2012年2月3日金曜日

ヤクザと原発ー「大飯原発をめぐる偽装請負」(朝日新聞2/3)ー悪い奴は誰か?

1月13日に私のブログで以下の文書を出しました。
『ヤクザと原発ー福島第一潜入』を読んで
http://www.oklos-che.com/2012/01/blog-post_4268.html

           
そのことに関する記事が今日の朝日新聞に出ています。「派遣元、組側に1億円」ともタイトルに記されています。内容に時に目新しいものは何もありません。結局、組長の妻が役員を務める会社から売上金がヤクザの組に流れていたことを福岡、福井両県警が調べ、「職業安定法違反などの罪で略式起訴し、同法違反容疑での捜査を終結した」、すなわちすべては終わり、もう何もありませんということのようです。

        『ヤクザと原発』裏表紙から

略式起訴されたのは3人で、大手原子力プラント会社である大平電業株式会社の営業所長と、下請けの高田機工という京都舞鶴市の会社社長、孫請けのヤクザ組長の妻の会社(北九州市)役員がそれぞれ請負契約を結び(結んだように偽装して)、孫請けの派遣労働者が発注元の大平電業の直接の指揮下で働いたとことが職業安定法に違反したということのようです。つまり、「複数の派遣会社の介在による給料の中間搾取」という、常態化されている原子力関係工事の実態にメスをいれたということなのでしょうか。

しかし実際はどこにもメスは入っていません。労働者の派遣で2億円の荒稼ぎをした孫請け会社がそのうち1億円をヤクザの組に流したことが問題にされ、関係者は略式起訴されたということだけです。もし警察が中間搾取という常態化した雇用システムを問題にすれば、原子力産業はなりたたないでしょう。大手プラントは関電からプラント建設やら補修工事を直接請け負い(東芝とか日立、三菱という原子力メーカーとの関係はどのようになっているのでしょうか?)、自分(の社員)は現場の仕事に就かせないで危ない仕事は全部、孫やらひ孫、それは10代にまで及ぶと言われていますが(上記『ヤクザと原発ー福島第一潜入』より)、非正規の派遣労働者を働かせているのです。

警察はヤクザだけを目の敵にしているようですが、ヤクザの日本での位置とは何かと考えるとこれは日本の社会構造そのものに言及しなければならなくなるでしょう。ヤクザに未解放部落出身者や、在日朝鮮人が多いというのは社会の常識になっています。彼らを社会悪の根源のように宣伝し取り締まることによって、逆に彼らを利用しながらピラミッド型の構造の中で非正規労働者を搾取することが常態化されている問題は不問に付されます。

悪い奴ほどよく眠る、という映画がありましたが、世界を股に原子力を作ろうとしている原子力メーカー、彼らと手を組み日本の経済成長を図る政治家・官僚、それに群がる大手建設会社、そしてその下の数知れない中小企業、そしてそこで使い捨て去れる派遣労働者、こういう実態が見えてきます。

その社会構造の上に国民国家という枠がかぶされ、その中でも世界の超大国が弱小国を牛耳るという形になっています。その中ではたして国民国家という枠を観念でなく、実態として突き抜けていくことはできるのでしょうか。私はその鍵は生活実態としてある地域社会だと思うのですが、これがまた国民国家の枠に収まることを当然視し、人々もそうだとすれば救いはなくなります。一筋の光明を見い出したいものです。

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