2012年12月18日火曜日

国際連帯を求めて~一国主義の克服~


今年の11月18日に、反戦・反差別・国際連帯を掲げる30歳代の青年たちからなる「反核青年会議」の学習会に招かれて話した内容が公開されています。
http://hankakuseinen.blogspot.jp/2012/12/1118.html?m=1

私は再稼働反対の運動に地域で関わってきましたが、一国主義の克服による国際連帯の重要性を訴えてきました。極右政治家たちの勝利に終わった今回の選挙を見て、私たちの運動の質は彼らの「愛国」を乗り越える質を持ち得ていたのか、このことを検証する必要があると痛感します。
再稼働反対がどうして原発輸出反対の声を同時に掲げることができなかったのか。自分のところはだめであれば海外に持って行ってはだめ、この単純なことが蔑にされているのは、はやり私たちが国民国家という枠に囚われているからです。そしてこのことがまさに植民地主義につながるのです。日本国内だけを見ていてはこのことは見えません。自分たちを恐怖させているものが今、同時に海外の人をも苦しめようとさせている、だから彼らと一緒になって原発を止めさせなければならない、この感性と行動がない限り、「愛国者」に勝てないというのが私の意見です。植民地主義の克服はここからしか始まりません。

一昨日、まさに偶然に投票日に脱原発世界会議で出会ったリトアニアのジャーナリストとの話しあいで、62%ものリトアニア国民が国民投票で原発反対の意思を表明し、新たに選出された首相はその国民の意思を尊重すると明言したことを知りました。日立はそれでもリトアニアから原発が必要だという要求があるなら、世界でもっとも安全なプラントを提供したい」(NHK)と発言し、撤退する意思を見せていません。
だから日立本社に抗議に行こうということになりました。そうしたらそれに呼応して札幌の日立支社にも抗議に行くという仲間が出てきました。私のネットを通した情報を何万人もの人が目にしたようです。「大敗後」の第一歩として大変意味のある行動になりそうです。


国際連帯を求めて~一国主義の克服~                      
                                       2012年11月18日

はじめに
今日は「日立就職差別裁判」の当該である朴鐘碩(パク・チョンソク)さんも来ています。裁判では5年ほどかかって日本社会の差別性が認められ、運動としても日立本社包囲やアメリカ、ソウルでの不買運動が行われるなど、完全勝利でした。僕たちはその支援にとりくんだ後、地域社会での運動に入りました。

3.11で明確になったことは、事故が起こって日本人だけではなく、国籍・民族関係なく全ての人に被害が及ぶことです。ブログやtwitterでもそのことを展開して、民族・国籍を超えて協働して日本社会、地域社会を変えていこうということを、どんどん提起していきました。そうしたところ、twitterで大きな反発が出ました。「何でお前らと協働しなくちゃならないんだ」「クソ朝鮮人!日本から出て行け!」。日本は右傾化とナショナリズムの高揚のなかで危機的な状況になっています。

今日選んだテーマは、「国際連帯を求めて/一国主義の克服」です。国籍・民族を超えて協働して日本社会を変革していこうという我々の主張に、何ゆえそんなに反発するのか。内容に対してではなく、何でお前らと協働しなくてはならないのかという反応が、どういうところから出てきているのかを探ってみたい。

再稼働反対運動は原発輸出反対を掲げなかった
もちろん僕も再稼動反対ですし、そういう運動もしていますが、いま再稼動へ向かう大きな流れのなかで、原発輸出、あるいはモンゴルへの使用済み核燃料の持ち込み問題に対して、おかしいという声が聞こえない。そうこうしているうちに領土問題が起こると、マスメディアをはじめ、圧倒的に韓国に舐められてたまるかとか、天皇の謝罪発言は許せないとか、そこに中国の問題も出てきて、再稼動反対の盛り上がりとナショナリズムのいびつな反発が並存する状況になっている。そのことがおかしいと思われていないこともまた、異常事態だと認識しています。

日本の技術は世界最高峰であり、日本は脱原発に向かうんだけども、輸出は止めない、これが日本政府の基本的な見解です。東芝・三菱・日立は全世界への全面的な輸出を加速する動きを見せています。これまで脱原発実現の時期についてはあいまいな点はありつつも、脱原発の方向には向かうことはなってはいますが、今回の選挙で自民・公明・維新が過半数を獲ったときどうなるかは、まったく予断を許されない状況になっています。

