OCHLOS(オクロス)は民衆を意味する古代ギリシャ語です。私は民衆の視点から地域社会のあり方を模索します。すべての住民が一緒になってよりよい地域社会を求めれば、平和で民衆が安心して生き延びていく環境になっていくのでしょうか。住民は国籍や民族、性の違い、障がいの有る無しが問われず、貧困と将来の社会生活に絶望しないで生きていけるでしょうか。形骸化した戦後の平和と民主主義、経済優先で壊された自然、差別・格差の拡大、原発体制はこれらの象徴に他なりません。私たちは住民が中心となって、それを憂いのない地域社会へと変革していきたいのです。そのことが各国の民衆の連帯と東アジアの平和に直結する道だと確信します。
2012年1月31日火曜日
『ヤクザと原発ー福島第一潜入』を読んで
ヤクザもののジャーナリストである鈴木智彦『ヤクザと原発ー福島第一潜入』(2011 文藝春秋)を読みました。本屋やアマゾンでは絶対に買わない種類の本ですが、初めてお会いした原発事故に詳しいAさんが面白いとやや興奮気味に話されたので、私はおもわず家に帰りすぐにアマゾンで購入しました。
一言でいうと何かマスコミで騒がれているらしいですが(「話題騒然!命懸けの衝撃ノンフィクション」と帯にありますから)、つまらない本でした。私はノンフィクションでは沢木耕太郎や、柳田邦男あたりを読んでいて、ノンフィクション作者がいかに禁欲的に、想像と確認できた事実を混ぜないで書くのかの苦しみを知っているので、この本の作者が読者へのエンターテインメント性を意識した書き方や、事実の確認やその掘り下げが不十分であり、私の基準ではまともなノンフィクション作家とは言えません。
しかし妙にこの本にリアリティがあったのは、作者の力量のせいではなく、1月26日の参議院会館での政府交渉に私が参加して、「六ケ所再処理工場アクティブ試験の中止を! 大飯原発3・4号をはじめ、原発の運転再開反対!」を掲げる市民団体が提出した質問事項に「大飯原発に関する暴力団の関与について」ということが記されていたことを知っていたからでしょう。
関西電力は「暴力団と関係している会社と契約を結び、その会社は工事偽装請負をしていることがあきらかになりました。そのため福井県警と福岡県警が大飯原発の構内に捜査に入っています」と市民団体は資料に記しています。23日経産大臣名で「下請業者等による法令遵守等の徹底について」を発表しています。「今般、大飯原子力発電所の改修工事に関連して、元請負業者の従業員及び下請け業者の役員が職安法違反の疑いで逮捕され、逮捕者の中に暴力団関係者が含まれていたことは、まことに遺憾であります。高い公益性を求められる電力会社として、このような事態が二度と発生しないよう、契約の相手方や下請け業者も含め、法令遵守を徹底するとともに、暴力団の排除に率先して取り組むことを求めます。」
苦笑を禁じ得ませんね。この本の著者によると東芝や日立のような大手プラントメーカの取った仕事には下請けが10社も入り、末端の労働者の中には刺青がはいった人がかなりいたというのですから(刺青=ヤクザではないでしょうが)。ヤクザ対策を熱心にする西日本とちがって(でも今回、福岡県警が介入しているということは九州のヤクザが関係したということでしょうね)、東日本では比較的取締はルーズで、地域社会に溶け込み、地域社会がまるごと原発と関わるところでは、あたり前のようにヤクザ関係の会社が介入しているというのです。勿論、今回の福井のようにヤクザの親分の奥さんが直接前にでるような「下手な真似」はせず、謄本ではわからないようにしているとのことです。
「ヤクザもんは社会のヨゴレ、原発は放射性廃棄物というヨゴレを永遠に吐き続ける。似たもの同士なんだよ。俺たちは」この最後のセリフをヤクザに言わせているのですが、この立証のために作者は福島原発の事故現場に入り込みます。その中での体験を面白おかしく、(いく分かは)もったいぶって書いているのですが、私には新鮮味は全くありませんでした。まさにさもありなんという話しだと思います。
潜入記を日記の体で徹底して詳しく書いてあったならそれなりの読み物になったかもしれませんが、この本は原発とヤクザを結びつけた、売らんかなの企画と感じました。しかしその最後の「線量より汚染度」という箇所では、私たちが気にする何ミリシーベルトとという数値よりも、現場の人や原発関係者は地域が非常に汚染されておりその数値は公にされていない、ごまかされているというくだりでした。
確かに、線量の高い地域の除去が問題になりますが、その汚染を水で落としたり土壌を穿いだりしますがその水はどこにいくのでしょうか、その土壌はどこに捨てるのでしょうか。私はこのことがずっと気になっていました。汚染地区の一地点の線量を低くしてもその地域全体の汚染度は変わらないのではないか、私は作者が聞いたその地域汚染の怖さこそ、最も問題にされるべきことだと思ったのです。作者は最後のわずか数ページで終わらせず、メーカが現場の機械の単位をごまかして汚染度を少なく見せかけようとしている実態こそ、徹底的に暴き、そのもたらす災害はどのようなものなのか、書いて欲しいと思いました。
そうか、やっぱり日本はこんなに放射線に汚染されているのか、知らされてないだけだなという実感です。それを原発と近隣の住民のガン等の罹患率の関係は証明されてないと居丈高にNHKに食ってかかる原子力ムラの人たちは、証明されてないからこそ、逆に徹底して住民の立場に立って問題点を究明すべきなのです。かつて、薬害は勿論、水俣における水銀汚染も証明されていないと学者や官僚が言い張り、あの多大な被害者を生み出したのではなかったでしょうか。
低い放射線であっても細胞のDNA破壊によってガン等の細胞の奇形を生み出し人体に何らかの影響を与える、それはこれ以下は安全だという数値はないというのはまことに怖い、しかし恐ろしい真実だと思います。リニアカーが撒き散らす電磁波もまた放射線の一種であるというのならば、リニアカーの運用によってどのように電磁波が人体に影響を与えるのか、徹底した数値の公開と検証を求めたいと思います。災害による病気と外部の細胞に影響を与えるものとの因果関係が証明されていないということで放置していけば、後で実際の病人が出てきた時にどのような責任がとれるのでしょうか。もう、官僚や学者の口先だけの言い逃れは聞きたくありません。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
こんにちは。
返信削除記事はその通りだと思います。
二枚目の写真の下の「大阪原発」は「大飯原発」ですか。
確認もしないですみません。