『鉄条網に咲いたツルバラ』韓国女性8人のライフスト-リ-
朴敏那(パク・ミンナ)著 2007年 同時代社
1970年代の朴正熙(パク・チョンヒ)軍事独裁政治の頃、大統領が銃弾で倒れた後も続いた「暗黒の時代」に「田舎から風呂敷包みを胸に上京した幼い少女たちは、ホコリが立ち込める工場」で働いた。基本的人権さえ保障されず、過酷な労働条件にじっと耐えるだけだった。
「勤労基準法を守れ!われわれは機械ではない!日曜日は休ませろ!僕の死を無駄にするな!」と叫んだ22歳の全泰壱(チョン・テイル)青年の焼身抗議(70年)に続いた清渓被服労組運動、東一紡織糞尿汚物事件(78年)、YH貿易廃業撤廃新民党舎闘争(79年)、韓国スミダ電機(日本遠征)闘争(89年)、テヤンゴム偽装廃業闘争(93年)、世昌物産偽装廃業反対闘争(89年)など韓国で労働者の権利を求める声が拡大し、運動の現場で先頭に立って闘った女性たちの記録である。
彼女たちは、脅迫・逮捕・拷問・死を覚悟し、闘争歌である「愛国歌」を合唱しながら、建物に篭城した。御用組合を民主的な組織に変革し、新たな組合を結成し、労働者の権利を求めて闘った。側面から支えたのは、都市産業宣教会であった。また、「当時、学生運動家は、工場に行って労働運動をすることが公式のようになって」いた。「会社は、偽装就業者捜索に血眼になった。」貧しい家庭で育った少女たちは、生活を支えるために中学・高等教育をあきらめた。田舎から都会・ソウルに家出した少女が働く、零細縫製工場が密集する清渓地区の「長時間、低賃金、強制労働」の実態と偽装就労者の闘いは、『兄弟の江』(李憙雨(イ・ヒウ) 2009年 竹書房) に描写されている。
学生と暴力団の対峙。
いまにも死にそうなほど弱っていた学生が、最後の力を振り絞って英九(愛国団体リーダ)に噛みついた。「民主主義の時代は必ず来る。そのときお前は、どこでどう生きるつもりだ。」・・・しばらく、英九の脳裡から、この血まみれの学生の顔と言葉が離れず、彼は政界と手を切ることを決断する。
9人兄弟の末っ子として生まれた私は、貧困から逃れるため、中学2年(65年)の夏休みが終わる頃、家出した。朝夕の新聞配達で稼いだ貯金を下ろして、名古屋から夜行列車に乗った。愛知県の田舎から教科書だけ風呂敷に包み上京した。早朝到着した品川駅で下車し、スポ-ツ新聞を買い、新聞配達の仕事を探した。「中学卒業したばかりです」と誤魔化して大森の新聞販売店で住込み、2ヶ月間働いた。求人広告で書かれていた給与より安かったが、朝夕新聞を配達したことを思い出した。その5年後、新聞広告で日立製作所の募集要項を見て、試験を受けた。
あれから40年が過ぎた。企業、自治体、教職員など労働者から構成される民主党の票田である連合は、御用組合となっている。日立労組と同じように組合役員は、事前に労使双方で決めているようだ。組合幹部は、議案を勝手に決定し、組合員に押し付ける。組合員は上からの指示に従うだけである。組合員はものが言えず、黙って業務に励んでいる。組合費を給与天引きされているが、組合活動に関心はない。
組合活動の原点は組合員である。しかし、組合は、春闘・一時金闘争になると組合員の声も聞かず、労使双方の幹部が労働条件を決める。その代わり組合は、格安の保険、共済制度、海外旅行、スキ-、ゴルフ、労働金庫のマイホ-ム・マイカ-・教育費など労働金庫融資の案内チラシを配布する。春闘・一時金闘争が終われば、「闘争」はなくなり、組合の活動は、福利厚生制度紹介がメインとなる。
職場はものが言えなくても労使一体の「共生」方針に黙って便乗していれば、生活は保障される。「民主主義」はなくても、家族を養い、生活できる。非民主的な御用組合であっても、不満があっても定年退職まで我慢すればいい。ものが言えないから、経営者の不祥事を語ることもない。組合を批判することもない。存在意義を問うこともない。
韓国は、朝鮮戦争で荒廃したが、「漢江の奇跡」を起こした。日立就職差別裁判が始まった1970年、韓国は、「馬山と裡里に輸出自由地域を設置して外国資本に開放した(馬山では誘致した工場の9割以上を日本企業が占めていた)」。
韓日併合、植民地から100年経過した。組合は、「組合と関係ない」戦争責任、「当然の法理」、非正規・派遣労働者の問題など、「他者」の人権に取り組むことはない。しかし、公職選挙になれば、幹部の裁量で民主党候補者を決め、組織全体で応援する。
韓国の労働運動を支援する日本の良識ある友人たちは、自治体が「当然の法理」で外国籍公務員に職務を制限し、労働者の人権を侵害している問題をどう受け止めるのか?連合傘下の自治労、教職員組合の労働者は、戦後続いている排外思想・「当然の法理」を打破できるか?「民主主義は存在しない」御用組合・連合の体質から開かれた組合に変革できるか?それよりも本当に企業社会に民主主義を実現できるだろうか?個々の労働者の主体(生き方)が常に問われている。
「外国人への差別を許すな・川崎連絡会議」
掲示板より:http://homepage3.nifty.com/hrv/krk/index2.html
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