去年10月にモンゴルに行きました。モンゴルにはウラン埋蔵量が世界最大だといわれています。それを巡って世界の列強はそれを利用し、なおかつウランの採掘、精錬、輸出、またその使用済み核燃料の輸入、埋蔵を一貫したサービスとして行うというCFS(包括的燃料サービス)構想があり、日本・モンゴル・アメリカで密約を持っていたことを毎日新聞が昨年の5月にスクープしました。それに対して、3つの政府はそれぞれ否定し、なおかつモンゴルの大統領が海外からの核廃棄物は輸入しないと国連で明言したものですから、日本の活動家やマスメディアは問題が終わったと思っています。しかし、僕はおかしいなと思い、現地の人たちに会ったところ、案の定どうなるかわからないということでした。この後出てきた情報では、日本・モンゴル・アメリカだけではなく、UAEも計画に加わっていることがわかりました。UAEの原発をつくったのは韓国ですから、韓国も裏で加わっているということです。

アメリカは核拡散防止という大義名分の下で、自分たちの開発した原発の技術、核兵器の技術は保持しながら、ライセンス契約でもって各国に原発をつくらせる一方で、スリーマイル以降三十数年間、アメリカ国内ではつくってこなかったのに、去年4基承諾しました。これをとったのはウェスティングハウスです。ウェスティングハウスの98%の株式を持っているのは東芝です。いまは60%台までに下がりましたが、それは自分たちが原発をつくりますよという意図をもって発展途上国に株を売っているわけです。

斜陽の原子力産業にどうして日本と韓国が
福島事故以前から、世界的には原発産業は基本的には斜陽産業です。高木仁三郎とともにライト・ライブリフッド賞を受賞した世界的なアナリスト、マイケル・シュナイダーは原発産業に未来はないということを明確に言っています。ところが日本と韓国が莫大な投資をしてやろうとしている。アメリカはライセンスだけ持って、出資と実際の原発製造はほかの国にやらせようとしていて、その手先になっているのが日本と韓国です。

韓国に行って話をしたのは、原発は戦後の植民地支配の問題であり、原発を輸出するという日本と韓国はアジアにおける植民地主義の最たる国ということです。韓国はもはや植民地主義の加害者として、原発を輸出しているということをしっかり認識してほしいと話しました。しかし、まだ彼らは原発を輸出することが問題だという意識が低いです。

日本以上に石炭・石油がなく、気候的にはオルナタティブとなるエネルギーが小さいというなかで、原発輸出は、国を挙げての産業だったんです。だからUAEとの契約が成約したときには、テレビ中継され、祝日みたいになったと聞いています。韓国の原発22基のうち12基は李明博(イ・ミョンバク)がつくった。密度で言えば全世界でトップです。2020年代にはさらに2倍にし、世界の新規原発の20%を自分たちがつくるということを公約に掲げています。

ところが今回の大統領選挙では、保守党は李明博の流れを継ぐとしても、野党候補は2人出ていまして、彼らは原発をなくすことを明言しています。この2人がどちらかひとりに統一することに合意しましたから、勝つ可能性が出てきた。そうするとドラスティックに変わる可能性が出てきます。

海外の実態
今年7月16日、モンゴル現地で7.16集会に呼応するデモをやりましたが、このときわかったのは、モンゴル政府が、7月にあった政権交代のどさくさにまぎれて、2時間で新しいプロジェクトの予算を国会で通過させたことです。砂漠に4箇所の核廃棄物の保管施設をつくる、小型原発をつくるという内容です。一挙に反対運動が盛り上がり、すぐに政府は目的を変更したと弁解しましたが、ウランバートルから800キロ離れた砂漠の中に研究所なんてつくる必要はないので、すぐに化けの皮がはがれるでしょう。つまりモンゴルではいまもなお計画を進めてられている事実があります。それに対して、日本では基本的にもう終わったと思われていますね。その点をしっかり皆さんには認識してもらいたいと思います。

リトアニアの原発計画ではGEと日立がとりましたが、国民投票で62%が反対しました。つまり、原発を欲しがっているのは政府、大企業、そして軍部であり、海外が欲しいと言うから売るという言葉にごまかしがあるということを認識する必要があると思います。

台湾・台北の近くにある第4原発は完成し、現在は第1段階、燃料を入れない実験をしています。その4年後には燃料を入れた実験の予定ですが、この原発をつくったのはGE・日立・東芝・三菱です。つまり福島で事故を起こしたメーカーです。そこで、僕らは台湾と一緒にやろうということで、この前のNo Nukes Asia Action(NNAA)にも参加してもらいました。

NNAAは、モンゴル・韓国・台湾・日本・アメリカで国際連帯の運動をしようというネットワークです。11月10日、結成集会をしました。これは翌日11日にデモに行ったときの写真ですが、ここに写っているのは日本製鋼という会社です。ここで世界の原子炉の圧力容器のうち80%を製造しています。この会社がストップしたら全世界で原発がつくれなくなるだろうと言われています。ここは強気で、需要があるからどんどん増産するんだと公表しています。

