反原発の闘いの意味を明確にしようーYB Kim博士をお迎えして

韓国からKim Yongbock博士をお迎えして、昨日、川崎で博士を囲んだ話し合いと会食の場を持ちました。

韓国の民主化闘争を経験して民衆神学を実践に即して展開されてきた博士は、核と信仰は両立しないという信仰理解のもとで、世界的な運動の戦略づくりの先頭に立つ人です。NNAAの運動を展開しようとする私たちにとって博士のご意見を伺い、議論をする機会を得たことは絶妙のタイミングであったというしかありません。

博士もまた、私たちに具体的な運動展開とそれを支える世界的な戦略を説明される中で、さらに鋭く、深く日本の状況を理解されたと思います。彼の立場は一貫していて、あくまでももっとも弱き者の立場に立つということであり、世界中の被曝者の声を聴き、そこから運動を作り上げていこうというものです。その生き方は、キリスト教のドグマや制度ではなく、この世のいかなる権威より、イエスに従い、平和をつくる（Peace Making)ことに徹することだと主張されます。

敵は、核戦略で世界を支配するアメリカ「帝国主義」であり、Gloval Securityという名目での、核の独占的な支配（Nuclear Dictator Ship)の構造こそ諸悪の根源というご理解でした。核の傘概念の欺瞞をも明確に説明されておられました。オバマの核に関する「欺瞞」を批判する厳しいものでもありました。

土曜日の島弁護士との会話、日曜日のNNAAメンバーとの話し合い、今日の原子力資料情報室の伴さん、元国会事故調委員の田中三彦さんとの話しあいにおいてさらに「国際民衆法廷」の可能性とその開催の意義が明確になってきたように思います。これを日本の一国の問題とせず、世界中から証人を集め、この世界の構造を明らかにしていき、国境も宗教の境もない、人間の尊さを訴える闘いであり、これまでの世界のあり方、私たち一人ひとりのライフスタイルのあり方を根底的に変えていくもとになると私は

理解しました。

原発を自然エネルギーに代えても、これまで通り大企業がエネルギーを支配し、大量生産、大量消費、大量破棄の資本主義の仕組みを続けていくのであれば何の変化もありません。田中三彦さんは、そのような生き方には原発がもっとも相応しいと話されるそうです。

今や核は基地に収まっているのではなく、潜水艦、飛行機、近い将来は人工衛星に積まれて国境なきGlobal Securityを強調する時代になるでしょう。アメリカが沖縄を放さず、橋下や石原が形式的な核の三原則の破棄をほのめかすのは、すでに核は世界中に散らばっており局地戦でも使えるようになってきているという現実感覚をもっているからなのでしょう。

原発問題はエネルギー問題に矮小化させてはならず、世界の核問題、そして一人ひとりの生き方の問題にまで深めて初めて意味があるのだと博士は語っておられたのだと思います。そういう意味で博士はご自身のことばでは、クリスチャンではなく、ポストクリスチャンとしてを生きていこうとされるのでしょう。韓国からNCCの形式的な（台湾を招聘していない！）国際会議に参加される方達との話のなかでもそのことが話題になり、ルーテル教会牧師の内藤さんの、社会に関心をもたないクリスチャンが多くなればそれは社会を悪くする、ルターの教えにも過ちはあるという話に拍手をされていました。もはや、個人の救いを求め、保守派勢力の温床になり下がった教会の存在意義は根底から問われてるということでしょうか。

私たちは福島事故を起こし世界に原発を売り込もうとする原発メーカーを提訴します。そのことによって彼らを免罪してきた世界の原発マフィアの実態を明らかにして、世界各国において、さらなる闘いを生み出すでしょう。この闘いは過去の植民地主義の清算の問題にとどまらず、戦後の、植民地無き植民地主義の象徴ともいえる原発体制を根底からとらえ直すことを意味するでしょう。