、アメリカ社会の冷たい目、しかも裁判を糧とするアメリカの弁護士の正義感とその訴状に盛り込まれた大量の情報、被告弁護士の高価な背広に身を包みながら原告弁護士を見下すような様子が生き生きと書かれています。
http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2015/02/httpt.html
以下引用する文書はすべて井上訳で、写真もシュピーゲルのものをそのまま使っています。
出だしはこのような文書で始まります。
「米空母ロナルド・レーガンは2011年3月11日、壊滅的な津波のあと、救援のために日本に急行した。艦を降りた水兵らの多くが、フクシマの原子炉メルトダウンによる放射線被曝の結果と思われる病気にかかった。彼らはまもなく法廷に現れる。」
艦上の放射能を除染するために飛行甲板を洗浄する水兵たち。
記者のアレクザンダー・オザンは、その後放射能被爆によって苦しむことになる米兵一人一人とインタビューを行い、症状が出るまでの過程、「トモダチ作戦」を命じた海軍が放射能被爆を否定する報告を国会にだしたために軍人としてのプライドとを持ちながらも生身の人間の苦しみを告白する姿を率直に記しています。
「水兵たち自身は、病気になることも、恥をかかされることも望んでいない。彼らは、海軍、彼らの海軍、彼らの国家に楯突くことを望まない。米国は軍隊を尊重する国であるが、また弁護士の国でもある。兵士らは二つの陣営の板挟みになってきた。」
この写真にはこのような説明文が付いています。
「スティーヴ・シモンズは昨年6月、医療目的を理由に海軍を名誉除隊した。日本から帰還後、約1年後に症状が現れはじめ、筋肉が衰弱し、毛髪が一握り単位で抜け落ちた。彼は4年前、トライアスロンで勝負し、山々をハイキングしていた。彼はいま、もはや歩くことができず――だれもその理由を告げることができない。」
記者はまた3人の弁護士のうち、市民運動に熱心に取り組んできた2人の弁護士(特に二人のユダヤ人兄弟)のこのような言葉を紹介します。「資本主義の正体を暴きたい。彼もまた、米艦ロナルド・レーガンに乗り組んでいた水兵らのために、法の裁きと賠償を願っている」
1000億円という賠償金を求めるこの裁判に関して決してアメリカ社会の目は好意的ではありません。私のツィターにも批判的な意見をだす日系米人もいました。
この記事の最後は大変、意味深長な言葉で終わっています。
「訴状は、100ページの長さがあり、疾患水兵247名の氏名を連ね、原子炉の建造、採取した水試料、海軍の戦術、日本の政治状況に関連した詳細を書き込んでいる。企業の貪欲を攻撃するとともに、フクシマ原子炉の建造企業の怠慢を糾弾し――さらには世界の政治状況と人類のシニシズム[冷笑的な態度]を問責する。一種の旧約聖書的な怒りがテキストに吹きこまれ、その訴状は真の標的の追跡を忘れかねないまでに包括的である。訴状に描かれる米艦ロナルド・レーガンは、人類の最後の船である。航空機積載艦であり、幽霊たちの船である。」
ところで東電と福島事故を起こしたメーカーを相手にする弁護士に今回、7月14日から8月5日まで北米を周り反原発のメッセージを伝えたい私たちは、是非、会って意見の交換をしたかったのですが、最終的にアポが取れないでいました。私はそれではダメ元と日本からネットで調べた弁護士のメールアドレスを送ったところ、すぐに折り返しの返事が来て会おうということにありました。これがそのメールの一節です。
We can share information and help each other with our cases. Eager to meet you.
私に返事をくれた弁護士はCharles A. Bonnerです。この記事の中でも紹介されていました。ネットでは写真も公開されていました。
一体彼らはこの困難な裁判をどのような気持ちで戦おうとしているのか、私はお互い、率直な気持ちをぶっつけあい、何か接点がないか、お互いに協力し合うことはないか話し合いたいと願っています。弁護士との出会いは本当に楽しみです。
返信削除Kumiko Tsuchıda 米空母ロナルド・レーガン・アメリカ疾患水兵247名が訴訟裁判を起こす!! 弁護士 日本の東京電力と福島事故を起こした原発メーカーに訴訟裁判を起こす!! 「スティーヴ・シモンズは昨年6月、医療目的を理由に海軍を名誉除隊した。日本から帰還後、約1年後に症状が現れはじめ、筋肉が衰弱し、毛髪が一握り単位で抜け落ちた。彼は4年前、トライアスロンで勝負し、山々をハイキングしていた。彼はいま、もはや歩くことができず――だれもその理由を告げることができない。」
いいね! · 返信 · 14分前
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弁護士Charles A. Bonner (翻訳家:井上利男訳 ) 素晴らしい弁護士に出会うことになり、おめでとうと言いたい・・。 ここまで悩みもがいた結果ですね・・。又、井上利男翻訳家の翻訳を読まれ、原発メーカー裁判訴訟8月28日に向けて、一層の決意が固まったのではないでしょうか? 私も是非読ませていただきたいです。 いよいよ、戦いが始まりますが、7月14日から8月5日までの北米での反原発のメッセージの大会が世界へ波動を起こす原動力となると確信します。弁護士Charles A. Bonnerとの出会いが、私たちが起こす原発メーカー裁判訴訟に大きな意味を持つものと思います。情報交換をされることを強く希望します。