「多文化共生の街」川崎の問題点
僕は日立闘争以降、川崎で地域活動をしていますが、国際連帯や一国主義克服のコアとは何かというと、地域での具体的な運動だと思っています。地域というものは、国籍という概念ではなく、文化、伝統、産業といったものが入り混じるんですけど、この地域の内実をどのようにつくるかということを、国際連帯と一国主義の克服とともに、二つの大きな柱として絶えず考えています。地域では、何か事故があれば一緒に死ぬし、日々ともに生きてきて、そこをどのような生活空間にするかが非常に重要だと思っているんですね。

川崎市は、日本の政令指定都市で唯一「多文化共生」を掲げて、外国人施策に関して最も進んだ自治体だといわれています。また、外国籍者に地方公務員試験の門戸を開放した最初のところです。しかし実際は、いまの阿部市長は、準会員と会員は違うんだ、差別があって当然だと発言しています。国籍によって地域を分断している。

川崎では公務員になった外国籍者が20人以上います。ところが、「当然の法理」だと言って、外国人は課長以上にはさせない、市民に命令を下すような公権力の行使をする仕事には就かせないという制度をつくってしまいました。ですから彼らは管理職にはなれない。仕事内容も全体の20%についてはできない。
そもそも公務員の職務は好き勝手に市民に命令できるものではなく、法律や条例に従って行われるものであって、同じ公務員になったのに外国人は別、市民に命令するような職務に就かせないというのは、憲法違反ですよ。ところがそのことは問題になっていない。僕らは10年以上闘ってますけど、労働組合も市民運動も、「多文化共生」ということでいいことをやってると思っています。しかし、僕らは「多文化共生」は植民地主義のイデオロギーだと思っています。

植民地主義とは戦後の原発体制であり、外国人労働者が日本に来なければやっていけない状況のなかで、出てきたイデオロギーが「多文化共生」です。「多文化共生」にはもちろんいい面もあるでしょう。しかし本質的にはそういった問題があるのではないかということを、皆さんと議論したいと思います。

川崎は原発事故の被害はないと思われていましたが、一般ごみと下水道の汚泥の焼却灰の放射線量が高くて処理できずにいるんです。ですから東京湾の臨海部に積んだままです。もともとの場所ではもう足らなくて新たに設置したんだけど、そこも半分以上埋まっています。
そこで阿部市長は海、といっても護岸ですが、そこに埋めると発表しました。これは海に直接埋めるのではないんだけど、陸地の先に護岸をつくって、外洋じゃないという理屈です。そこに灰をどんどん埋めていくと言うんだけど、ものすごく高い放射線量のものは埋められないから、これをどうするのかは決まっていません。
ところが、僕は中に行って見たのですが、放射能の流出を防止するようなことをやってるんですかと聞いたら、何にもしていないんです。ごみが外洋に出ないようにするためだけの装置です。いくら護岸内であっても、ここに埋めるということは外に出て行くということと変わりありません。これをすでに始めている。このことは、この先川崎の運動課題になることは間違いないです。

これは、僕が言った地域の重要性で、川崎の防潮堤の高さは3.1メートルで、国の言っている基準でも津波の高さは3.9メートルですから、必ず市街地まで水が入ってくるわけです。臨海部に何千とあるタンクの油がこぼれると、市街地に入ってくるのは水だけではなく油も入ってくることになります。そうなれば火災になるでしょう。いくら高いところに避難しましょうと言っても、それだけでは「避難」にならない。これまでのやり方を見直さなくてはならない。
僕らが提言しているのは、民主主義といっても、4年に一度の選挙も党派の利害だけで、決して地域の意向を反映することにはなっていない。僕らは、住民と超党派の議員と行政とで、災害の問題は一緒に考えることができるんじゃないか、そういう場の設定をしたいと思っています。

多文化共生は植民地主義のイデオロギー
西川長夫さん(立命館大学名誉教授)は、国民国家について根本的に批判している日本の第一人者です。僕らが植民地主義について考えていることは、彼と話すなかで学んだことが大きいです。グローバル化や経済の危機、失業や貧困といったこんにちの問題にこそ、植民地主義の本質が込められている。植民地主義は過去のことではなく、形を変えて現在も、つまり解放後のいまも続いているとしたら、日韓併合100年の意味も変わってくるのではないでしょうか。過去の植民地支配の残滓を引きずりながら、いま原発体制を生み出した新たな植民地主義が台頭している。植民地主義というのは、国家というものが植民地主義を再生産する装置だ、というのが彼の定義ですね。
そこで、考えていただきたいのは、「多文化共生」というのは原発体制を突き破る質を持つのか、あるいはそれを補完するものなのか。いま言った植民地主義の問題も含め、皆さんと議論したいと思います。

