2014年3月27日木曜日

台湾の「革命前夜」から思うことー私たちがまずなすべきことは何か

みなさんへ
 
台湾の若者の国会占拠が続いています。
その数日前、昨年台湾で日本の日立、東芝、三菱それにGEが輸出した第四原発廃炉のデモで25万人を集めた若者集団GCAAのメンバーを日本に招聘し講演をしてもらったばかりでした。私は国会占拠を訴えるメッセージを受け取り、彼らの全面支持、連帯を打ち出しました。それはまさに60年代に起こったフランスの「パリ5月革命」に匹敵すると直感しました。
 
韓国の教会指導者からのその意義がわからないとのメールで逆に私はショックを受けました。これは近代化そのものに対するアンチ・テーゼであり、単なる台湾の民族主義の発露ではないと私は確信しています。
 
たまたまいただいた方のメールが台湾の「革命」と日本の状況(これは韓国も同じ)の違いを正確に説明されているのでご紹介します。日本の反原発運動の足りない点をこの際、徹底的に見直すべきだと私は思います。もっと自由に話し合おうではありませんか。
 
台湾のこの運動の背景には少数民族の問題を真剣に受けとめようとしたこれまでの蓄積を反映していると私は捉えています。しかし日本の反原発運動はどうでしょうか。活動する人たちは一国平和主義に陥ってはいないでしょうか。自分たちのやり方、自分たちの感性に合わない者を排除するという党派的な狭さに気づいているでしょうか。
 
40年前の全共闘運動を思い出します。既成の左翼運動を批判し新鮮であった全共闘運動もその後の新左翼運動の分裂、殺戮でその後の総括がどのようになされたのか私にはよくわかりません。あの時には、日本の加害者性というものが正面から論じられました。在日中国人の組織であった華青闘の告発に耳を傾ける土壌があったのです。日立闘争もそのような流れの中で大きな運動になりました。先日もある集会で日立闘争のことに触れると元教師であったという初老の方から自分もその運動に参加したとなつがし気に話をかけてこられました。
 
しかし今は「朝鮮人を殺せ」と叫ぶデモが都心で行われ、朝鮮学校への差別が公然と行われるようになっています。従軍慰安婦への強制はなかったとあたかも軍が決定した慰安婦制度そのものがなかった、また世界どこでもやっていたと言い出す公人がおり、南京事件もなかったとうそぶく首長(前東京都知事ー石原は数日前の記者会見では朝鮮侵略は当時の状況から仕方がなかったと発言しましたが、マスコミは批判しません)、このような状況に日本はなってきています。
 
それはあるときから変わってきたというより、敗戦後の日本の平和と民主主義の内実・実態がここにきて明らかにされてきたのだと私は思います。改めて日本の戦後とは何であったのか、どうして「朝鮮人を殺せ」と叫ぶ中学生が出て来たのか、このようなことを真剣に論議することさえ、運動圏のなかでもむつかしくなっています。日の丸はいいが、組合旗はだめだとか、再稼働一本にスローガンを限定するとか、自主規制のデモが続きます。
 
戦前の植民地支配が清算されていないと運動をする人、朝鮮人学校への差別を糾弾する運動もあります。再稼働反対運動も一時期大いに盛り上がりました。しかし問題は、それらがすべて個別問題として取り扱われ、現在の問題を統一的にとらえて一緒になって社会を変えようという動きにならない点だと思われます。
 
台湾では民衆の立場に立つということを正面から主張する青年たちへの賛同する声は日本では伝えられていませんが、想像以上に大きいようです。台湾にも組織間の軋轢がないはずがありません。しかしどうして
青年たちの運動を批判する声はないわけではないでしょうが、それでも彼らに対する支持は想像以上に大きなものです。もはや全土的な運動になているようです。
 
原発事故の当事者国である日本で、それも6割もの人が反対だと表明しているのに、再稼働を画策する首相が選ばれます。これまで原発立地地域で原発に反対する人が選挙で勝ったことはありません。原発立地地域で反対の声をあげた普通の主婦が「村八分」にあい、親せきからも一切声がかからなくなったという声を聞きました。大間の「あさこはうす」も同じです。原発再稼働を現地で反対する人は孤立を余儀なくされています。
 
台湾の支持・連帯の表明は自分たちの運動をもう一度足元から洗い直すことなくしてはできない、と私は思います。まず自由な議論です。そこから党派を超え、意見の違いを超え、民衆の支持を受ける運動をここでも作っていきたいですね。それは小手先の技ではなく、現実の問題を直視することから始まるのではないでしょうか。
 
崔 勝久

BCC各位(拡散希望)
from 藤原節男( #脱原発 原子力公益通報者、原子力ドンキホーテ)
件名:台湾の国会占拠を見て、改めて合点がいったこと

頭書の件、私がシェアしたグローマン ヘンリさんのフェイスブック投稿が大層な人気です。連絡申し上げます。

【台湾の国会占拠を見て、改めて合点がいったこと】http://goo.gl/MWTvKT
グローマン ヘンリさん:http://goo.gl/cx5BX7
日本の反原発運動が毎週国会でのデモを繰り返しながら、安倍政権になんの打撃も与えられないのは、この原点を理解していないからではないだろうか?

