去る9月初め、新聞報道で、民間会社が経営する保育園が突然倒産したこと、その会社に川崎市がお金を支援した金額は1億円にもなること、経営状態のよくない会社にろくに調べもしないでお金を支援した責任は阿部市長にあるとして、市長が告訴されたということを知りました。勿論、その「事実」に対して、私たちも市のあり方を批判したことがありますが、市長の告訴のことは知りませんでした。
新聞では原告の名前は伏せられており、私はどんな人が告訴したのかなと思っていました。 しかし先週、その原告が私のよく知る川崎の女性職員であることを本人から知らさせれました。それは東京都の韓国人職員の鄭香均が石原知事を訴えたのと、同じですよね。私は川崎の市の職員にそのような勇気のある女性がいることを知り、うれしくなりました。
彼女から訴状と証拠の新聞記事が送られてきたので、みなさんに紹介します。原告8名、弁護団11名になっており、原告の立場は記されていませんが、その職員を除いた他の人は、夫婦が原告になっていることからして、保育園の突然の閉鎖で迷惑を被り怒った保育園関係者(或いは父母)と思われます。
川崎市は、東京都の(株)エムケイグループという、当初通信機器やOA機器を販売していた会社が学童保育や保育園を経営するようになり、川崎に作ったふたつの保育園に78,534,421円の補助金をだしたそうです。その金をMKは他の事業の資金繰りに使い、保育園関係者には給料も払えなくなり、突如、閉鎖したとのことです。
訴状は、安易に民間会社に「丸投げ」したことを指摘します。「保育事業の安定的継続性を前提にしその補助金等の助成をするのでなければ、その公金支出に公共性、公益性は存在しない」、「経営状態、財務に関する資料を総合的に検討」していたら、少なくとも10月末の全園廃止の前、4月の新年度には「補助金等の支払いには公共性、公益性がないと判断すべき」であったと記します。
「地方自治体は、・・・最小の経費で最大の効果をあげなければならない」(地方自治法第2条14項)、「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め」る(地方財政法第2条)と規定されているのに、川崎市の一連の補助金は「違法もしくは不当な公金の支出」(地方自治法242条)であると言うのです。
また、MKが資金繰りのために保育以外の他の事業に補助金を使った「疑いは濃厚」であり、その補助金等の交付は取り消すことができたはずなのに、市長及び関係職員はそれをしなかった、従って彼らは、「川崎市に与えた損害につき、損害賠償責任を負うものである」ので、「被告川崎市長は、川崎市を代表して、別紙債務者目録記載の債務者(阿部孝夫!)に対し、金78,534,421円・・・を支払うように請求せよ」という主張になっています。即ち、市長の阿部孝夫は、債務者の阿部孝夫に対して金を払えと、原告が訴えているのです。うむ、そんな論理があったのか?
この裁判は、背景としては、阿部現市長が行財政改革を掲げ、民営化を進めるなかで、公立保育園を民営化し、当初は社会福祉法人までであったのを株式会社まで認めたところから発生した問題だと思われます。勿論、すべて公立保育園にするというのは無理です。しかし市はなし崩し的に規制緩和をしないで、少なくとも社会福祉法人であってもその経営状態と保育の実体は把握し、株式会社にはなおさら、倒産して育児やその父兄に明迷惑がかからないように、行政はしっかりとした管理と「規制」をすべき責任があります。
ここに行財政改革を大上段に振りかざして、川崎市の財政危機を訴えてきた阿部市政は、保育とは何か、教育とは何か、それに対して行政の責任は何か、という基本的な姿勢(思想)が誤っていたと断言せざるをえません。この裁判に注目しましょう。
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