一国主義ではいまの原発体制と闘うことはできない。国際連帯の強化をもってしかできないというふうに僕らは思っているんですけど、そのためにつくったのがNNAAです。現在は5か国からの参加がありますが、さらに連携を強めたいと思います。
どこかの党は脱原発だけど輸出するんだと明言していましたね。率直に言って再稼動に反対するなら輸出するなと言え、そんなことは当たり前のことじゃないかと思っています。それから、廃棄物を日本で最終処分するのがいやだったら、同じことをモンゴルに持っていってやるなと。人間らしく生きていこうと考え、いい社会をつくろうと言うんであれば、日本で原発をつくらないんであれば海外に輸出しない、使用済み核燃料を海外に持っていかないというのは、最低限のルールだと思います。

原発メーカーの責任を問うべき
原発輸出反対ということで全面的に運動を展開したいと思っています。損害賠償請求は、どうして東電に対してだけでけなのか。福島原発をつくったGE・日立・東芝が無罪放免で済むのか。この根本的なところが日本で問題になっていないのは、明らかにおかしいと思います。PL法、製造物責任はご存じですか。これは過失如何にかかわらず事故が起こった場合には製造者に責任があるという法律です。ところが、新たに原子力損害賠償法という法律をつくって、原子力に関しては適用外にしました。原子力に関してはPL法を適用しませんという法律をつくったんです。

僕らが大学出たころには、どこの大学を出ようが何しようが、外国人は就職できないのが当たり前だった。そういう常識が運動のなかで破れていくわけです。勝手によくなったんじゃない、闘ったから生き残ってきたんです。法律であれ、常識であれ、おかしいことがあったら変えなくてはならないんです。僕らの思考というのは、ここを突破しない限り、世の中よくならないと思います。在日のいまの運動があるのは、これまでの闘いがあったからですよ。常識がおかしいということを、絶えず言い切ってきたからいまがある。
同じような意味で、原発メーカーの責任を問わないという法律がおかしいと言わなくてはいけません。いま僕らがやろうとしているのは、そんな原子力損害賠償法は、そもそも憲法違反じゃないのか。財産の問題、裁判を受ける権利の問題、あるいは憲法上の問題にしなくても、その定められた賠償額1200億で済むのかという問題を正面突破してやりたい。

東京の大気汚染の裁判では、道路のそばの住民がぜんそくになって裁判を起こしたときに、誰が被告かというと、車を運転した人、道路をつくった人、そして自動車メーカーです。自動車メーカーはそのときの法律や基準に従ってつくったわけだから、責任はない、とは言えるんだけど、しかし、実際にこういう被害が起こったときにどうするんだということからして、結局自動車メーカーも莫大な和解金を出したし、東京都も認めたわけです。
世界の流れは、すべて原子力メーカーは免罪にするという流れです。唯一インドだけが、過去に大きな化学事故があったため、海外のメーカーにも責任を取らせるという法律をつくっていますが、これにはロシアがものすごく反発しています。アメリカを中心に、世界は原賠法をどこにでも適用しようとしています。

これは、運動に歴史的視点が非常に少ないという問題にもかかわります。日本に黒船が来て開国を迫られたのと同様のことを、20年後日本は台湾と朝鮮に対してやったわけですね。GEとかイギリスやアメリカが原賠法をつくらせたんですよ。それと同じことを日本はベトナムやヨルダンに対してやろうとしている。これがまさに植民地主義だというのは、そのときのことを考えればよくわかります。

皆さんに提案したこの原発メーカーを相手の提訴というのは大変な裁判になります。僕らが日立の裁判を始めたときは皆さんより若いときでした。支援の学生含めて、せいぜい4、5人が事務局を担って、弁護士も用意して、5年間運動として担いきって裁判に勝った。勝っただけでなく運動が全世界に広がったんです。
そして、この運動も全世界に広げなくては勝てない。原賠法を変えなくてはいけないというところまで行かなくてはならない。運動が広がれば、変わる可能性がある。いまの再稼動反対の運動のなかでは、スローガンまで限定してやってるのでなかなか難しいと僕は見ています。ほかの運動体とも一緒にやりつつも、我々は我々で独自に運動をつくっていきたい。

最後に
勇気を出して社会を変える、やればできるんだ。全世界に向かって運動をつくり上げて、裁判にも勝って、原発輸出をさせない、原発をつくったメーカーに責任があるという運動をやりたいと思います。全世界の原子力マフィアに対する闘いですから、敵にとって不足はないと僕は思っていますので、ぜひ皆さん、一緒にやりましょう。

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