そう、誤解を恐れずに言ってしまえば、日本の場合、この投稿(注)の論点と同じで、「原発」そのものが問題なのではなく、「原発を巡る政策決定過程が黒箱であること」が問題だということだ。
(注)台湾台中市在住のAwil Achuanさん、古川さんの投稿、https://www.facebook.com/awil.achuan/posts/604991269583434

そう考えると、この先日本で「脱原発」をワンイッシューにして運動を何度繰り返しても成果など絶対に上がらないことが分かる。
実は、原発もTPPも貧困問題も憲法問題も、根っこは全部一緒だからだ。結局、どの政策にせよ、誰が企画し、誰が決定し、誰が推進し、誰がその最終責任をとるのか..どれも全く明快になっていない、いや敢て明確にしていない..ブラックボックス化した政治機構がそうしむけている..そのこと自体が問題なのである。その隙をついて大企業や為政者のエゴが経済最優先という大義名分の元に忍び込んで来る。

脱原発の運動を見ると、ある人は原発の放射能を直接問題にし、ある人は避難体制と補償を問題にし、ある人は福島の復興による経済再生を問題にし、ある人は(政府の言う)風評被害なるものによって追い詰められる福島の生産者を問題にしている。誰もが「脱原発」と叫びながら、その焦点がなかなか重なり合わないのだ。そして、国はそれを利用して脱原発勢力同士の分断を画策して成功を納める..といったことの繰り返し。

それが福島と東京の温度差、リベラル文化人と左翼勢力の温度差、サラリーマンと生産者と自営業者の温度差、男性と女性の温度差などに繋がっている。そこには残念ながら出口など無いのだ。脱原発に賛成する人が6割いるといいながら、都知事選でその温度差のために求心力を失い市民が勝てなかったのはその顕著な例だ。

それどころか、安倍政権は原発事故をショックドクトリンに、秘密保護法、集団自衛権、教育制度の私物化、人権無視など、平時であれば考えられない様な護憲主義の放棄、民主主義の蹂躙にひた走っている。そして「脱原発」のワンイッシューにのみ拘り過ぎる人間はそこまで気が回らず、後々民主主義の後退に愕然とするのだ。上っ面の脱原発運動が散々国民のガス抜きに利用され、気がついた時には時既に遅し、原発再稼働や核軍備を遮る民主的な手段は何も残されてはいないのだ。

市民の温度差を緩和し焦点を絞るために必要なのは「脱原発」という空虚なプロパガンダではなく、この日本という国に巣食う「不透明な政治プロセス」を改めさせることに市民の運動を集中させることなのだ。
だから、今の日本に必要なのは脱原発ワンイッシューの運動などではなく、原発もTPPも貧困問題も憲法問題などあらゆる問題に対する政策決定過程の透明化を要求することなのだ。
「民主的な政治プロセスこそワインイッシューであるべき」なのだ。
台湾での運動はそのことを教えてくれる。

台湾の国会占拠勢力はかなりの部分で原発反対勢力と重なっている」などといった的外れの希望的観測をするのではなく、この運動の本質を理解し評価することが大切なのだと思う。
台湾の運動に勇気づけられる人もいるかもしれないがけれど、まずは、なぜ台湾では、56校もの大学が学生を公式に応援し、企業が無料バスによって市民のデモ参加を応援し、自営業者が炊き出しをして学生を暖かく迎え、機動隊の一部も学生を非公式に応援し、一部とは言えマスメディアが学生側を好意的に取材するのかをキッチリ理解すべきだろう。

日本の原発パニックによる「にわかな運動」と違って、台湾のそれは中国併合への可能性に対するパニックなどではなく、馬政権が市民に見えない黒箱政治に傾いたことに対するオール台湾の民主政治を求める運動なのだということを冷静に観察しなければならない。日本でもオール沖縄の運動が、「問題は米国の政策ではなく、それを住民を無視して受け入れようとする民主的な手続きを無視し続けた日本の中央政府に対する反発」であることと同じなのだ。

(本土の)日本人がそこに気がつかなければ、永久に脱原発なんかできっこないのだ。

以下、本文から一部引用:

敵は中国なのではありません。実際、中国資本と台湾資本はすでに明瞭に区別できる状態にはありません。投機的な資本にも国籍はありません。韓国でも日本でも、特権層とむすびついた政権が無理やりに、なりふりかまわず市場開放を推し進めています。防波堤は機能していないように見えます。そのことが最大の問題なのです。

https://www.facebook.com/awil.achuan/posts/604991269583434

参考:
http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2014/03/122951.php
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/131050

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